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3時間守った花火の場所を奪われた私。子どもの一言

  • 2026.8.4
ハウコレ

そのとき、相手の子が私と相手を見比べて口を開きました。花火が始まる前に、私が守ったのは場所だけではなかったと今なら思います。

3時間、日差しの中で場所を守っていた

地元で毎年開かれる花火大会は、駅から会場までの道が屋台で埋まるほどの規模です。私は開始の3時間前に会場入りし、通路にかからない位置に2人用のレジャーシートを敷きました。会場のルールを何度も読み直しての判断でした。

日が傾いて浴衣姿の人が増え、屋台の焼きそばの匂いが漂うころ、開始まで1時間を切ります。トイレと飲み物のために席を離れることにしました。パスケースとスマホは肩から下げ、シートの上にはトートバッグ、折り畳んだ上着、未開封のペットボトルを残しました。荷物を置いていけば場所取りが伝わると信じていました。10分もかからないつもりで、隣のシートの人にも軽く目礼しました。

戻った場所には、私ではない家族が座っていた

飲み物と手洗いを済ませて戻ると、私のレジャーシートの上には、浴衣姿のご家族が座っていました。ご夫婦と、幼稚園くらいの男の子です。ペットボトルの水色が視界の端に見えて、目を凝らします。

私のシートは半分に折り畳まれ、荷物ごと通路の端に押しやられていました。その上に、この家族の分厚いシートが敷き直してありました。頭の中で、ここまでの3時間分の日差しと汗が浮かびました。私物を勝手に触られたことのほうが、場所を奪われたことより先に堪えました。周囲は花火開始を待つ人でいっぱいで、注目を集めるのは気が引けました。それでも、他の人のシートの端を踏まないように歩を進めて、その家族に近づきました。「あの、ここ、私が取っていた場所なんですが」。声はできるだけ低くしました。

相手の子どもが口にした、一言の食い違い

「誰もいなかったから」「空いていたと思ったんです」。相手の女性は目を合わせずに繰り返します。私はもう一歩踏み出しました。「荷物も置いてありましたよね。勝手に動かさないでください」。「気づかなかった」。相手はそう続けました。

そのときです。ご夫婦の間にいた男の子が、母親を見上げて口を開きました。「さっきバッグをどかしてたよね」。相手の顔から、言い訳の続きが消えたのが分かりました。周りにいた別のグループまで、こちらに視線を向けます。私は近くを歩いていた係員のジャケットに向かって手を挙げました。

事情を伝えると、係員は会場のルールに違反はないと確認し、相手にレジャーシートを畳んで移動するよう伝えました。相手は口をきつく結んだまま、私のシートを広げ直し、荷物を私の側へ戻しました。「勝手に触ってすみませんでした」。その一言だけを、聞き取れる声で残して、彼らは人混みの奥へ入っていきました。

そして...

「お待たせしてすみません」。合流した友人にそう伝えられたとき、シートの半分は元の位置に戻っていました。花火が始まると、周囲の歓声と屋台の匂いに包まれて、腹が立っていた気持ちも薄れていきました。取っておいた場所は、私が3時間かけて用意したものです。譲らずに口にした自分を、少し好きになりました。次に行くときは、隣の人へ「少しだけ荷物を置いていきます」とちゃんと一声かけておこうと決めました。頭上で花火が咲いた瞬間、私は前を向いていました。

(20代女性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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