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異様な雰囲気が漂う祖母の家の2階にいたのは、あきらかに人間ではない謎の生き物――少年が美しくも不穏な世界へ足を踏み入れていくホラーミステリー、開幕【書評】

  • 2026.8.11

【漫画】本編を読む

「この部屋はのぞかないように」などと言われると、昔話『鶴の恩返し』よろしく、好奇心には勝てないものだ。『臓腑の花束』(ISHIDA UMI/KADOKAWA)は、離島にある祖母の家を訪れた少年が、人間ではない謎の生き物と出会うことから始まる異種族ホラーミステリーだ。

中学生の琉ノ介は、夏休みの間、離島にある祖母の家で過ごすことになる。そこで琉ノ介は、明らかに異様な空気を放っている2階に興味を持つが、祖母と暮らしている叔父からは「絶対に2階に上がってはいけない」と釘を刺される。これまでに見たこともない叔父の形相が、ただごとではないことを物語っていた。

ところが、何かに導かれるように琉ノ介は禁じられた2階へ足を踏み入れ、部屋の扉を開けてしまう。そこで目にしたのは、真っ赤な肌に白い髪の毛、尖った長い耳を持つ、明らかに人間ではない存在だった。地球上の生き物なのかさえわからない異形ながら、顔立ちだけであれば人間のようにも見える。そしてその異形の生物は、琉ノ介に向かって「ここから出してほしい」と無邪気に懇願するのだった。

叔父はこのバケモノを閉じ込めていたのではないか。そう思いつつ、琉ノ介は恐怖を抱きながらもその生き物に興味を持ってしまう。人ならざるもののはずなのに言葉は通じる。表情はよく変わり、どこか人懐こさもある。触れた体の感触は自分とそう変わらず、感情もある。戸惑いのなかで、琉ノ介は名前のないその生き物に「セキ」と名づけるのだった。

美しい絵で描かれるセキのあどけない姿は、かわいらしくもあり、同時に底知れない怖さも漂わせている。セキは本当に害のない存在なのか。叔父は何を隠しているのか。時折ちらつく不気味な場面が、琉ノ介とセキの交流に不穏な影を落とす。得体の知れない存在に惹かれていく琉ノ介の危うさにハラハラしながら、この謎だらけの物語に目が離せなくなるだろう。

文=ゆくり

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