1. トップ
  2. ビジネス・マネー
  3. 「106万円の壁を超えると手取りが減る…」月8.8万円以下でシフトを抑えていた60代女性、銀行窓口で知った“26年10月の改正”

「106万円の壁を超えると手取りが減る…」月8.8万円以下でシフトを抑えていた60代女性、銀行窓口で知った“26年10月の改正”

  • 2026.9.30
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。金融機関勤務のおがわ163です。20年間、金融機関の窓口で資産運用や家計相談に携わってきた経験をもとに、お金にまつわるリアルなエピソードをお届けしています。

今回ご紹介するのは、夫の健康保険の扶養に入りながらパートを続けてきた60代女性Aさんの体験談です。2026年10月の制度改正を前に、Aさんが知った”壁”の変化とは。

月8.8万円を超えないよう、シフトを抑えてきた

Aさんは61歳。夫は66歳で、年金を受け取りながら再雇用で勤務を続けており、勤務先の健康保険に加入しています。Aさんはその被扶養者として、近所のスーパーで週16時間ほどパートをしてきました。

時給は1,200円ほど。月の収入は8万3,000円程度で、社会保険に加入する目安とされる月8.8万円を超えないよう、意識してシフトを組んでいました。

「106万円の壁を超えると手取りが減ると聞いていたので、そこだけは守ってきました」

ところがある日、店長から、人手が足りないので週20時間まで増やせないかと相談を受けます。収入が増えるのは助かる一方で、社会保険に加入することになるのではないかと、Aさんは迷いました。

分かれ目は「金額」ではなく「働く時間」だった

資産運用の相談で銀行窓口を訪れたAさんは、この話を担当者にしてみました。

説明を聞いて、Aさんは思い違いに気づきます。短時間で働く人が社会保険に加入する要件は、金額だけではありません。従業員51人以上の企業では、週の所定労働時間が20時間以上であることも条件です。Aさんの勤務先はこの規模にあたり、時給1,200円で週20時間働けば、月の収入は10万4,000円ほど。今のルールでも月8.8万円を超えるため、シフトを増やした時点で加入対象になります。

「金額で調整していたつもりでしたが、実際に効いていたのは時間のほうだったんですね」

さらに2026年10月には、月8.8万円という賃金要件そのものが撤廃される予定です。すべての都道府県で最低賃金が時給1,016円以上となり、週20時間働けばほぼ自動的に月8.8万円を超えるため、金額の基準が意味を失っていたのです。今後は年収にかかわらず、週20時間以上かどうかが分かれ目になります。

なお、企業規模の要件も段階的に縮小され、2027年10月に従業員36人以上、2035年10月にはすべての企業が対象になる予定です。

加入すると手取りはどうなるのか、試算してみた

undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

Aさんが一番気にしていたのは、手取りがどうなるかでした。

月10万4,000円の収入から、健康保険料と厚生年金保険料に加え、61歳のAさんは介護保険料、さらに雇用保険料もあわせて、月1万6,000円ほどが引かれる計算です。差し引きの手取りは8万8,000円ほどで、現在の8万3,000円より増える見込みでした。

「減ると思い込んでいましたが、働く時間が増える分、手取りはむしろ増えるんですね」

厚生年金に加入すれば、将来の老齢厚生年金も増えます。この収入水準で1年加入すると年6,800円ほど、5年続ければ年3万円以上の上乗せが一生続く計算です。自分で健康保険に加入すれば、病気やけがで働けなくなったときに傷病手当金を受け取れるようにもなります。

一方、60歳以上は国民年金の第3号被保険者にはなりませんが、年収180万円未満などの要件を満たせば、夫の健康保険の被扶養者には引き続き入れます。扶養を続けるか、自分で加入するかは、働く時間で選ぶことになるのです。

Aさんは、店長からの申し出を前向きに検討することにしました。

制度改正を前に確認しておきたいこと

金額の基準だけを意識していると、これからの働き方の判断を誤ることがあります。以下の点を押さえておきましょう。

  • 2026年10月に月8.8万円の賃金要件が撤廃予定
  • 今後は「週20時間以上」が加入の分かれ目
  • 企業規模要件も2035年10月にかけて縮小
  • 加入しても手取りが増えるケースがある
  • 厚生年金加入で将来の年金が上乗せされる
  • 健康保険加入で傷病手当金の対象になる
  • 60歳以上も夫の健康保険の扶養には入れる

「扶養の範囲を守れば損しない」と思い込む前に、自分の場合はどうなるのかを確認しておくことが、納得のいく働き方を選ぶ第一歩です。気になることがあれば、勤務先や年金事務所に相談してみてください。


執筆:おがわ163
金融機関勤務(勤続20年)。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。窓口業務・資産運用相談の現場経験をもとに、生活に役立つお金の知識をわかりやすくお届けしています。

の記事をもっとみる

注目コンテンツ