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「ご成婚はまだまだ」と笑った20年前の二枚目俳優。約1年後、当たり役を引用した“伝説の結婚会見”とは

  • 2026.9.30
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2006年9月、サッポロ「ドラフトワン」CM発表会に登場した阿部寛(C)SANKEI

彫りの深い精悍な顔立ちに、189センチの圧倒的な長身。完璧な二枚目でありながら、なぜこの人はこれほどまでに愛嬌があり、見る者をクスッと笑わせてくれるのだろうか。

今から20年前、2006年9月のことだ。『新サッポロ ドラフトワン』の新CM発表会に、架空の国「ドラフトワン公国」の王子の姿で登場した阿部寛。王子の正装に身を包んだ阿部は、集まった報道陣から「お姫様は現れました?」と水を向けられると、「1人で生きて行くのも楽しいですよ」と答えた。

ご成婚はまだまだだと、おどけてもみせた。当時、阿部の主演ドラマ『結婚できない男』が放送中だった。偏屈な独身建築家・桑野信介を演じていたあの秋、王子の衣装を着た阿部寛は独身生活について冗談交じりに答えた。

正装でギョーザに挑む“アベール王子”の哀愁

発表会でお披露目されたCMで阿部が演じたのは、その名も「アベール王子」。年老いた執事を従えて、ドラフトワンにぴったりの料理を求めて店を訪ねるという設定だ。料理篇の第1弾は、正装の王子が初めてギョーザを口にするというものだった。

ドラマでは渋い演技で多くのファンを魅了してきた人が、正装のままギョーザをコミカルに食べてみせる。大真面目に演じれば演じるほど、そのギャップから独特のペーソスとおかしみが立ち上ってくる。

しかもCM撮影は2日間におよび、何杯も飲んだ阿部は「だいぶ酔っ払いましたね」と会見で告白した。それどころか発表会の前にも同じ商品で喉を潤してきて、少し顔を赤らめて登壇していた。酒癖はいいほうで、最近はドラマの共演者らと2回ほど飲みに行ったと気さくに明かす姿は、王子の衣装とは裏腹に、まるで仕事終わりにふらりと一杯引っかけてきた気のいい大人のようだった。

桑野信介の皮肉と阿部寛のカラッとした明るさ

この発表会が開かれた2006年9月7日は、ドラマ『結婚できない男』の最終回(9月19日)直前という絶好のタイミングだった。

阿部が演じた主人公・桑野信介は、腕利きだが偏屈で皮肉屋、独りよがりで素直になれない40歳手前の建築家。皮肉なことに、彼が得意とするのは家族が集まるリビングやキッチンの設計だ。団らんの空間を作るプロでありながら、本人は自宅でクラシックを大音量で流し、指揮者になりきって悦に入る独り身の男である。

もし本物の桑野信介が会見でお姫様のことなど聞かれたら、眉をひそめて辛辣な屁理屈を一席ぶったに違いない。だが、生身の阿部は1人も楽しいとおどけ、共演者との酒席の話まで明かす。役柄と同じ独身の話題を向けられながらも、桑野の影をちらつかせつつ、決して嫌味にならないカラッとした明るさで受け流す。

金屏風の前で放った第一声

そんな“独身のアイコン”のようだった阿部に、劇的な瞬間が訪れる。CM発表会から約1年2か月後の2007年11月20日、一般女性との結婚発表会見。金屏風の前に立った阿部は、「結婚できない男が、結婚します」と第一声を放った。

会見では機が熟したと語り、時折「恥ずかしいなぁ」と照れながら、なれ初めを明かした。かつて王子の姿でご成婚はまだまだとおどけた男が、今度は自身の当たり役を自ら引用し、最高にハッピーな報告にしてしまう。

13年経っても変わらない桑野信介

時を経て2019年、実に13年ぶりの続編となる『まだ結婚できない男』が放送された。制作発表の席で阿部は、13年空けて同じ役を演じるのは初めてで、最初はどうなるのかと思ったと明かしつつ、いざ現場に入ると桑野がまるで変わっていなかったことを面白がった。

相変わらず独身貴族を貫き、皮肉を連発する桑野について、実生活では家庭を築いた阿部は「言いたいことを好き勝手言うので、ストレスがたまらないので楽しいです」と屈託なく語る

ギョーザから冷えた一杯へ

そして2026年3月から、阿部はアサヒビール『スーパードライ』のCMに長澤まさみと出演し、再び印象的な飲みっぷりを披露している。夏の篇では、日差しの中で暑さにぼやきながら、キンキンに冷えた一杯を豪快に味わう。

20年前は架空の国の王子として、未知のギョーザに挑んでいた。今度は市井の大人として、夏の暑さに抗うように一杯をあおる。

2026年7月から放送中の日曜劇場『VIVANT』続編では公安の警視・野崎守をふたたび演じ、2027年2月には主演映画『ハッピーリスト』の公開も控える。同作で演じる江川太郎は、40年に及ぶ精神科病院での入院生活から社会に戻った59歳の男だ。阿部は発表時のコメントで、太郎が目の前にあるものをどう見て、どう感じるのかを大切にして、できるだけ素直に反応することを心がけたと明かした。

皮肉屋の建築家とも、ギョーザに挑む王子とも、歴戦の公安警察とも異なる男の横顔を、どう表現してくれるのか。20年前のあの秋、王子の衣装でおどけていた阿部寛を思い返しながら、公開を心待ちにしたい。


※記事は執筆時点の情報です

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