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新種の「バオバブの木」をマダガスカルで発見

  • 2026.8.21
既知種のバオバブの木/ Credit: canva

マダガスカルを代表する植物といえば、太く膨らんだ幹と、空に向かって広がる独特な枝を持つ「バオバブ」です。

その独特の姿から世界的にもよく知られていますが、意外にも、私たちは今でも「バオバブが何種いるのか」という基本的なことさえ完全には把握できていません。

米ウィスコンシン大学マディソン校(UWM)は今回、マダガスカル各地のバオバブを遺伝子レベルで詳しく調査。

その結果、これまで同じ種だと思われていた木の中に、実は別の進化の歴史を持つ集団が隠れていたことが判明しました。

その木は、新たに独立種として認められた「アダンソニア・ボジー(Adansonia bozy)」です。

研究の詳細は、2026年7月12日付で学術誌『Taxon』に掲載されています。

目次

  • 「1種」だと思っていたバオバブが、遺伝的には2つに分かれていた
  • 100年以上前に名付けられたバオバブが「新種」として復活

「1種」だと思っていたバオバブが、遺伝的には2つに分かれていた

今回の研究以前、バオバブ属は世界で8種が認められており、そのうち6種がマダガスカルに固有とされていました。

中でも「アダンソニア・ザー(Adansonia za)」は、マダガスカルで最も広い範囲に分布するバオバブの1つです。

ところが以前から、北部に生えるA. zaには、南部のものとは少し異なる特徴があることが知られていました。

マダガスカルに生息する既知の6種のバオバブのおおよその分布域 / Credit: Karimi et al., TAXON (2026)

研究チームは、この違いが単なる地域差なのか、それとも別の種と呼べるほど大きな違いなのかを確かめるため、マダガスカル各地から集めたバオバブを遺伝子レベルで比較することに。

解析には、比較対象となる別の植物も含めた70サンプルが用いられ、そのうち58サンプルがマダガスカルのバオバブでした。

研究では「ターゲット・シーケンス・キャプチャー」と呼ばれる手法を使い、数百の遺伝子に相当するDNA配列を読み取って、バオバブ同士の進化上の関係を詳しく調べています。

すると、これまでA. zaとしてまとめられていた木が、遺伝的には明確な2つのグループに分かれることがわかりました。

南部のA. zaに対し、北部に生息する集団は、南部の仲間よりもむしろ別種の「A. perrieri」や「A. madagascariensis」に近い関係にあったのです。

つまり見た目が似ていたため同じ種にまとめられていたものの、その「家系図」をDNAから作り直してみると、北部の木は別の枝に属していたことになります。

しかも違いは遺伝子だけではありません。

北部の集団には、葉の構造や花びらの色などにも南部のA. zaとは異なる特徴が知られていました。

これらの証拠を総合したチームは、北部集団を独立した新種と判断し、「アダンソニア・ボジー(Adansonia bozy)」という名前をつけました。

これによって、マダガスカルに生息するバオバブは6種から7種へ、世界全体では8種から9種へ増えることになります。

100年以上前に名付けられたバオバブが「新種」として復活

実はA. bozyという名前が初めて登場したのは1910年です。

植物学者のジョゼフ・ジュメル(Joseph Jumelle)とアンリ・ペリエ・ド・ラ・バティ(Henri Perrier de la Bâthie)が、1909年にマダガスカル北西部のサンビラノ川流域で採集された標本をもとに、この木を独立した種として記載しました。

しかしその後、A. bozyは独立種ではなくA. zaの変種と考えられるようになり、長い間「A. zaの一部」として扱われてきました。

今回の研究は、100年以上前に独立種として記載されたバオバブの位置づけを、現代のゲノム解析によって復活させた形になります。

アダンソニア・ザー(Adansonia za)/ credit: Hectonichus / CC BY-SA 3.0.

A. bozyの主な生息地は、マダガスカル北西部にある比較的湿潤なサンビラノ川流域です。

ところがこの地域では、カカオ農園の造成や焼畑による稲作などのために森林伐採が進んでいます。

チームは、現在知られている分布範囲や個体群の規模、森林減少の状況を考えると、A. bozyはIUCNレッドリストの基準で「Endangered(絶滅危惧)」に相当すると考えています。

これは単にバオバブの種類が1つ増えたというだけの話ではありません。

以前は広範囲に分布するA. zaの一部だと思われていたため、北部の集団だけが限られた地域に生息し、脅威にさらされていることが見えにくくなっていました。

別種だとわかれば、その種がどこにどれだけ生息しているのかを個別に評価でき、保護の必要性もより正確に判断できるようになります。

さらに今回の解析では、別のバオバブ「A. rubrostipa」についても、現在1種とされているものが将来的に2種へ分けられる可能性が示されました。

ただし、こちらについてはまだサンプルが十分ではなく、追加調査が必要だとしています。

巨大で目立つバオバブなら、すでにすべて調べ尽くされているようにも思えます。

しかし今回の研究が示したのは、「そこに木があると知っていること」と「それが何者なのかを正しく理解すること」は別の問題だということです。

100年以上前から人々の目の前に立っていた木が、DNAを読み解くことで再び独立種として認識されることになりました。

そして正しい名前を与えることは、分類学だけでなく、その木を絶滅から守るための第一歩にもなるのです。

参考文献

New Baobab Species Identified in Madagascar
https://www.sci.news/biology/adansonia-bozy-14995.html

Research differentiates new species of endangered baobab tree in Madagascar
https://biology.wisc.edu/2026/08/17/research-differentiates-new-species-of-endangered-baobab-tree-in-madagascar/

元論文

Phylogenomic analysis of Madagascar’s baobabs reveals admixed populations and supports resurrection of a previously described species
https://doi.org/10.1002/tax.70176

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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