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「香典は全部、こちらで預かるから」生前は実家に寄りつかなかった兄。葬儀当日、兄嫁の行動に思わず絶句

  • 2026.8.20

生前は寄りつかなかった兄が、喪主の席にいた

父が亡くなったと知らせたとき、電話の向こうの兄の声は驚くほど落ち着いていた。

ここ数年、兄が実家の敷居をまたいだ記憶がない。

父の通院に付き添うのも、弱っていく父の様子を母と一緒に見守るのも、ずっと私の役目だった。

「日取りも段取りも、こっちで決めるから」

そう言われて、私は受話器を持ったまま、しばらく声が出なかった。

通夜の日、兄は誰よりも早く式場に来ていた。

そして案内されるより先に、迷いなく祭壇の正面へ腰を下ろした。喪主の席だった。

「喪主は俺がやる。お前は受付にいてくれ」

母は黙ってうなずいた。この期に及んで揉めたくはなかったから、私も何も言わなかった。

通夜と葬儀を合わせて、会葬者は100人を超えた。

父を知る方が次々に訪れ、母の知人も、私の友人も、遠方から駆けつけてくれた。

受付の列は最後まで途切れず、私はひたすら頭を下げ続けた。

「お父様には、本当にお世話になりました」

手を握ってそう言ってくださる方の名前を、私は一人ずつ心に刻んだ。

中には二十万円ほどを包んでくださった方もいて、封筒の厚みに指先が震えた。

この方たちに、落ち着いたら必ずお礼を差し上げよう。そのときの私は、それだけを考えていた。

「預かる」と言われたきり、何も返ってこない

葬儀が終わり、受付に積み上がった香典袋を整理しようとしたときだった。

兄嫁が、箱ごとすっと抱え上げた。

「香典は全部、こちらで預かるから」

え、と声が出た。

兄夫婦はその箱を車に積み、そのまま帰っていった。

喪主がまとめるものだと言われれば、そういうものかとも思う。

ただ、誰がいくら包んでくださったのかが分からなければ、お礼の出しようがない。数日待って、私は電話をかけた。

「お礼状を出したいの。お名前と金額だけでも教えてほしい」

「そのへんはこっちでやるから、気にしなくていいよ」

何度頼んでも、名簿の写しは一度も回ってこなかった。

母に相談すると、疲れた声で言われた。

「もう、いいじゃないの」

母の知人にも、私の友人にも、私は結局、当たり障りのない文面の礼状を出すしかなかった。

あの方にどれだけのご厚意をいただいたのか、私は今も知らない。

それからしばらくして、親戚の集まりで、兄嫁が真新しい高級なバッグを提げているのを見かけた。

誰も何も言わなかったし、私も何も聞けなかった。

父の介護に、兄は一円も出さなかった。それなのにあの日だけ、なぜあんなに迷いなく、いちばん前に座れたのだろう。今も、分からないままでいる。

※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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