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「一体なぜ…」父の借金3,000万円を“相続放棄”した50代娘、翌年に市区町村から届いた“1通の通知”に戸惑ったワケ

  • 2026.9.8
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。金融機関勤務のおがわ163です。20年間、金融機関の窓口で資産運用や家計相談に携わってきた経験をもとに、お金にまつわるリアルなエピソードをお届けしています。

今回ご紹介するのは、父の事業の借金を理由に相続放棄をした50代の主婦Aさんの体験談です。放棄したはずなのに届いた固定資産税の納付書に、Aさんは戸惑うことになります。

父の事業の借金を理由に、相続放棄を選んだ

Aさんは主婦で、夫と子供のいる4人家族です。父が営んでいた事業がうまくいかず、多額の借金を残して亡くなりました。

父が遺したプラスの財産は査定額1,000万円ほどの実家のみ。一方で事業の借金は3,000万円以上に上ることが判明しました。あきらかに負債のほうが大きく、引き継ぐことはできないと判断したAさんは、きょうだいと相談のうえ家庭裁判所に相続放棄を申し立てました。

年をまたいで、翌年の2月に無事、相続放棄が受理されました。「これでもう関係がなくなった」と、Aさんはひと安心していました。

受理から数か月後、市区町村から届いた納付書

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

ところがその年の春、市区町村から実家の固定資産税の納付書が届きました。宛名はAさんになっていました。

「相続放棄したのに一体なぜ…」

資産運用の相談で窓口を訪れた際にこの話をしたAさんに、担当者は大まかな仕組みを説明しました。

固定資産税は不動産の「所有者」に課される税金で、毎年1月1日時点で課税台帳に登録されている人が納税義務者になる、いわゆる「台帳課税主義」という考え方があること。さらに、相続放棄が受理されるタイミングによっては、まだ台帳の情報が更新されておらず、放棄したはずの人に納付書が届くケースがあるらしいということについてです。

「詳しい仕組みや対応方法は、市区町村の窓口で確認したほうが確実だと思います」と案内され、Aさんは後日、市役所に相談に行くことにしました。

市役所で聞いて分かった、「占有」と「保存義務」の違い

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

市役所の窓口で担当者に事情を説明すると、次のように教えてもらえました。

Aさんが相続放棄を申し立てたのは前年の12月、受理されたのは翌年の2月。1月1日の時点ではまだ放棄が記録に反映されておらず、法定相続人の一人であるAさんが、納税通知を受け取る「相続人代表者」として登録されていたとのことでした。この代表者はあくまで通知の受取窓口で、個人に支払い義務が生じるものではないともいいます。

「相続放棄申述受理通知書」または「受理証明書」を提示すれば、所有者でないことを確認してもらえ、支払う必要はなくなると案内され、Aさんがコピーを提出すると、その年の課税は取り消されました。

あわせて、混同しやすい2つの言葉についても説明を受けました。

ひとつは「占有」です。2023年の民法改正により、相続放棄をした人でも、放棄した時点でその不動産を実際に占有していた場合は、次の管理者に引き渡すまで一定の「保存義務」を負うことがあります。
この「占有」は、住民票がどこにあるかとは関係なく、実際に住んだり鍵を管理したりして、事実上その不動産を支配していたかどうかで判断されるとのことでした。Aさんの場合、実家に住んでいたのは父だけで、Aさん自身は別の場所に住み住民票もそちらにあったため、占有していたとはいえず、保存義務の対象にはなりませんでした。

もうひとつは「保存義務」の中身です。不動産が朽ちて倒壊したり近隣に迷惑をかけたりしないよう、次の管理者に引き継ぐまで最低限の維持管理をする義務のことで、固定資産税を納めることとは別物だと教えてもらいました。固定資産税を払うべきなのは、あくまで不動産の「所有者」であり、相続放棄をした人は所有者にはならないため、台帳への反映のタイムラグによる誤請求を除けば、納税義務自体が生じないとのことでした。

「銀行では大まかな流れを教えてもらい、詳しいことは市役所でしっかり確認できました。税金の話、占有の話、管理の話が、それぞれ別の制度だったんですね」とAさんは話してくれました。

固定資産税の仕組みと保存義務の違いを正しく理解しておく

それでは最後に、固定資産税の仕組みと保存義務の違いについて知っておきたいことを確認しておきましょう。

  • 固定資産税は不動産の「所有者」に課される税金で、毎年1月1日時点で課税台帳に登録されている人が納税義務者になる(台帳課税主義)
  • 相続発生後は、市区町村が相続人の中から1人を「相続人代表者」に選び通知を送る。代表者はあくまで受取窓口で、個人に支払い義務が生じるわけではない
  • 相続放棄が年をまたいで受理されると、1月1日時点では台帳に未反映で、放棄したはずの人に納付書が届くことがある
  • 「相続放棄申述受理通知書」または「受理証明書」を提示すれば、所有者でないことを確認してもらえる
  • 2023年の民法改正による「保存義務」は、不動産を実際に占有していた人が次の管理者に引き渡すまで負う最低限の維持管理義務で、固定資産税の納税義務とは別物
  • 「占有」は住民票の所在地とは無関係で、実際にその場所を事実上支配していたかどうかで判断される

「相続放棄したのだから、もう無関係」と思い込む前に、税金の仕組みと管理義務はそれぞれ別のルールで動いていることを知っておくことが、誤った請求や思い込みに慌てないための備えになります。相続放棄後に納付書や督促が届いたときは、まずは市区町村や、依頼した弁護士・司法書士に相談してみてください。


執筆:おがわ163
金融機関勤務(勤続20年)。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。窓口業務・資産運用相談の現場経験をもとに、生活に役立つお金の知識をわかりやすくお届けしています。

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