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なぜ私はヤマハとスズキばかり乗るのか? トレール好きが語るYとSの魅力

  • 2026.8.4

お久しぶりのような気がする。気のせい? 木の精? 終わったと思ったらまた現れる、いぼ痔のようなこのページの時間です。今回は、なぜか気付けば愛車がヤマハとスズキばかりになっていた筆者が、思い入れのあるトレールモデルを振り返ってみる。ラインアップはかなり偏っているけれど、それも趣味というもの。「世の中そういうものさ」と昼寝中の老猫のような気持ちで、肩の力を抜いて読んでいただければ幸いです。

TEXT/F.Hamaya 濱矢文夫

愛すべき、理由と書いてワケ

実は──ともったいぶる話でもないけれど、原田知世さんが映画『時をかける少女』で「ラベンダーの香りがするわ」と言っていた時代から、首元から加齢臭がほんのり漂うようになった現在まで、振り返れば私が乗ってきたバイクの多くはヤマハかスズキだった。

もちろん、メーカーにこだわりがあるわけではない。その時々で「このバイクに乗ってみたい」と思ったモデルを選んできた結果、偶然この2社に偏っただけ。他メーカーに魅力がないなんてことはまったくなく、単純に私の心を掴んだバイクがヤマハとスズキに多かったのである。

私にとってヤマハの魅力は、どこか洗練された美しさと、おしゃれ泥棒のような雰囲気。そして、自然に身体へ馴染むハンドリングだ。

一方のスズキは、性能や装備を考えると驚くほどコストパフォーマンスが高い。「この内容でこの価格?」と思わせてくれるモデルが多く、財布に優しいのにしっかり楽しい。異論は認める。でも私はそう思っている。

そんな親しみ深い2社だからこそ、これからも心が躍るトレールモデルを世に送り出してほしい。……などと、それっぽく締めてみたけれど、実際のところ今回の企画は思いつきだったりする。

1992_SUZUKI ジェベル250:百戦錬磨のジェベリストになるんだ!

ジェベルには250と、その弟分となる200がある。どちらも空冷単気筒だから「排気量が違うだけでしょ?」なんて言う人がいたら、「ふふふ、素人め」と心の中でつぶやいて差し上げよう。面と向かって言うと角が立つ。田園調布に家が建つ。星セント・ルイスばりの手さばきで、Diggy-MO並みの早口ラップを披露することになるので、その辺はほどほどに。

……まあ、それはさておき。

ジェベル200が2バルブなのに対し、250は4バルブヘッドにバランサーを搭載した別物のエンジン。標準でオイルクーラーまで装備するなど、装備面でも250のほうが豪華仕様になっている。

1922_SUZUKI ジェベル250
1922_SUZUKI ジェベル250

もちろん、そのぶん重量は増える。競技車両の軽さを知るダートスポーツ読者の皆さまからすれば「誤差みたいなもの」と思われるかもしれないが、実際に乗り比べると違いは意外なほど明確だ。

ロングツーリングまで視野に入れるなら250。軽さを生かして林道を軽快に走り回りたいなら200。そんな見事な棲み分けができている。

だから筋金入りのジェベル好きなら、250と200の両方を所有するべきである。もっとも、他人から見れば「今日はどっちで来たの?」くらいの違いしか分からない気もするけれど。

せっかくだからジェベル125も手に入れてコンプリートを目指そう。フェラーリ好きがディーノV6を積んだランチア・ストラトスに憧れるように、BETA ALP200までそろえれば、もう立派なジェベル沼の住人である。

1993_SUZUKI ジェベル200:時を重ねて進化をし、そして消えゆくのは人と同じ

よく見るとサイドカバーには「SE-Ⅱ」の文字が入っている。ちなみに上のジェベル250は「SE-Ⅰ」。とはいえ、どちらも正式な車名ではない。

試しにGeminiへ聞いてみたら、「SE-Iは街乗りやツーリング向けの標準モデル、SE-IIはサスペンション調整機構を備えた豪華版モデル。中古車市場ではSE-IIのほうが人気」と教えてくれた。

