1. トップ
  2. エンタメ
  3. 映画『見えない娘 THE INVISIBLES』毎熊克哉×竹林亮監督「間違いなく面白いものになる確信があった」【ロングインタビュー】

映画『見えない娘 THE INVISIBLES』毎熊克哉×竹林亮監督「間違いなく面白いものになる確信があった」【ロングインタビュー】

  • 2026.8.21

映画『見えない娘 THE INVISIBLES』(以下、「見えない娘」表記)は、三人娘の末っ子が“透明人間”で生まれてきたために、他人に知られないよう配慮しながら暮らしている心配性の父親が主人公。ある日、ひょんなことから一家は東京へ旅に出ることになり、予期せぬトラブルに見舞われる。そこで家族の形や気持ちが少しずつ変化していくという、ハートフルな物語だ。

理屈っぽいところもあるが、娘たちを愛してやまない父親・星野学を演じるのは毎熊克哉。毎熊はこれまで、『ケンとカズ』、『全員死刑』、『悪い夏』など、人間の暗部を表現することに長けているイメージが強かったが、本作では一変、おどおどしつつも家族を第一に考える父親をユーモラスに好演。竹林亮監督の手腕も光り、毎熊の俳優としての新たな一面がお目見えしている。

透明人間というキャッチーな要素にしのばせたのは、普遍的な家族愛と人間の良心。作品を通して心を通わせた、毎熊と竹林監督に互いについてロングインタビューした。

「透明人間」を題材にしたハートフルなファミリードラマとなりました。毎熊さんは竹林監督と初タッグでしたが、オファーを受けてどのような印象を持ちましたか?

毎熊:竹林監督とは僕がホストを務める連載に、何年か前にきていただいたのが最初の出会いでした。いろいろな映画の話をしていたんですけど、そのとき竹林さんは『大きな家』というドキュメンタリー作品の撮影中だったんです。「もし次にドキュメンタリーではなく、俳優が必要なときがあったら声でもかけてください」と僕が言って、「そうですね~」、「じゃあ、ありがとうございました」とその場は終わったんです。その2カ月後くらいに、「毎熊さん、実は透明人間の映画があるんですけど……」とお声がけいただいて(笑)。それぐらいの速さだった気がします。

竹林監督:はい、その言葉を真に受けました(笑)。「ぜひ呼んでください!」と言ってくださったのが、あまりにもうれしくて。

毎熊:蓋を開けたら「見えない娘」はめちゃくちゃ長い期間、竹林さんらチームで温めてきた作品だということがわかったんです。「今度よかったら声をかけてくださいよ」と僕が言って、すぐ来るにはかなり重要な仕事だな、と。だから最初は、果たして自分でいいのかなと思ったんです。

でも、僕はこの透明人間の映画をやろうとしていることに、すごく興味が湧いたんですね。題材としての透明人間で言うと、悪さをするタイプや、怖いタイプが多くありますけど、この作品で描かれているのは、自分たちが子供の頃に見ていたような心温まるホームドラマの要素がとても強かったので。竹林さんとは『ホーム・アローン』が好きという話をしていたんですけど、僕も子供の頃に同じような映画を見て、今の感性を育ててもらったと思っているんです。まさにそうした作品になるというか、間違いなく面白くなるだろうという確信がありました。しかも、大事にしてきたものを出会ったばかりの自分に託してくれたんだから、やっぱりちゃんと向き合って、一緒にこの映画作りに参加したいと思いました。

毎熊さんがお話されたように、大事に温めてきた作品がついに始動という流れだったんですね。

竹林監督:そうですね。(企画・脚本の)夏生さえりさんと5年ぐらいずっと温めていました。当時、映画『14歳の栞』というドキュメンタリーを編集していたんです。その頃には、いろいろな形で「見えない娘」のストーリーを作っていて、「いよいよ実現できるかも」というタイミングで(毎熊に)お会いすることができました。そして、毎熊さんが父親役にすごくいいんじゃないかと思ったんです。いいタイミングでお話をすることができて、本当にご縁を感じたというのが、そのときの僕の気持ちでした。

竹林監督が本作を世に出したいと熱を入れていた一番の理由は、どこにあるんでしょうか?

