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毎熊克哉が語る“演技の準備”と心構えの変化「プロの重圧を知った」デビュー当時の記憶と、新作主演映画『見えない娘』で得た刺激

  • 2026.8.28

NHK大河ドラマ『光る君へ』では、昼は散楽の一員、夜は貧しき人のために働く義賊という2つの顔を持つ直秀役を演じて注目を集め、近年は映画『桐島です』や、映画『安楽死特区』など話題作での主演が続いている毎熊克哉さん。最新主演作となる『見えない娘 THE INVISIBLES』では、3人の娘を持つシングルファーザー星野学を演じている。

映画『見えない娘 THE INVISIBLES』で主演を務めた毎熊克哉さん 撮影=小嶋淑子
映画『見えない娘 THE INVISIBLES』で主演を務めた毎熊克哉さん 撮影=小嶋淑子

インタビューでは、「透明人間」を題材にした最新主演作での撮影秘話や役柄、デビュー当時の思い出、さらに最近刺激を受けた作品などを語ってくれた。

アイデアが飛び交う現場「“セリフを言わないほうがお客さんに伝わるかも”と提案することも」

――本作の脚本を最初に読まれたときの感想を教えていただけますか?

【毎熊克哉】“これは楽しい映画になるだろうな”と予測できるシーンがたくさんあったのと、“透明人間はどうやって表現するんだろう”と想像を掻き立てられるような場面も多くて、興味深い作品だなと思いました。すごくわかりやすい物語だし、テーマもキャッチーなので、大人も子どもも楽しめる作品になるだろうと感じましたね。

――3人の娘を持つシングルファーザーの学についてはどんな印象を持ちましたか?

【毎熊克哉】学は透明人間である末娘のひかりのために、あらゆる仕掛けを家の中に作って、万全な体制の中で暮らしています。それって心配性だからなんだろうなと、そんな印象を受けました。家族以外の人間からしたら“変な人”と思われるレベルの心配性ですが(笑)、ある意味、学のそういう部分がシーンをおもしろくしていたりもするんですよね。

もしも自分が学と同じような境遇だったら、ひかりが心配でしょうがないので、そこはすごく共感できました。

――竹林亮監督からは役について何かリクエストはありましたか?

【毎熊克哉】撮影は予定どおりにいかないことも多いので、大変だったとは思いますが、基本的に監督はいつも楽しそうにしていたのが印象的でした。現場でいろいろな部署から何かアイデアが出るたびに「いいですね、やってみましょう」と言ってチャレンジさせてくれるんです。そんな中で、監督が一つひとつジャッジしながら撮影を進めていたんですが、みんなのアイデアを試すときも楽しんでいらっしゃいました。

――毎熊さんはどんなアイデアを出されたのでしょうか?

【毎熊克哉】撮影をしていく中で、“ここはセリフを言わないほうがよりお客さんに伝わるかもしれない”と思うシーンが出てくると、それを監督に提案することはありました。最終的な判断をするのは監督なので、まずは相談してみて、そのあと調整していくというやり方でしたね。

【写真】話題作への出演が続く注目の俳優・毎熊克哉さん 撮影=小嶋淑子
【写真】話題作への出演が続く注目の俳優・毎熊克哉さん 撮影=小嶋淑子

――長女・風子役の近藤華さん、次女・音々役の矢山花さんとはどのようにコミュニケーションを取っていましたか?

【毎熊克哉】共通認識として“仕事”というのはもちろんありますが、矢山さんと末娘のひかりを演じた鈴木凜子さんは中学生と小学生で子どもだったので、遊びに近い感覚で一緒にいました。3姉妹集まると、当時17歳ぐらいだった近藤さんも含めてみんな自分の子どもみたいに思えてきちゃって(笑)。

カメラが回っていないときは雑談もしましたし、しりとりをして遊ぶこともあって、和気あいあいとした現場でした。

映画『見えない娘 THE INVISIBLES』の場面写真 (C) THE INVISIBLES Production Committee
映画『見えない娘 THE INVISIBLES』の場面写真 (C) THE INVISIBLES Production Committee

