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明るくて優しかった母親が少しずつ消えていく…11歳でヤングケアラーとなった息子が見つめた、若年性認知症の母親と家族の現実【書評】

  • 2026.8.11

【漫画】本編を読む

『48歳で認知症になった母』(美齊津康弘:原作、吉田美紀子:漫画/KADOKAWA)は、48歳という若さで認知症を発症した母親と、その変化に向き合わざるを得なかった家族の日々を描いた実録コミックエッセイである。原作者・美齊津康弘氏が小学5年生でヤングケアラーとなった実体験をもとにしており、病と家族にのしかかる現実の重さを描き出している。

物語は、明るくて優しく、家族の中心だった母親に少しずつ異変が現れるところから始まる。物忘れや会話の食い違い、不可解な行動。当初は些細なことに思えた違和感が、やがて日常を揺るがす深刻な状況へとつながっていく。高齢者の病というイメージが強いアルツハイマー型認知症が、働き盛りで子育て中の48歳の母親を襲ったという事実は、家族の人生設計を大きく狂わせていく。まだ11歳である主人公もまた、介護の現実に巻き込まれていくのだった。

認知症の症状が徐々に進行し「母が母でなくなっていく」ことを見つめる主人公の喪失感は計り知れない。昨日までできていたことができなくなり、会話も通じなくなってしまう。目の前にいるのは確かに大切な母親なのに、少しずつ別人のようになっていく。多感な時期ゆえに、病気の母親に手を上げてしまう主人公が、そのトラウマを抱える姿には胸が痛くなる。

認知症の介護は、子どもが担うにはあまりにも重い役割だ。学校生活を楽しみたい年頃に、家の事情を抱え、周囲に理解されない孤独の中で母親の世話をする姿はヤングケアラー問題そのものである。本作は、そうした言葉がまだ一般化していなかった時代の苦しさも伝えてくる。

しかし本作はただ悲しいだけでは終わらず、母親と過ごした時間を糧に、主人公が人生を切り開いていく姿も描かれている。認知症の家族を持つ苦しみと、それを乗り越えて生きていく「家族の強さ」というものを思い知らされる作品だ。

文=小柳テム

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