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32年前、芸名から改名…本名での再出発を告げた一曲【アニメ主題歌の歌い手】から一転、女性ロックとして響かせた

  • 2026.9.24
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田村直美-2003年2月撮影(C)SANKEI

テレビから流れ込んだ歌が、そのまま次のヒットの助走になる時代だった。ドラマの主題歌やCMの数小節が耳に残り、名前を知らないまま口ずさんでいた歌の主を、半年のうちに覚え直す。90年代半ばの歌謡シーンは、そういう速度で回っていた。

その速度のなかで、ひとりの歌い手が名前を変えた。バンドのボーカルとして名乗っていた芸名を置き、本名でもう一度、最初から始める。その名前で世に届いたヒットが、この曲だ。約3か月後には、翌年の紅白まで運ばれる大ヒット『ゆずれない願い』が来る。代表曲の陰にすっぽりと隠れた本命を、今の耳で聴き直してみたい。

田村直美『永遠の一秒』(作詞:田村直美/作曲:田村直美・石川寛門)ーー1994年7月27日発売

捨てた芸名の重さを本名で引き受けた

田村直美は、まずPEARLのボーカル、SHO-TAとして世に出た人だ。バンドを離れてソロに移り、1994年、本名の田村直美を名乗って再スタートを切る。

名前を変えるとは、それまでに積んだ知名度をいったん手放すことに等しい。バンドの記憶とセットで聴かれることをやめ、声だけで聴かれる場所に自分を置き直す。看板を掛け替えるのではなく、看板そのものを下ろして素顔で立つ。

その賭けの大きさは、名を変えた本人にしかわからない。ただ、聴く側から見えることもある。過去の名前の記憶に頼らず、歌一本で名前を覚えてもらう。改名とは、そういう条件を自分に課すことでもあった。

その本名で最初に届いたヒットが『永遠の一秒』だった。同じ年の11月には『ゆずれない願い』が出て、翌95年の紅白へと運ばれていく。順序として見れば、本名の田村直美という名前を先に耳へ慣らしたのは、この曲のほうだ。約3か月前にリリースされたこの歌がヒットしていたからこそ、次の一曲が多くの人へ届くキッカケになったのかもしれない。

本名の一曲目に置いた自分の言葉

詞は田村直美が自分で書き、曲は石川寛門との共作だ。石川寛門は同じ年の『ゆずれない願い』も手がけている。編曲のジョーイ・カーボーンは鷹羽仁と組んでこの曲を仕上げ、田村直美には『笑顔の純度』『ONE』も手がけた継続的な提供者だ。再出発の一年を同じ顔ぶれで固めていた、ということになる。

曲はゆったりとしたテンポで進み、その上を高い声がまっすぐに伸びていく。バンドで鍛えた声を鳴らす。声の高さそのものより、その高さを保ったまま言葉を崩さない歌い口のほうが、聴き終わったあとに残る。高い声は往々にして言葉を置き去りにするが、ここでは一語ずつが聴き手の側まで届く。自分で書いた言葉を、一語ずつ聴き手の側まで届ける歌い口が、この歌ではそのまま強みになっている。

一秒を惜しむ歌が永遠を名乗る

詞が描いているのは、すれ違う恋だ。互いに傷つけ合いながら、それでも重なった一瞬の絆を惜しむ。うまくいっている二人の歌ではなく、うまくいかないまま、それでも手放したくない一瞬を抱えている二人の歌である。傷つけ合ったことを責めもしなければ、仲直りの筋書きも用意しない。ぶつかった事実をそのまま置いて、そのなかで重なった一瞬だけを大事に取り出す。この距離の取り方が、詞をただの失恋歌にも、ただの甘い歌にもしていない。

この曲は三貴『銀座ジュエリー・マキ・カメリアダイヤモンド』のCMソングとして流れた。一秒を惜しむ歌が宝飾のCMに乗った取り合わせは、素直に腑に落ちる。

ロックの棚に置き直された本名の歌

2007年、デーモン閣下がカバーアルバム『GIRLS' ROCK』でこの曲を選んだ。80年代から90年代にかけての女性ロックを歌い直した一枚で、『永遠の一秒』はそこに並んでいる。

アニメ主題歌の歌い手、という顔で語られることの多い田村直美の曲が、女性ロックの一曲として拾い上げられた。選んだ側の耳には、ゆったりしたテンポの奥にある、バンドのボーカルだった人の声の芯が聴こえていたのだと映る。本名で届けた歌が、12年を経てロックの棚に置き直される。素顔で歌った一曲は、代表曲の陰で静かに、その出自を証明し続けていた。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

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