Geminiめ、お主もまだまだじゃのう。街の遊撃手にはなれんぞ(それはいすゞだけ)。

1993_SUZUKI ジェベル200
1993_SUZUKI ジェベル200

実際のところ、このSE-ⅠとSE-Ⅱはセルスターター付きモデルを排気量で区別するための記号に過ぎない。

そして200最大のポイントは、250よりシート高が圧倒的に低いことだ。250が880mmなのに対し、200は810mm。前身となるSX200Rよりも10mm低く設定されている。

250が本格派トレールとして仕上げられたのに対し、200がライバルとして見据えていたのは、おそらくセロー225。だからこその、このシート高だったのだろう。

それにしても、「俺、SE-Ⅱに乗ってるんだ」と得意げに語る人には、いまだ一度も出会ったことがない。

2002_SUZUKI VanVan200:とぼけた顔しなくてもババンバン

「VanVan 200ってトレールなの?」と思った方もいるかもしれない。だが、以前にも書いたように、ダートを走れば全部オフ車である。天の光はすべて星。そういう理論だ。

そう考えれば、MotoGPマシンがコースアウトして時速200km近い勢いでグラベルへ飛び込んでいく姿よりも、VanVan 200のほうがよほどオフロードバイクらしい。サンドウィッチマン伊達みきおの「カロリーゼロ理論」と同じで、細かいことは気にしない。

オンロード専門誌でも、オフロード専門誌でも主役になり切れない絶妙な立ち位置も、このバイクの魅力だ。そんな少数派な存在だからこそ、妙にマニア心をくすぐられる。

2002_SUZUKI VanVan200
2002_SUZUKI VanVan200

賢明なる読者の皆さまには説明不要かもしれないが、1970年代にはVanVan RV90、RV75、RV50という極太タイヤを履いたレジャーバイクが存在した。VanVan 200は、その名車たちへのオマージュとして誕生したモデルである。

極太タイヤは、砂地や柔らかい路面でも沈みにくいのが特徴。そしてストリートでTW200/225が大ブームになると、「そういえば、うちにも太いタイヤのバイクがあったな」と思い出したかのように、VanVan 200が登場したのである。

1994_YAMAHA TT250R Raid:ラリーレイドから名を取った汎用二輪型決戦兵器

少し前──と言っても、もう20年くらい前になるだろうか。このTT250Rレイドとベース車のTT250Rは、街でも林道でも本当によく見かけた。それが最近は、ほとんど姿を見なくなってしまった。

同じような立ち位置のホンダXRシリーズは今でもちらほら見かけるのに、不思議なものである。象の墓場伝説のように、自ら終焉の地へ向かったのか。それとも海を渡り、チンギス・ハンにでもなったのか。あれほどいたTTたちは、一体どこへ消えたのだろう。

だからこそ、今では希少な存在になってしまった。そのレア感が、またたまらない。

2ストロークのイメージが強いヤマハが、高性能な4ストロークDOHCエンジンを搭載し、当時人気を集めていたエンデューロレースでも戦える本格トレールとして送り出したのがTT250Rだった。

1994_YAMAHA TT250R Raid
1994_YAMAHA TT250R Raid

そして、そのTT250Rをベースに前後サスペンションのストロークを短縮し、シート高を下げ、座面を幅広く変更。さらに燃料タンク容量を増やすなど、ツーリング性能と扱いやすさを高めたモデルがTT250Rレイドである。

とはいえ、両車の違いはアントニオ猪木とアントキの猪木ほどではない。ベース車のキャラクターはしっかり残しながら、より幅広いシーンで楽しめる仕様へと仕上げられていた。

セローベースのツーリングセロー以上に手の込んだモディファイだったと思う。だからこそ、次のセローが登場するなら、「レイド」の名を復活させてほしいと願わずにはいられない。

2004_YAMAHA セロー225WE:バイクも時代を映す鏡である

セロー225シリーズの最後を飾ったモデル。2002年には、このようなリムまでブラックで統一した特別仕様も登場した(グラフィックは少し違うけれど)。

ちょうどストリートカスタムが大ブームだった頃である。マウンテントレールの代表格だったセローでさえ、キ◯タクが火付け役と言われる(本当は少し違うと筆者は思っている)TW200/225ブームの影響を受け、少しストリート寄りになった印象を受けたものだ。

