1. トップ
  2. エンタメ
  3. TM NETWORK元メンバーのソロツアー初日、サプライズで登場した【歌姫】TKが手がけたデビュー曲とは

TM NETWORK元メンバーのソロツアー初日、サプライズで登場した【歌姫】TKが手がけたデビュー曲とは

  • 2026.9.24
undefined
1996年10月撮影(C)SANKEI

木根尚登のステージに彼女が上がると、客席は一瞬静まってから沸いた。2026年8月28日、木根のソロツアー初日、EX THEATER ROPPONGIの舞台にサプライズで姿を見せたのは大賀埜々(おおがやや)だった。長く歌の仕事から離れていた人が、自分のデビュー曲を書いた本人の隣に立つ。客席で息を呑んだ人の頭には、30年前の一曲が浮かんでいたはずだ。

続く9月12日には、恵比寿の「JOLLYS LIQUOR STORE」でデビュー30周年のミニライブを開いた。大きなホールではなく、酒の棚と客の肩がすぐそこにある距離だ。いまの彼女がこの曲をどこで歌うかを見れば、当時この曲がどこに置かれていたかも、逆から測り直せる。

当時のこの曲は、小室哲哉が手がける新人のデビュー曲として、まずCMの画面から街へ出ていった。そして、この曲を書いたのは小室ひとりではない。詞も曲も、小室哲哉と木根尚登の二人で書いている。TM NETWORKの二人が名前を並べて、一人の新人に渡した夜の歌。ここから30年前へ戻る。

大賀埜々『Close to the night』(作詞・作曲:小室哲哉・木根尚登)ーー1996年9月18日発売

二人の名前が並ぶクレジットの聴こえ方

クレジットを見ると、作詞と作曲の両方に、小室哲哉と木根尚登の名前が並んでいる。どちらが言葉を書き、どちらが旋律を書いたという分け方ではなく、二人で詞も曲も作った。編曲は小室哲哉が担っている。

そう知ったうえで聴くと、この曲は言葉と旋律の継ぎ目が見えない曲に聞こえる。旋律が先にあって言葉が後から乗ったのか、言葉が先で旋律が沿ったのか、どちらとも決められない。決められないこと自体が、二人で書いた曲の手触りに映る。

曲調はミドルテンポのバラード寄りだ。踊る曲、疾走する曲のイメージだけで小室哲哉を聴いてきた人には、意外に響くかもしれない。だが当時の小室哲哉のミドルナンバーとしては、これは定番の型である。タイトルどおり夜の空気をまとい、急がずに歩く速さで、声を前へ運んでいく。

このテンポの効き目は、聴き手の歩幅を決めないところにある。踊らせもせず、泣かせにもかからず、夜道を歩く速さにただ寄り添う。だから聴く人の年齢が変わっても、この曲は置いていかない。二人の名前が並ぶ理由を探すより先に、この歩幅の心地よさが耳に残る。

新人のデビュー曲、そして歌詞を変えた唄い直し

歌い手の大賀埜々は、TBC(東京ビューティセンター)主催の「the SUPERLADY CONTEST」でグランプリを取り、そのままTBCのCMに出演する。そして、そのCMソングとして、小室哲哉のプロデュースでCDデビューを果たした。コンテストの壇上からCMの画面へ、そして歌へ。一本の線でつながった導線だ。1996年は小室哲哉の名前が書かれた曲が次々に街へ出ていた年で、その群れの中に、歌う前から顔を知られていた新人が加わった。

この曲には、もう一つの姿がある。作り手の一人である木根尚登が、後年、自分の声でこの曲を歌い直した。旋律は同じ、サビも同じ。ただし、サビ以外の歌詞が大賀版とは異なる。

同じ旋律に、別の言葉が乗る。若い女性の声で歌われた夜と、大人の男性の声で歌われた夜が、サビで一度合流し、それ以外の場所では別の道を歩く。二つの版を続けて聴くと、サビの旋律だけが動かない柱として立っていることがわかる。

作り手が自分で歌い直したという事実は、この曲が一度きりの提供曲で終わらなかったことを示している。デビュー曲として新人に渡し、しかも自分の歌としても持ち続けた。二人で書いた曲のうち、木根が自分の声に引き取った側に、この曲はある。

30周年のミニライブの現在地へ30周年のミニライブの現在地へ

この曲が生き延びた場所は、もう一つある。北海道テレビの『水曜どうでしょう』の初代エンディングテーマだ。番組の終わりに、この曲が流れていた。CMの画面で始まった歌が、北海道の番組の締めくくりに置かれ、そこで別の聴き手と出会っていた。

そして2026年の夏の終わり、木根尚登の舞台にこの曲の歌い手が上がった。2週間あまり後には、恵比寿で30周年のミニライブを開いた。曲が人より先に生き延び、二人の作り手と一人の歌い手を、30年後に同じ場所へ呼び戻したように映る。

30年前は、二人が新人に渡した曲だった。いまは、彼女が二人から受け取り直した曲に映る。夜に寄り添う旋律は、渡した側にも受け取った側にも、同じ場所で待っていた。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

の記事をもっとみる

注目コンテンツ