竹林監督:テーマの面では、(企画・脚本の)夏生さえりさんと「目に見えない心のつながりはすごく大事ですよね。それがあったらいろいろな人の背中を押すことができたりしますよね」と話していたんです。今の僕たちは、人のつながりという本来目に見えないものを、数字の形で提示することがステータスになっていたりしますよね。何か気持ちを発表しても、それを「いいね」の数で評価したりとか。何もかもを具体的な数字にすることが、すごく重要なこととしてみんなが思っているなと感じていたんです。

そこで、やはり目を閉じて見えない心のつながりについて描くというのが大事なのかなと思い、作品にして発信したいという気持ちが強くありました。それをどうエンターテインメントとして、みんなに見やすいストーリーとして、スーッと心に入ってくる状態はどういうことなのかなと、ずっと試行錯誤してきた感じでした。

竹林監督のおっしゃる、目に見えやすいものに振り回される気持ちは、毎熊さん自身も感じるときがありますか?

毎熊:自分は今年40歳になるんですけど、今と30年前……自分が子供だった頃を比較すると、本当に随分違うなと思います。昔のほうが目に見えないことを感じられたんじゃないかと。例えば、今だったら友達に会っていなくても、SNSを覗けば投稿があって「ああ、あいつはハワイにいるんだな」と直接聞いてはいないけど、その情報は知ることができますよね。だけど昔は知るすべが電話以外になかったから、「あいつ、今何してんだろうな、今こんな感じな気がするなあ~」という勘が働いていたというか。その感覚は昔のほうがあった気がしますね。

竹林監督:うん、うん。

毎熊:「なんか感じる!」みたいな(笑)。そうした見えないものを感じる力は、本来、人間みんな持っているよね、という感じがするんですよね。

本作では毎熊さんの持ち味のセクシーさや血なまぐささ(が似合うような役)を封印して、とってもナチュラルに心配性で家族のことを第一に思うお父さんになりきっていました。竹林監督は、毎熊さんにオファーした段階で今の仕上がりを予想していたんですか?

竹林監督:毎熊さんに最初にお会いした対談では、本当にインタビューがお上手だったんです。しかもすごく映画のことを大事にして、映画を愛していらっしゃる気持ちをとっても感じました。僕にきちんとコミュニケーションを取ってくださる姿が、純粋な部分の毎熊さんなのだなと、そのとき感じたんです。真摯に向き合ってくださっている様子を、目が合いながらひしひしと感じていたので、今回のイメージは非常にシンプルにできたなというのがありました。

しかも、毎熊さんはプロデューサー業もされていらっしゃるし、専門学校時代に監督業のことも勉強されていて、映画作りの目線もすごく持たれていらっしゃる方なんです。制作の意図を説明してわかってもらえたら、きっと同じグルーヴ感で取り組んでくれるんだろうなという予感がしました。

父親の星野学役に関して言うと、毎熊さんのパーソナリティー的なところが反映して自然に溶け込むのでは、と感じられたということでしょうか?

竹林監督:僕は毎熊さんの映画について、最初に『ケンとカズ』を観たんですね。ほかに『全員死刑』などのイメージもありますけれど、僕が見ている毎熊さんはそれらとは違うなと思っていました。娘と向き合いながら意見を聞いて対等に向き合う父親、娘を愛して心配している父親という役で深掘りさせてもらえたら、すごく楽しいんじゃないかなという気持ちがあったんです。おこがましいんですが、一緒にそういう面を出していけたら、僕としてはすごく本望だなと思いましたし、実際、何の違和感もなくすっと想像できました。

毎熊さんは、新たなフェーズの役として感じていらしたんでしょうか?

毎熊:いやあ、ありがたかったです。こうした心配性のお父さんの役はやったことがなかったので。いつも新しい役柄には挑戦したいと思っていますし、そんな新しい役柄を竹林さんがやらせてくれたと思っています。

そして……おっしゃるような、これまで演じてきたいわゆるちょっと悪いことをする人たちなんですが(苦笑)。それはそれで、自分の中では苦労してやったものでした。そう言うと大げさなんですけどもね。いわゆる“やばいやつ”をやるためには何が必要なんだろうなと思って、いろいろ準備をして臨んで、結果、見てくださった人たちが「やばいな、怖い!」と思ってくれてよかったなとは思っているんです。

ただ、それと同じようなことがどの役にでもあると思っています。学については、普段しゃべっている今のような自分をそのまま(出す)というよりかは、竹林さんがイメージしているこの心配性なお父さん像、僕はたぶんどこかで竹林さんご自身のニュアンスもこの役に含まれてそうだなとちょっと思ったりしていたんです。なので、竹林さんをよく見て観察していました(笑)。

竹林監督は、実際現場にいらして、毎熊さんの達者っぷりに驚いたりなどはありましたか?

