1. トップ
  2. クリーニング店時代の名残がある外装が目印の町中華「ザ・青皿」【おいしい店みっけ!】

クリーニング店時代の名残がある外装が目印の町中華「ザ・青皿」【おいしい店みっけ!】

  • 2026.8.24
Jun Hasegawa

ユニークなコンセプトととびっきりおいしい料理を提供しているお店が続々と誕生している東京グルメシーン。その“今”をフードジャーナリストの佐々木ケイさんと高山裕美子さんが独自の視点で紹介する連載「おいしい店みっけ!」。個性派ぞろいのスペイン料理に続き、ふたりが注目したのは個性派物件を各店のセンスで素敵に生まれ変わらせたレストラン。

3軒目は世田谷線若林駅にオープンした「ザ・青皿」。かつてのクリーニング店の佇まいを残したレトロな店内では、町中華メニューを小皿つまみで楽しめる。

Photo : JUN HASEGAWA Editor : SATOKO UDA

その他のハイセンスな居抜きの新店もCHECK!

  • 【広尾】町中華店をDIYした「すず」
  • 【西小山】古民家改造したイタリアン「ミチ」
Jun Hasegawa

世田谷の“穴場”タウンに現れた中華酒場

酒場街としてゆるぎないブランド力がある三軒茶屋と、センスある新店が次々にオープンし、10年で様変わりした松陰神社前。「ザ・青皿」は、その間、世田谷線の若林駅からすぐの場所にオープンした大衆中華酒場だ。

環状七号線沿い、店の外に目立った看板はなく、ビールケースを積み重ねた立ち飲み用のテーブルや、その奥に見えるカウンターで“酒場”であることがわかる。目を凝らせば(といっても、夜は見えないかも)ビルの外壁には「TOKYO LUNDRY」の文字が消された跡がある。かつて地域に根ざしたクリーニング店だった場所と聞いて、一面ガラス窓の造りにも納得。飲食店然としたファサードを設えないことで、逆に往来の人の“気を引く”店構えにセンスを感じる。

仕掛け人は池尻大橋で居酒屋「ザ・銀皿」を営む小田島利成さんだ。内装はシンプルに、すべての料理を昭和のノスタルジーをおびる銀皿で供することで店の雰囲気を作るという新発想で、同店を繁盛店に育てた。

次の一手として着目したのが、中国料理店でおなじみ、淡いブルーの「青皿」だったという。元がクリーニング店だから内装は一から設えたわけだが、この塩梅もまたセンス抜群。

カウンターの天板はチープな化粧板で、床のクッションフロアーの柄も、元から張ってあったのではないかと思うほど昭和の町中華調なのだ。しょうゆや酢はカラフルなキャップのプラスティックの容器で、こしょうや辣油は大手メーカーの容器そのままで卓上に並ぶ。昭和生まれには懐かしく、若い世代には新しい? ともあれ清潔で気取りがなく世代に関わらず親しみがわく。

Jun Hasegawa

小皿つまみ充実、価格もリーズナブル

大衆中華の定番を柱に創作の一品を織り交ぜた料理は8~10種。品数は決して多くはないが、どれもしっかり店の味がある。

「干豆腐」(¥770)は青唐辛子の辛さやパクチーの香り、きゅうりのみずみずしさが爽快で軽やか。自家製チャーシューで作る「ネギチャーシュー」(¥770)は、ねぎ大盛り、ラー油を効かせたパンチのある味に酒が進む。

ベーシックで、見た目に派手さはないのに、小ぶりの青皿に映える盛り付けで、ビジュアル力も高い。アクリルケースで卓上に置かれた「御飲み物」のメニューには、ビール(小瓶)にハイボール、サワーなど7種が並び、700円の均一価格。都内の相場に比べてもリーズナブルで、酒好きにはうれしい限りだ。

Jun Hasegawa

餃子好きに教えたくなるシンプルな焼餃子

餃子は、常連客もリピートする人気メニューの一つだという。個人的な話で恐縮だが、常日頃から「餃子にあまり執着がない」と言っている筆者も、次に「ザ・青皿」を訪れたら必ずまた「焼餃子」(¥880)を頼むだろう。

皮は厚く、粗挽き肉の食べ応えのある餡は、たれがなくてもおいしく食べられるしっかりめの味付けだ。むしろそのままのほうが“焼き”の味を深く堪能できる。ゆでてから焼くことで生まれるもちもちの食感と、焦げめのクリスピーさがよく、潔いビジュアルも好みのど真ん中。

「水餃子」(¥880)はちょっとクリエイティブで、ある日はトマトのあんかけにパクチーが添えてあった。聞けば冬場はスープ仕立てにするなど、いくつかのバージョンがあるそう。「執着がない」などと言いながら何を熱く語っているのか。このまま餃子好きになってしまいそうだ。

Jun Hasegawa

ベーシックの踏襲と創作の好バランス

現在厨房に立つのは、阿部翼さんだ。イタリア料理ベースのダイニングで小田島さんと共に働き、その後は総菜主体の和食店や立ち飲み屋などでの仕事も経験。一時はカナダに暮らし、そこでも日本食の店で働いたという。

アラカルトのオーダーにほぼ一人で対応する瞬発力は、さまざまな経験が生きてこそ? 何より、コンセプトやメニューの枠組みを守りつつ、さまざまに工夫を凝らして「店ならではの味」で食べ手を惹きつけている。

「町中華」という制約さえ楽しんでいるかのような創意が、小さな青皿からはみだしそうな勢いだ。常にメニューの1、2品を入れ替え、常連を飽きさせない。黒ごまをたっぷりかけた「黒いよだれ鶏」、中国醤油を使った「黒い炒飯」など、再登場が待たれるメニューも多いのだとか。

Jun Hasegawa

八角形の器に映えるおつまみ炒飯

通常の「炒飯」(¥1,200)も、色はやや濃い目。自家製チャーシューやなるとなど具材の満足感も高く、しょうゆに加えオイスターソースで味をつけた、締めというよりは「つまみになる」炒飯だ。

中華鍋がリズミカルな音を立て、芳しい香りがカウンターを飛び越えてくると、オーダーが連鎖する一品。「とりあえずビール。あと、餃子とチャーハン」という古きよき町中華のオーダーをさらりと伝える常連客は多く、その中には若い女性の一人客も多い。

美しい半球状の炒飯が、八角形の青皿の上で湯気を立てる様子はやはりフォトジェニックだ。

Jun Hasegawa

装飾に頼らないモダンの演出に技あり

造作から卓上の小物まで、“完コピ”ともいえる昭和の大衆中華だが、一つだけ異なるのが、営業中の店内照明を、ギリギリまで落としてある点だ。あのバキバキの蛍光灯の真反対。いかにも“モダン”とか“ネオ”だとかいう装飾は一切なし、店内の明るさ(暗さ)で今の雰囲気を演出する辺りも「上手いなぁ」と、膝を打ちたくなる。

あえてワインを置かない選択も好ましい。新しい酒場が料理ジャンルを超えて「ナチュラルワインあります」というのがスタンダードになり過ぎていて、それだけで店の個性が削がれるような状況はどうしたらいいものかと感じていたからだ。

理由を尋ねてみたら「ワインも出していきたいですし、考えてはいますよ」との答えが。聞いた通りならば、そこにも“一捻り”ありそうで、また新しい楽しさが期待できる。

ザ・青皿
住所/東京都世田谷区若林4-1-10 1F
営業時間/19:00~24:00
電話番号/非掲載
定休日/月曜
Instagram/@the.aozara

Hearst Owned

合わせて読みたい



元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