――透明人間のひかりちゃんは、声だけでも明るくて元気な女の子であることが伝わってきました。現場には鈴木さんもいらっしゃったのですね。

【毎熊克哉】本番以外、つまり段取りやリハーサルは鈴木さんが実際に演じてくれていたんです。

――鈴木さんが実際にどういう動きをするのかを確認してから本番の撮影をされていたんですね。

【毎熊克哉】監督の中で、ある程度こういう風に演じてほしいというのはもちろんあるんですけど、透明で見えないとなると、実際にやってみないとわからないことも多いんです。なので、まず鈴木さんと一緒にお芝居してみて、細かい動きや間を確認してから本番の撮影をしていました。さっきまで見えていたひかりが本番では見えないので、ちょっと不思議な撮影でしたけど、いい経験になりました。

撮影=小嶋淑子
撮影=小嶋淑子

駆け出しのころの思い出「高橋伴明監督の映画『禅 ZEN』の撮影で“これがプロの現場なんだな”と」

――寺島進さん演じるタクシーの運転手・倉田と星野家の4人のやりとりがコミカルでとってもおもしろかったです。寺島さんとの撮影はいかがでしたか?

【毎熊克哉】最初にご一緒したのがバイオレンス要素の強い映画『孤狼の血 LEVEL2』で、僕は寺島さんが演じた男性を焼き殺す役を演じていました(笑)。寺島さんは初めてご一緒したときからすごく優しくて、兄貴って呼びたくなるような方なのですが、今も全く変わってなくて、現場で3姉妹を演じた3人と会話をしているときの寺島さんはすごくチャーミングでした。

3人のうちの誰かが「寺島さん、これ知ってる?」と尋ねると、「ん?知らねぇよそんなの」って。イメージのまんまですよね(笑)。なかなか見られない光景でおもしろかったですし、今回またご一緒できてうれしかったです。

(C) THE INVISIBLES Production Committee
(C) THE INVISIBLES Production Committee

――星野家の4人は倉田さんの運転するタクシーで余貴美子さん演じる女優で祖母のエリ子さんに会いに撮影スタジオを訪れます。このシーンで、映画監督を目指す風子や女優に憧れる音々が初めてのスタジオにワクワクしている姿が印象的でした。

【毎熊克哉】僕も含めて本作に関わっている大人たち全員が映画に憧れを抱いてこの世界に入ってきていると思うんです。そう考えると、監督を目指す風子や女優に憧れる音々、そしておばあちゃんと一緒に映画を作りたいひかりに、自分たちの想いを乗せやすかったはずですし、そういう意図もあってこの設定になっているんじゃないかなと思います。

――ちなみに、毎熊さんがプロの俳優として活動し始めたころ、撮影スタジオに関してどのような印象を持っていましたか?

【毎熊克哉】スタジオというとテレビドラマの印象が強いですね。映画は基本的にロケが多いような気がします。

撮影=小嶋淑子
撮影=小嶋淑子

――当時の思い出エピソードも教えていただけますか?

【毎熊克哉】駆け出しのころの思い出といえば、高橋伴明監督の映画『禅 ZEN』の撮影が強く印象に残っていて、監督をはじめスタッフもキャストもみんな真剣で、殺伐としているわけではないけど、とても緊張感のある現場だったのを覚えています。僕は東京俳優・映画&放送専門学校出身なのですが、やっぱり学生同士の現場の空気感とは違うなと。

現場にいる全員が集中していて、この重圧の中で俳優はお芝居をするんだなと思いましたし、“これがプロの現場なんだな”と実感したのはこの作品が初めてでした。なので本作の3姉妹のようにワクワクっていう感じではなかったですね(笑)。

――初めてスタジオのセットや機材などをご覧になったときは、どんな印象を受けましたか?

【毎熊克哉】単純にデカいなと思いました。よくこんなデカいセットを作るなぁって。セットや機材に関してはとにかくデカいという印象で、それよりもスタジオで撮影していると時間がわからなくなるので、そこに驚きました。朝から夜まで一日中午後のシーンを撮ることもあって、撮影が終わってスタジオの外に出ると真っ暗なので、感覚がおかしくなるんですよね。当時は時間の感覚がなくなるのが不思議でした。懐かしいですね。

撮影=小嶋淑子
撮影=小嶋淑子

毎熊克哉が最近刺激を受けた作品を語る

撮影=小嶋淑子
撮影=小嶋淑子

――近年は大河ドラマ『光る君へ』や、主演映画『桐島です』など話題作への出演が続いていますが、お芝居との向き合い方で最近変化を感じていることがあれば教えていただけますか?