竹林監督:撮影前の段階から、日々思っていました。まず取り組み方として準備段階で、最初に「透明人間という存在をつかみたい」という気持ちを話してくれたんです。「目隠しをして、ひかり役の(鈴木)凜子ちゃんを探そう。見えない状態の感覚をつかむにはどうすればいいかを、みんなでやろう」と提案してくださったんです。実際にやったときに、子役のみんなも「つかめた!」と言っていました。そのぐらい初期段階から「こういう取り組みしよう」といっぱい向き合ってくださってるところに、まずすごくありがたみを感じていました。

撮影に入ってからは、長女の風子(近藤華)や次女の音々(矢山花)は、「私にぴったり!」、「この役のこと、わかってる」みたいな感じで、すごいハマっていたんですよ。その中で毎熊さんだけ、どんな説明をしても「うーん……まあ、はい……。本番になってからわかりますかね」みたいな感じだったんです。

毎熊:ありましたね(笑)。

竹林監督:説明したり話していても、毎熊さんが煮え切らない、というか(笑)。蓋を開けて見てくださいよ、みたいな感じだったんです。どうやっても撮影前は「わかった!」みたいなわかりやすい反応をしてくださらず。でも、現場ではパッとお父さんになるので、あれはすごいと思いました。カットの後に毎熊さんに「よかったですね!」と言っても、「そうでしたか……?」という反応で、そのずっと煮え切らない感じが僕は面白かったです。ずっと探っていらっしゃるんだなと感じましたので。

役に対する自問自答を続けていらっしゃるような感じだったんですね。

竹林監督:自分の中の非言語的な部分も信じて、その場でどう出るかみたいなところをやっていらっしゃるんだなと思っていました。だから、日々スタートするまでどう出るかわからない、みたいなときもありました。ショッピングモールで子供たちが迷子になったときも、本番では全然想像しない表情を毎熊さんはするんですよ。生の表現としてどう出るかを日々やっていらっしゃる姿を見ていて、本当に映画作りは面白いと感じさせてもらっていました。あとは、やっぱりラストカットの毎熊さんの表情が秀逸です。絶対にその瞬間を見たいという気持ちで撮っていたので、撮ることができてよかったです。

FILMAGAは映画好きが多く集まるサイトなので、最後にお二人が最近観た映画やドラマで印象に残った作品を教えてください。

毎熊:『LOST LAND ロストランド』が最近だと印象に残っています。少し前知識を入れてから観たんですけど、何も知らずに観たら、きっとドキュメンタリーかなと思うくらい、カメラと被写体の距離が不思議な作品です。主人公は少数民族ロヒンギャの幼い姉弟なんですけど、彼らをずっと追っている映画なので、ただ追いかけているだけに見えるというか。でも、本当はいろいろなものを作り込んでやっているのに、作り込んでる感が全くないからすごいなと思いました。日本人の監督さんが海外で撮っている映画で、ああいう感じはあまり見ないなと思ったのですごく面白かったです。

竹林監督:僕は『落下の王国』を最近映画館でまた観ました。公開当時も観ていたんですが、今観ると、公開当時から10年ぐらいたっているので、全然違うように感じました。やっぱりターセム(・シン)監督がビジュアルをめちゃくちゃ作り込んで、完璧な美意識の中でストーリーを語っていらっしゃるんです。しかし、その中でどこか完璧さとは真逆の、偶発的なものを受け入れるようなスタンスで主演の女の子の人間性を愛でている感じがして、スタッフもその子から何が出るのか、どういう表現が出るのかを楽しみにしながら撮影している感じが伝わってくるんですよね。彼女の人間性が出ながらも、役にすごくうまくハマっている様子を見ると、とても絶妙で唯一無二な作品なんだな、というのを改めて観て感じました。めちゃくちゃ好きだなと思いました。

(取材・文:赤山恭子)

映画『見えない娘 THE INVISIBLES』は8月28日(金)、TOHOシネマズ日比谷他全国公開。

出演:毎熊克哉 鈴木凜子 近藤華 矢山花 寺島進 余 貴美子
監督:竹林亮
企画・脚本:夏生さえり・竹林亮
公式サイト:https://mienaimusume.com/
配給:PARCO CHOCOLATE Inc.

(c)THE INVISIBLES Production Committee

※2026年8月17日時点の情報です。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