セロー225は、マイナーチェンジや特別仕様車を重ねながら長く愛され続けたロングセラーモデル。その長い商品寿命の中で、ユーザーを飽きさせない工夫を積み重ねてきた。

2004_YAMAHA セロー225WE
2004_YAMAHA セロー225WE

そのひとつが、「流行しているストリートテイストを取り入れる」という発想だったのではないか、と私は思っている。

今のクルマ業界でアースカラーが流行しているのと、どこか似たような感覚だ。

もっとも、山の中で真っ黒なバイクというのも考えもの。ひとり林道で谷底へ落っこちたら、発見されにくそうではないか。登山用品が派手な色をしているのには、それなりの理由がある。

……まあ、落っこちなければいいだけの話なんだけどね。

2006_YAMAHA セロー250S:林道走りをためらうセロー

オフロードバイクの外装は、転倒しても割れにくいPP(ポリプロピレン)製が基本。しなやかに曲がる樹脂なので、色は塗装ではなく素材そのものに練り込まれている。

ところが、このセロー250Sは樹脂外装をあえて塗装仕上げにしている。なんとも心がもやもやする仕様なのである。

もちろん純正だから簡単には剥げない塗装なのだろう。でも、この美しい外装を見ると、「よし、難所林道へ突っ込もう!」という気分にはなれない。むしろワコーズのバリアスコートでも塗って眺めていたくなるトレールだ。

2006_YAMAHA セロー250S
2006_YAMAHA セロー250S

その美しい仕上がりは魅力的なのに、オフロードバイクとして見ると、どこか腑に落ちない。この不思議なもやもや感を、どう表現したらいいものか。

もしかすると、セロー250Sの「S」はスペシャルではなく、ストリートの「S」だったのかもしれない。

最近、個人的にハマっているCUTIE STREET(いいかな、だめかな。板倉可奈ちゃん推しです。はい、そこ。「キモい」と言わない)の『かわいいだけじゃだめですか?』をもじった、『100kg超えちゃだめですか?』という替え歌動画がある。かわいいけれど、ちょっとぽっちゃりした女の子たちが歌っているアレだ。

初めて見たとき、「いや、かわいいんだけど……うーん」と妙に腑に落ちない感覚になった。セロー250Sを見たときの、このもやもや感は、それにちょっと似ている。

2007_YAMAHA WR250R:情熱と情熱は共鳴して感動を生む

私がヤマハを好きな理由を、一台で体現しているようなモデル。それがWR250Rである。

「史上最強のトレールを作ってやる」。

そんな開発陣の意地というか執念というか、とにかく真っすぐな情熱だけを頼りに突き進んだ結果、生まれたのがこのバイクだったのではないかと思う。

高性能なエンジン、贅沢な車体構成、惜しみなく投入されたコスト。まさにキング・オブ・トレールと呼ぶにふさわしい完成度だった。

2007_YAMAHA WR250R
2007_YAMAHA WR250R

その反面、価格は高くなり、競技で使うには専用レーサーほど割り切れておらず、林道ツーリングにはシート高も性能も少々オーバースペック。初心者が気軽に飛びつけるモデルではなかった。良いバイクだったことに疑いはないけれど、商売として大成功したモデルとは言えなかったように思う。

それでも、このバイクが好きなのは、「どうせ売れないからやめよう」と最初から諦めなかったことだ。

採算だけを考えれば、もっと無難な選択はいくらでもあったはず。それでもヤマハは、「俺たちは最強のトレールを作る」と信じて突き進んだ。その心意気が、この一台からひしひしと伝わってくる。

もちろん商売である以上、利益は大切だ。でも、バイクは白物家電とは違う。人の心を動かし、ときには人生まで変えてしまう乗り物だからこそ、こうしたメーカーの情熱や挑戦に、私はどうしても魂が共鳴してしまうのである。

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