1. トップ
  2. 不器用で、お節介で、お人好しの「便利屋」が、旧友と背負った過去の後悔とは? 小江戸・川越で繰り広げられるノスタルジックヒューマンドラマ【書評】

不器用で、お節介で、お人好しの「便利屋」が、旧友と背負った過去の後悔とは? 小江戸・川越で繰り広げられるノスタルジックヒューマンドラマ【書評】

  • 2026.8.11

【漫画】本編を読む

歴史ある蔵造りの街並みが残り、多くの観光客で賑わう小江戸・川越。風情あるこの町の一角に、一見ぶっきらぼうでくたびれた顔をした男が暮らしている。『うるわし君の麗しい日々』(あさひよひ/ぶんか社)は、そんな町を舞台に、便利屋を商う男性と、彼を取り巻く人々の日々を描いたヒューマンドラマだ。

主人公である45歳独身の雲類鷲 六(うるわし ろく)は、この町で「便利屋うるわし」を営んでいる。高校時代からの付き合いである駄菓子屋の店主・結善(ゆうぜん)と同居しながら、人捜しや猫捜しから、草刈り、店番、ビラ配りまで、頼まれれば何でも引き受ける仕事をしている。愛想がなく、初対面では近寄りがたい雰囲気があるが、その性格は驚くほどお節介でお人好しのため、街の人に慕われている人物である。

雲類鷲のもとに持ち込まれる依頼が本作の軸となっており、どれも一筋縄ではいかない人間模様が展開される。ある日、草むしり代行の依頼で訪れた家では、なぜかすでに庭がきれいに掃除されており、不思議に思った雲類鷲が事情を探っていくと、そこには母親が娘に「草むしりをしてほしい」と頼んだ理由と、互いを思うからこそすれ違ってしまった彼女たちの関係が見えてくる。

別のエピソードでは、八百屋の元店員がストーカー被害に遭っているという相談が舞い込む。雲類鷲が調査を始めると、不審な行動の裏には単なる迷惑行為だけでは片づけられない事情があり……。便利屋として依頼をこなすうちに、雲類鷲は人々が抱えている寂しさや後悔、言えなかった本音に触れていく。

ぶっきらぼうな雲類鷲の手によって人々のこわばった心が少しずつほぐれていく過程には、じんわりと温かい余韻が残るだろう。さらに、雲類鷲と結善が背負ってきた過去の後悔も見え隠れし、物語は町の人情話だけでは終わらない。どこか懐かしい空気が漂う川越の町で、今日も誰かの困りごとに首を突っ込む便利屋の日々をずっと見守っていたくなる作品だ。

文=ゆくり

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