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木製の調味料入れを動かし続けた私が、掃除のふりをやめた夜

  • 2026.8.24
ハウコレ

「私の物、勝手に動かさないで」強い声で言われてようやく、私は火のそばに物を置けない理由を話し始めました。半年間の掃除のふりの、これが終わりでした。

ゴム手袋を外す前に、私はその日も、同居人の木製の塩と胡椒の入れ物をコンロの横から一番遠い棚の隅へ移しました。

入れ物に伸びる手

半年前から、同い年の彼女とシェアハウスの一室ずつを借りて暮らしています。彼女がコンロの横に置く木製の塩と胡椒の入れ物を目にするたび、私の頭には実家の台所がよみがえります。

高校生の頃、コンロの横に置かれた紙袋に火が移りかけたのを、私はすぐそばで見ていました。あの時の焦げたにおいが残っていて、火の近くに物があると、確かめるまで落ち着かなくなったのです。

掃除のふり

最初のうちは、掃除の流れを装って入れ物を棚へ寄せていました。理由を話せば済むことだと、頭では分かっていました。それでも、火が怖いから置き場所を変えてほしいと頼んで、神経質な人だと引かれるのが怖かったのです。

棚に「ここが定位置です」というメモが貼られて、気づかれていると分かりました。それでも私は打ち明ける代わりに、メモの真下から入れ物を移し続けました。頼めない弱さの分だけ、手を動かしていたのだと思います。

強い声

その夜、リビングでお茶を入れていた私の前に、彼女が入れ物を持ったまま立ちました。

「私の物、勝手に動かさないで」

いつもより強い声でした。ごまかす言い訳を探す間もなく、私は下を向いて、「コンロの横だけは、どうしても置けないの」と口にしていました。実家の台所のことを順番もばらばらのまま話して、最後にようやく言えました。

「ごめん。細かい人だと思われるのが怖くて、ちゃんと言えばよかった」

彼女は問い詰める口調を途中でやめて、私の向かいの椅子に腰を下ろし、終わりまで聞いてくれました。

そして...

今は、彼女の入れ物は腰の高さの棚にあって、コンロの横には何も置いていません。動かしたくなったら、先に声をかけると決めています。頼み事を口にする方が、掃除のふりを続けるよりずっと楽なのだと、今の私は知っています。

(20代女性・看護師)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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