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映画監督・黒澤明の孫…“多重人格少女”から“余命わずかな高校生”まで、演じてきた少女像

  • 2026.9.10
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1999年9月、ミス東京ウォーカーに選ばれた黒澤優(C)SANKEI

映画監督・黒澤明の孫で、林寛子の娘でもある黒澤優。その出演作には、少女の存在が物語を大きく動かす作品がある。2000年前後の映画やドラマをたどると、事件の中心にいたり、周囲の大人に重い問いを投げかけたりと、物語の行方を左右する役柄が浮かび上がる。なかでも目を向けたいのは、映画『死者の学園祭』の山崎由子。大きな家族の名前から一歩進み、黒澤優が作品の中に残したものを振り返りたい。

物語の出発点を担う

2000年8月公開の『死者の学園祭』は、赤川次郎の小説を映画化した学園ミステリー。黒澤優が演じる由子は、深田恭子演じる演劇部部長・結城真知子の親友だ。学園に伝わる昔の悲恋を台本にした由子は、その上演を待たずに亡くなる。残された真知子は学園祭での上演を目指すが、やがて周囲で不可解な事件が続いていく。

由子は、親友の記憶の中だけにいる少女ではない。彼女の書いた台本が、真知子を行動へと向かわせる。舞台を実現しようとする動きと、事件の真相へ近づく動き。その両方の始まりに由子がいる。この役の重みは、そこにある。

文化祭で友人の作品を上演する。身近にも感じられる営みが、ここでは失った友人と向き合う行為になる。楽しいはずの学校行事に、悲しみと謎が重なっていく構図だ。黒澤優の由子に目を向けると、この映画には事件を解く物語とともに、ひとりの少女が残したものを受け取る物語が流れていると感じる。

主役の親友という位置にいながら、作品の出発点を担う。その配役から、黒澤優の存在をもう一度見つめることができる。

怖さの奥にいる少女

同じ年の1月に公開された『ISOLA 多重人格少女』は、黒澤優の映画初出演作だった。演じた森谷千尋は、複数の人格を持つ高校生。木村佳乃演じる由香里が出会い、不可思議な出来事の真相へと近づいていく相手である。

千尋には、両親を事故で失い、養父から虐待を受けた過去が設定されている。劇中の恐怖を引き起こす存在を追うだけでは、千尋という少女の輪郭は見えてこない。彼女自身も深く傷つき、助けを必要としている。そのことが、観る側と千尋との距離を単純なものにしない。

由子は残した台本を通じて物語を動かし、千尋は自身の内側にある謎によって物語の中心に立つ。ともに若い少女の役でも、担う働きは大きく違う。親友を失った悲しみと、目の前の相手を理解できない怖さ。黒澤優の映画出演の始まりには、その異なる感情に触れる役が並んでいた。

作品のジャンルだけでひとくくりにすると見落としてしまう、少女の置かれた場所の違い。そこに注目すると、黒澤優の役歴はぐっと具体的になる。

教室にも残る切実さ

テレビでも、黒澤優は少女たちの切実な時間を演じている。2000年の『伝説の教師』(日本テレビ系)第8話では、余命を悟った高校生を演じ、ブランコで『ゴンドラの唄』を口ずさむ場面がある。祖父の映画『生きる』につながる歌を、孫である黒澤優が高校生の役で歌う。家族のつながりが、作品の中の具体的な場面と結びついた瞬間だ。

翌2001年の『R-17』(テレビ朝日系)では、矢沢カヲルを演じた。新任スクールカウンセラーの森山芽美が、生徒たちの問題と向き合うドラマである。終盤には、接触を禁じられた芽美が、それでもカヲルのカウンセリングを続けようとする展開が待っている。

ここで少女を理解しようとする行為は、事件の謎解きから、目の前のひとりを支える仕事へと形を変える。大人が何を見落とし、どこまで手を伸ばせるか。黒澤優のカヲルは、その問いの先にいる生徒だ。

映画でもドラマでも、黒澤優が演じた少女を知ろうとすると、周囲の人物との関係が見えてくる。友人や大人がどう関わるかによって、物語そのものが動く。そこに、この時期の役柄を通して感じられる共通の重みがある。

黒澤優という名前で思い返す

黒澤優を再び知る入口は、ひとつの役でいい。友人に台本を残した由子、心に傷を負った千尋、大人たちとの関係の中にいるカヲル。それぞれを思い返すことで、2000年前後の作品に刻まれた俳優としての姿が見えてくる。

祖父の名は、その人に関心を持つきっかけになる。さらに作品へ進んだ先には、黒澤優自身が演じた少女たちがいる。誰かの孫という紹介に、ひとつずつ役名が加わっていく。その積み重ねから、改めて思い出したい俳優だ。


※記事は執筆時点の情報です

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