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『宇宙兄弟』が18年半愛され続けた理由。タイトルの「宇宙兄弟」は、六太と日々人の南波兄弟だけを意味するワケではない?【書評】

  • 2026.8.21

【漫画】1巻を読む

※本記事では『宇宙兄弟』の45巻に関する若干のネタバレがあります。未読の方はご留意ください。

幼い頃にみた夢を、大人になっても追い続けている。そういう人を目にした時、どこかバカにしたように「すごいね」と言う人がいるが、私は心の奥底から「すごい」と思う。憧れを抱き、夢をみて、そこに向かってひた走る。そんな大人は、掛け値なしにカッコいい。

小山宙哉氏による名作『宇宙兄弟』が、18年半にもおよぶ連載に幕を下ろした。高校生から読みはじめた読者は、すでに六太の初登場時の年齢を越えていることだろう。宇宙飛行士を目指す南波兄弟の軌跡は、希望と絶望を幾重にも積み重ね、やがてかけがえのない光を放つ。

一足先に宇宙飛行士になった南波日々人。そんな弟に引け目を感じていた兄の南波六太は、日々人の計らいで、遅ればせながら宇宙飛行士への道に足を踏み出す。彼らの夢を後押ししたのは、天文学者のシャロン。幼い六太と日々人は、近所にあった彼女の観測所で多くの時を過ごし、宇宙についてだけではなく、人として大切なことを教わった。

当然ながら、宇宙飛行士への道のりは決して平坦ではない。六太もまた、多くの試練をくぐり抜け、狭き門を突破した。その過程で得たかけがえのない仲間たちが、本作のラストに集結する。文字通り“胸アツ”な展開は、人間関係が希薄になりつつある現代において、人同士の信頼を思い出させてくれる。

本作終盤、六太は宇宙空間を漂流する絶体絶命のピンチに見舞われる。真っ暗な宇宙に独り取り残され、体をつなぐ拠り所もなく、誰の声も聞こえず、酸素の残量は減り続ける。それは一体、どれほどの恐怖だろう。絶望し、「死」を覚悟した六太は、後世に残すべく己の現状を語り続ける。「死にたくない」と思いながら、死へのカウントダウンを刻む六太のもとに届いた、紫三世からの希望のメッセージ。その声を聞き、絶望に支配されていた六太の心に灯がともる。

六太は助かるのか、日々人は兄を助けられるのか。固唾を飲んで見守る結末のすべてが、最終巻に詰まっている。

引用----

“まったく……なんて兄弟だ……!”

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ハガードが呟いたこの一言に、胸が熱くなる。なんて兄弟――振り返れば、本作ではそう思わされる場面が何度もあった。船外活動中の日々人が窮地に陥った際、日々人の居場所を正確に言い当てた六太。日々人がパニック障害に苦しむ最中、飾らぬ言葉で語り、日々人の心をほぐした六太。日々人の命綱が切れて宇宙空間に放り出されそうになった時、咄嗟に飛び出し、日々人をソユーズにつなぎ止めた六太。兄として、六太は何度も日々人を守ろうとした。子ども時代に遡っても、六太の姿勢は揺るがない。そうして守られてきた弟が、兄の命を救うために力の限り抗う。本当に、なんて兄弟。

引用----

“We are Space brothers”

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六太が語った「宇宙兄弟」の意味は、日々人との絆だけにとどまらない。地上チームによる正確な位置計算とスラスター制御、兄を助けるために力を振り絞る日々人、六太の無事を願う仲間たち、世界中の人々の祈り。このどれか一つでもかけていたら、本作の結末はまったく違うものになっていただろう。

宇宙飛行士の活躍は、彼らだけでなし得ているわけではない。技術の結晶と地道な下支えのおかげで、宇宙飛行士は自らの夢を追えるのだ。見開き2頁に描かれた、グレゴリーとゾーヤを含む「管制室」の姿。ここに、『宇宙兄弟』が描いてきた世界が凝縮されている。

物語の続きを、あれこれ想像する。六太が思い描いた未来は叶うだろうか。彼らの後に続く若き芽は、いつか六太たちが成し遂げたことに“意味”を見出すだろうか。物語を受け取った私たちの未来もまた、間違いなく変化している。その意味を、ありがたみを、今一度噛みしめる。

“最高な未来”を想像することは、夢を叶える第一歩だ。幾つになっても、どんなに周りにバカにされても、生きている限り夢を追っていい。そこで出会えた仲間は、一生ものの財産になる。自分を信じて、人を信じて、前を向いて歩こう。そう思えるようになった私の根っこには、間違いなく本作が息づいている。

文=碧月はる

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