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処方箋は30日分なのに「旅行に行くから2ヶ月分出して」→医師に確認すると…発覚した“患者の嘘”

  • 2026.9.19
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

シルバーウィークを目前に控えたある日の夕方、「旅行に行くから2ヶ月分まとめて出してほしい」と申し出た60代の常連男性。

処方箋は通常通り30日分

疑義照会をかけるべきか、患者さんの要望をどう伝えるか——電話口の医師と目の前の患者さん、双方の間に立って下した判断と、その後の意外な展開をお話しします。

連休前の駆け込み来局、常連さんの穏やかな相談

シルバーウィーク直前の夕方、常連の男性から切り出された「2ヶ月分まとめて出してほしい」の一言。いつも穏やかな方だからこそ、いつもと違う空気を感じた場面でした。

「ちょっとお願いがあるんだけど」から始まった会話

その日は9月中旬のある日「ちょっとお願いがあるんだけど」と、いつも通り穏やかな笑顔でカウンターにやってきたのは、生活習慣病の薬で通われている60代のAさん。

処方箋を差し出しながら、「連休に長男夫婦と海外旅行に行くから、2ヶ月分まとめて出してくれないかな」と切り出されました。

処方箋を確認すると、いつもと同じ30日分。

当然ながら、こちらの判断で日数を延ばすことはできません。

「申し訳ありません、法律により処方箋の記載内容を薬剤師の判断で変更することはできないため、先生に確認を取る必要があります」とお伝えすると、Aさんの表情が少し曇りました。

「そんな大げさな話じゃないだろう。いつもの薬を少し多めに出すだけなんだから」。

穏やかな方だっただけに、この反応は少し意外でした。ただ、規定を超える処方をお渡しするわけにはいきません。「先生に一本お電話させてください」とお伝えし、疑義照会の準備に入りました。

疑義照会の電話口で医師が下した予想外の判断

処方元の医師に電話をかけて事情を説明したところ、返ってきたのは思いもよらない一言でした。

「本人と代わって」の一言で変わった空気

処方元の医師に電話をかけて事情を説明したところ、返ってきたのは思いもよらない一言でした。ここから、Aさんの本音が見えてくる展開になります。

Aさんに受話器を渡すと、カウンター越しに聞こえてきたのは

「先生、そうなんですよ……いや、実はですね……」

という、少し歯切れの悪い返答。

3分ほどの通話の後、Aさんは電話を返しながら、決まりの悪そうな表情でこちらを見ました。

医師から改めて指示があり、「30日分のままで結構です。次回は連休明けにきちんと受診するようお伝えください」とのこと。

用量変更もなし。処方箋通りの調剤となりました。

投薬時、Aさんはぽつりとこう漏らしました。

「先生に怒られちゃったよ。本当は旅行じゃなくて、しばらく病院に行くのが億劫でね。連休を口実に、まとめてもらおうと思ったんだ」

長期処方を望む患者さんに、薬剤師ができる歩み寄り

「連休だから」という理由の裏に隠れていた本音。頭ごなしに規則を伝えるのではなく、一歩踏み込んで聞くことの大切さを教えられた出来事でした。

連休期間中の服薬管理、事前にできる小さな提案

Aさんの本音を聞いて、腑に落ちました。

「連休だから」という理由は、受診間隔を延ばしたい気持ちを言い出しやすくするための、いわば方便だったのです。

血圧の数値は安定しており、症状も落ち着いている。ご本人としては「そろそろ2ヶ月に1回でもいいのでは」と感じ始めていたのでしょう。

ただ、自己判断で通院間隔を空けることには当然リスクがあります。

季節の変わり目は血圧が変動しやすく、特に9月から10月にかけての寒暖差は、循環器系の持病を持つ方にとって油断できない時期です。医師が「連休明けにきちんと受診を」と念を押したのも、そうした背景があってのことでした。

投薬の最後に、「もし通院の間隔についてご希望があれば、次回の診察のときに先生に相談してみてください。数値が安定していれば、先生も検討してくださると思いますよ」とお伝えしました。

Aさんは「そうだね、ちゃんと言ってみるよ」と、少し明るい表情で薬局を後にされました。

連休前の駆け込み来局では、単に「まとめてほしい」という要望の裏に、患者さんそれぞれの事情が隠れていることが少なくありません。

頭ごなしに規則を説明するのではなく、「なぜそう言いたくなったのか」を一歩踏み込んで聞くこと。そこから見えてくる本音が、次の受診や服薬管理の質を変えていく——そんな学びをもらった一件でした。


ライター:下田篤男

京都大学薬学部総合薬学科を卒業後、調剤薬局やドラッグストアグループで薬剤師として勤務してきました。総合病院の門前店舗では管理薬剤師を務め、たくさんの患者さんと向き合う日々の中で、「薬を渡す」だけではない、人と人との関わりの大切さを実感しています。現在は薬剤師として現場に立ちながら、医療記事の執筆・編集や薬局経営コンサルタントとしても活動中。読者の皆さまに、薬局がもっと身近で頼れる場所になるような情報をお届けしていきたいと思っています。


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