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妹の恋人に厳しく聞きすぎた俺が、玄関で言えなかった一言

  • 2026.8.28
ハウコレ

妹ににらまれているのは、席の空気で分かっていました。それでも俺が質問をやめなかった理由と、帰り際になっても言えないままだった短い言葉の話です。

玄関に、見慣れない男物の靴が、かかとを揃えて置かれていました。

口に出してから気付いた言い方

妹が恋人を連れてくると聞いた日から、俺はどう振る舞えばいいのか決めかねていました。仕事を終えて実家に戻ると、居間から聞き慣れない笑い声がしていました。遅れて席に着いた俺に、彼は立ち上がって名乗り、美容師だと言いました。俺が最初に返したのは「美容師って、この先も食っていけんの」でした。口に出してから、言い方を間違えたとは思いました。それでも、愛想笑いで流される前に、彼の答えを確かめたい気持ちの方が勝ちました。

妹を泣かせた男を覚えている

妹が学生の頃、調子のいい話ばかりする恋人に振り回されて、玄関先で長いこと泣いていたことがありました。あの時、部屋から出て声をかけられなかったことを、俺は今でも覚えています。それ以来、夢を語る男の中身は、数字で確かめると決めていました。「その時計、自分で買ったの」。家賃の相場や貯金の額まで聞くのは、値踏みだと思われると分かっていました。それでも彼は目をそらさず、「3年後までに独立の資金を貯めます。届かなければ、計画を立て直すだけです」と答えました。お茶を替えに立った俺を、妹が台所まで追ってきました。「さっきから彼に失礼だよ」。俺は「事実を聞いてるだけだろ」と返して、急須を持ったまま先に居間へ戻りました。心配だからだ、という続きは、口の中で消えました。

玄関で用意していた言葉

帰り際に俺が用意していたのは、妹を頼む、という短い言葉でした。けれど玄関で2人を前にすると、口から出たのは「また来れば」だけでした。彼は「はい、ぜひ」と深く頭を下げ、妹は俺をにらんだまま靴を履いていました。ドアが閉まった後、片付けに戻った母に「あんたは昔から損な言い方をするね」と笑われ、俺は返事の代わりに残りの皿を流しへ運びました。

そして...

数日後、俺は妹にメッセージを送りました。「知り合いに美容室のオーナーがいる。話を聞きたいなら繋ぐ」。心配している、と書く勇気が出ない代わりの、俺なりの橋の渡し方でした。妹からは、転送しておいた、とだけ返ってきました。今は、彼が次に来る日までに、あの日の言い方をどう詫びるか、酒でも注ぎながら切り出す言葉を考えています。

(30代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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