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パンク色強い【伝説バンド】がポップへ舵を切った最初の一歩。フジ人気バラエティを支えた一曲

  • 2026.9.24
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1995年12月、第37回日本レコード大賞で企画賞を受賞したJUDY AND MARY(C)SANKEI

暦の上では秋なのに、日差しだけがまだ夏のつもりでいる。そんな午後、気力の残量が少ないまま、何か明るいものを一つだけ耳に入れたくなることがある。元気を出せと励まされるのではなく、勝手に体温が上がっていく類の音が欲しい。

そういうときに効くのが、この曲だ。手拍子を誘う軽い刻み、笑いながら投げてくるようなYUKIの声、そこへ男の声が短く返す。聴き終わる頃には、ついさっきまでの疲れが少しだけ遠くにある。夏の名残を惜しむ曲ではなく、夏の続きを勝手に始めてしまう曲である。

そして、この明るさは、当時のJUDY AND MARYにとって新しい色でもあった。パンクの勢いで走ってきたバンドが、大衆に開いたポップへ舵を切る。その最初の一歩に当たると位置づけられるシングルが、これだ。

JUDY AND MARY『Hello! Orange Sunshine』(作詞:YUKI/作曲:恩田快人)ーー1994年8月21日発売

熱を捨てずにポップの器へ移し替えた

JUDY AND MARYは、どちらかといえばパンク色の強いバンドだった。TAIJIの脱退後、ギターのTAKUYAが加わり、作曲にも参加するようになる。徐々にTAKUYAの存在感が強くなっていくなかで作られた『Hello! Orange  Sunshine』は、彼らのポップさが加速していく転換点ともいえるシングルだ。

曲の入り口で耳をつかむのは、YUKIの声だ。可愛らしさと勢いが同居していて、言葉を丁寧に歌うというより、放り投げてくる。高い声が跳ねたあと、そこへ男の声が短く応えるように聞こえる。この往復が曲全体を風通しのいいものにしている。一人で歌い切る曲なら閉じてしまう部分が、返事をもらうことで外へ開く。誰かと一緒に騒いでいる感じ、と言い換えてもいい。青春の曲に聴こえる理由は、歌詞の中身より先に、この声の往復にある。

歌い方も面白い。声を強く押し出す場面でも、力で押し切る印象にはならない。語尾が上に抜けていくからだ。声が上へ逃げるたびに、聴き手の肩の力も一緒に抜ける。夏の日差しの下で、深呼吸をしたあとの感じに近い。

外れかけて聞こえる間奏の帰り道

演奏に耳を移すと、この曲の背骨が見えてくる気がする。まず耳に残るのはベースだ。同じ音を刻んで支えるというより、歌の下で上下に動き回り、それ自体がもう一本のメロディになっているように聴こえる。ドラムも、まっすぐなビートに落ち着かず、転がるように進んでいく印象がある。歌が明るいぶん、下で鳴っている低音とリズムがじっとしていないから、曲が甘くならないのだろう。

そして間奏だ。ギターのソロは、曲の調から外れかけるところまで飛んでいくように感じられる。一瞬、どこへ行くのかと不安になる。そこへ別の音色が差し込まれたかと思うと、曲は何事もなかったように着地する。飛んで、戻る。この往復が、いちばんの聴きどころに思える。

ここに、ジュディマリらしさがある。整った曲の中に、危ないところが一つ残してある。その危うさがあるから、明るさが作り物に聴こえない。

一歩先に出た曲が決めたアルバムの色

シングル発売から3か月あまり。1994年12月1日に出た2ndアルバム『ORANGE SUNSHINE』に、この曲は3曲目として収められた。序盤に置かれた曲として、アルバム全体の明るい色を最初に示す役割を担っている。

数字が、転換の成果を裏づけている。前作『J・A・M』の週間ランキング最高位は23位だった。それが『ORANGE SUNSHINE』では最高5位。バンドにとって初めてのTOP10入りである。しかも、登場65週。一気に売れて消えたのではなく、1年以上にわたって聴かれ続けた。累計は60万枚を超えている。

シングル1枚の成績では測りきれなかったものが、アルバムという単位で見ると、はっきりと姿を現す。ポップへ開くという判断が、聴き手に受け入れられた証明が、この数字だ。曲の明るさは、バンドの明るい未来と一緒にやってきた。

テレビの向こうから夏がもう一度届く

この曲には、もう一つの入り口がある。1997年、フジテレビ系のバラエティ番組『めちゃ²イケてるッ!』のエンディングテーマとして流れていた。番組の終わりに、あの放り投げるような声と跳ねるベースが、毎回のように届いていた。

1994年にバンドの転換点として生まれた曲が、3年後にはテレビから、別の入り口で聴き手を増やした。そのため、この曲の記憶は2つの層を持つ。アルバムごと抱きしめた人の記憶と、番組の締めくくりとして体に入った人の記憶だ。どちらの層にも、夏とオレンジ色が塗られている。

だから、冒頭の気分に戻る。夏の終わりに、まだ引き返したくないなら、この曲をかければいい。飛んで、戻ってくるギターと、笑いながら投げられる声が、暦を無視して夏を延長してくれる。青春という言葉を使うのが照れくさい年齢になっても、この明るさだけは受け取れる。それが、この曲の効き目だ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

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