【毎熊克哉】向き合い方は基本的には変わっていないのですが、心構えという意味では少し変化がありました。通常はクランクイン前にしっかりと準備してから撮影に挑むのですが、いざ現場に行くと、監督から予想外の提案をされたり、準備したものに合わせようとして焦ったりすることもあるんです。

そんな中で、何が起こるかわからないという不安な気持ちを抱えながら現場に行くことが大事なのかもしれないと気づいて。それ以来、準備したことに囚われすぎないようにしています。

――“準備=役作り”ということだと思うのですが、セリフを覚えること以外にどんな作業をしていますか?

【毎熊克哉】役柄によって違ったりもしますが、“この感じ、つかんでおきたいな”とか…言葉では説明できないような、側から見たら何をやっているかわからないようなことが多いです。乗馬とか殺陣の練習だったらわかりやすいのですが、そうじゃなくて、ただボーッとしているだけで、役の何かをつかんだりすることもあって。そういう準備はしていくけれど、それがそのままお芝居に反映できるかどうかはわからないみたいな気持ちを持つようにしています。

撮影=小嶋淑子
撮影=小嶋淑子

――今後挑戦してみたいジャンルや役柄を教えていただけますか?

【毎熊克哉】コメディアンの役に興味があります。日本の芸人さんというよりは、海外で人気のスタンダップコメディアンが理想で、ステージに1人で立ってマイク1本で勝負するみたいな役をやってみたいです。

――Netflixではスタンダップコメディアンのステージが配信されていて日本の視聴者にも人気ですし、お芝居ではアダム・ドライバーが『アネット』という映画でスタンダップコメディアンを演じていたのが印象的でした。

【毎熊克哉】僕の中ではスタンダップコメディアンの役といえば、マーティン・スコセッシ監督の『キング・オブ・コメディ』で、主演を務めたロバート・デ・ニーロが強烈に印象に残っています。主人公が自身の境遇を自虐的に語っているだけなのに、観客には大ウケしているというなんとも言えないシーンが忘れられなくて…。

長回しで撮っている場面も多いので、“撮影、大変だっただろうなぁ”なんて想像しながら観ていました。スタンダップコメディアンはすごく難しい役柄だと思いますが、いつか機会があったら演じてみたいです。

――最後の質問になりますが、最近、刺激を受けた作品を教えていただけますか?

【毎熊克哉】リチャード・リンクレイター監督の『ブルームーン』という映画がおもしろかったです。主演のイーサン・ホークが実在するブロードウェイの伝説的作詞家ロレンツ・ハートを演じているのですが、ロレンツがずっと出ずっぱりで、まるで舞台を観劇しているかのような不思議な感覚になるんです。驚いたのが、かっこいいイメージのイーサン・ホークが、この映画では全然かっこよく見えないこと(笑)。

――え!そうなんですか!?

【毎熊克哉】背が小さくて髪の毛が薄い普通のおじさんの姿で登場するので、“これ本当にイーサン・ホーク?”と疑ってしまうぐらい最初は全くわからなかったです。でもお芝居は本当に素晴らしくて、それこそスタンダップコメディじゃないですけど、ずっと画面に映っていて、ひたすらセリフをしゃべっているので圧倒されるというか…ものすごく引き込まれました。こういう役にもいつか挑戦してみたいです。

撮影=小嶋淑子
撮影=小嶋淑子
映画『見えない娘 THE INVISIBLES』のメイン写真 (C) THE INVISIBLES Production Committee
映画『見えない娘 THE INVISIBLES』のメイン写真 (C) THE INVISIBLES Production Committee
(C) THE INVISIBLES Production Committee
(C) THE INVISIBLES Production Committee

取材・文=奥村百恵

◆スタイリスト:カワサキタカフミ

◆Makeup Designer:MARI

(C) THE INVISIBLES Production Committee

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