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「全部、好きに食べていいんだって」風呂上がりの休憩所で見かけた女性。だが、思わぬ行動にドン引きした瞬間

  • 2026.8.19

何でも自由に使える、評判どおりの旅館だった

家族で泊まったその旅館は、サービスの手厚さで知られた宿だった。

館内着もタオルも好きなだけ使えて、廊下の一角には自由に飲めるドリンクのサーバーが置かれている。

風呂上がりに立ち寄る休憩所には、冷凍ケースにアイスが並び、隣の棚にはカップ麺やお菓子まで積まれていた。

「全部、好きに食べていいんだって」

子どもがはしゃぐのも無理はなかった。

夫と顔を見合わせて笑いながら、私はまず湯に浸かることにした。

上がったらアイスを取りに行こう。そう決めて、少し長めに湯船へ沈んだ。

髪を乾かして休憩所へ向かったのは、夜もずいぶん遅くなってからだった。

廊下は静まり返っていて、私のスリッパの音だけが響いていた。角を曲がったところで、私は足を止めた。

目が合った瞬間、その人は背を向けた

冷凍ケースの前に、人がいた。

肩から提げた大きな袋の口を広げて、その人は手を動かし続けていた。

ケースからアイスをつかんでは袋へ、棚のお菓子を抱えては袋へ。数えられる量ではなかった。

袋の底がふくらんで、形が崩れていくのが遠目にも分かった。

受付のカウンターには、誰もいなかった。

見回りにでも出ているのか、呼び鈴の置かれた台の向こうは暗いままだった。

私は声をかけることも引き返すこともできずに、ただ立っていた。

そのとき、その人がふと顔を上げた。

目が合ったのは、ほんの一瞬だった。

次の瞬間、袋の口をぎゅっと握り込んで、その人は背を向けた。スリッパを引きずる音が、廊下の先へ足早に遠ざかっていった。

入れ替わるように、スタッフの方が戻ってきた。空になった冷凍ケースと、隙間だらけの棚を見て、ほんの少しだけ動きが止まった。

「お待たせしました。すぐ補充しますね」

それだけ言って、その方は台車からアイスとお菓子を並べ直した。

誰かを探すでもなく、館内放送をかけるでもなかった。

並べ終えると、手のひらほどの札を、棚の端にそっと置いた。

「お一人さま一つずつでお願いしております」

部屋に戻って、私は夫に見たままを話した。

「アイスもお菓子も、袋に詰めていくのよ」

「そんな人、本当にいるんだな」

夫は呆れたように笑って、それきり何も言わなかった。

誰かを悪く言い合っても、あの棚が元に戻るわけではない。そう分かっていたのだと思う。

翌朝、休憩所をのぞくと、棚の上には小分けの籠が並んでいた。

一人分ずつ、お菓子とアイスが収まっている。取りやすくて、選びやすくて、昨夜よりずっと気持ちのいい眺めだった。

「一人ぶんずつ入ってる。取りやすいね」

子どもが籠をひとつ手に取った。とがめる声はどこにも上がらなかった。それでも、線はきちんと引かれていた。

※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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