1. トップ
  2. カルチャー・教養
  3. 自分の思い描く未来に「他人が出てこない人」の心理特徴とは

自分の思い描く未来に「他人が出てこない人」の心理特徴とは

  • 2026.8.21
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

数年後の自分を想像してみてください。

仕事をしている自分、休日を過ごしている自分、旅行をしている自分など、さまざまな場面が浮かぶでしょう。

では、その未来の中に家族や恋人、友人などの「他人」は登場しているでしょうか。

実は、未来を思い描いたときに「他人」がどれくらい登場するかには、その人が普段どのように人間関係を築いているかが反映されている可能性があります。

早稲田大学らの研究チームは、「未来の想像」と「愛着スタイル」の関係を調査。

その結果、他人との親密さを避け、自分だけで物事を処理しようとする傾向が強い人ほど、思い描く未来にも他人が登場しにくいことが示されました。

一方で、人間関係について不安を抱きやすい人では、反対に未来の中に他人が登場しやすい傾向が確認されています。

研究の詳細は2026年5月に学術誌『Journal of Individual Differences』に掲載されました。

目次

  • 「未来を想像する」ことの重要な役割
  • ピンチの未来では「他人がいない」傾向に変化が起きた

「未来を想像する」ことの重要な役割

人間は過去について考えるだけでなく、まだ起きていない未来についても頻繁に想像しています。

心理学では、自分に将来起こるかもしれない具体的な出来事を頭の中でシミュレーションする働きを「エピソード的未来思考」と呼びます。

たとえば「来月の休日に海へ出かけている自分」や「新しい職場で働いている自分」を、場所や状況まで具体的に思い描くことです。

こうした未来のシミュレーションは、計画を立てたり、意思決定をしたり、これから起こる出来事に備えたりするうえで重要な役割を持っています。

しかし未来を自由に想像しているように見えても、その内容は完全な白紙から作られるわけではありません。

過去の経験や「自分にとって他人とはどんな存在なのか」という考え方も材料になります。

そこで研究チームが注目したのが「愛着スタイル」です。

「愛着スタイル」が強く関連

今回の研究では、「愛着不安」「愛着回避」という2つの傾向の強さを測定しています。

愛着不安が高い人は、相手に見捨てられないか、必要なときに相手が自分を支えてくれるかを心配しやすく、親密さや安心を強く求める傾向があります。

一方、愛着回避が高い人は、他人と親密になることや他人を頼ることに抵抗を感じ、自分一人で対処しようとする傾向があります。

研究1では、155人の参加者に「愛着不安」と「愛着回避」を測る質問に回答してもらった後、自分の人生で将来起こり得る具体的な出来事を5つ想像してもらいました。

そして、それぞれの未来がどの程度「人間関係に関係した内容だったか」を評価してもらいました。

すると、愛着回避が高い人ほど、想像した未来と人間関係との関連性が低くなっていました。

つまり、普段から他人に頼ることを避ける傾向が強い人ほど、自分の未来を思い描いたときにも他人の存在が薄くなる傾向があったのです。

ここで注意したいのは、「未来に他人がいない人=人間嫌い」という意味ではないことです。

愛着回避が高い人は、必ずしも他人が嫌いなのではなく、親密な関係に距離を置いたり、「できるだけ自分で何とかする」という形で人間関係を処理しやすいと考えられています。

そのため、未来を組み立てるときにも、無意識のうちに「誰かと一緒に行動する自分」より、「一人で行動する自分」が想像されやすいのかもしれません。

そして興味深いことに、その正反対の傾向も確認されました。

愛着不安が高い人ほど、未来の出来事と人間関係との関連性が高かったのです。

つまり、「相手は自分を見捨てないだろうか」「必要なときにそばにいてくれるだろうか」と人間関係を強く意識する人ほど、未来の世界にも他人を登場させやすかったと考えられます。

ピンチの未来では「他人がいない」傾向に変化が起きた

しかし研究チームは、未来の内容がストレスを伴う場合には、この関係が変化するのではないかと考えました。

そこで研究2では、日本の大学生67人に参加してもらい、「ストレスのない未来」と「ストレスのある未来」をそれぞれ5つずつ想像してもらいました。

すると愛着不安については、状況が変わってもほぼ同じパターンが見られました。

愛着不安が高い人ほど、ストレスのない未来でもストレスのある未来でも、人間関係を含んだ場面を思い描きやすかったのです。

つまり人間関係を強く気にする人の場合、楽しい未来でもピンチの未来でも、「他人」が未来の重要な登場人物になっていました。

ところが愛着回避では違いました。

ストレスのない未来では研究1と同じく、愛着回避が高いほど人間関係の少ない未来を思い描いていました。

しかし、ストレスのある未来になると、「愛着回避」と「人間関係の少なさ」との有意な関係は確認されなくなったのです。

これは「普段は一人で何とかしようとする人でも、ピンチになると必ず誰かを頼る」という意味ではありません。

研究で分かったのは、ストレスのある状況では「愛着回避が高いほど、他人の少ない未来を想像する」という通常のパターンが明確ではなくなった、ということです。

愛着理論では、愛着回避の高い人は、他人を頼りたいという気持ちや親密さへの欲求を抑え、距離を取ろうとする「非活性化戦略」を使いやすいと考えられています。

しかし脅威やストレスは、本来、人に支援や安全を求める愛着システムが働きやすい場面でもあります。

そのため、平穏な未来なら「自分だけで何とかする未来」を描きやすい人でも、強いストレスを伴う未来では、他人の存在を遠ざけ続けることが難しくなる可能性があります。

今回の結果は、私たちが思い描く未来が、単なる自由な空想ではないことを示唆しています。

過去の人間関係から作られた「他人は頼れる存在なのか」「自分は誰かに頼るべきなのか」といった感覚が、まだ起きてすらいない未来の風景にも入り込んでいるのかもしれません。

もちろん、未来に他人が少ないからといって愛着回避が強いと診断できるわけではありません。

今回の研究は主に若い大学生を対象としており、研究2は67人と比較的小規模です。

また、想像した未来に人間関係が多いことが「良い」、少ないことが「悪い」という意味でもありません。

それでも、「5年後の自分」を想像したときに誰が隣に立っているのか、あるいは誰も立っていないのかは、現在の自分が人間関係をどのように捉えているかを少しだけ映し出している可能性があります。

私たちが未来を想像するとき、そこに描いているのは未来そのものだけではありません。

まだ存在しない未来の風景の中には、これまで築いてきた人間関係と、そこから生まれた「他人との距離感」もまた、静かに投影されているのかもしれません。

参考文献

Anxious attachment is linked to populating future daydreams with other people, study finds
https://www.psypost.org/anxious-attachment-is-linked-to-populating-future-daydreams-with-other-people-study-finds/

元論文

The influence of attachment style on the extent to which the content of episodic future thinking relates to interpersonal relationships.
https://doi.org/10.1027/1614-0001/a000462

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