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「シャワーだけで帰っちゃうんだ」露天風呂で毎回会うのに浸からない男。不思議な光景に感じた違和感

  • 2026.8.4
「シャワーだけで帰っちゃうんだ」露天風呂で毎回会うのに浸からない男。不思議な光景に感じた違和感

湯が気に入って

友人と二人で、前々から評判を聞いていた温泉宿へ出かけたときのことです。

四十を過ぎると、こういうのんびりした旅のありがたみが、しみじみ身にしみるようになりました。

着いてすぐに入った露天風呂が、とにかく気持ちよくてたまりませんでした。

せっかくだからと、朝と昼と晩で一日3回は必ず通おうと、友人と二人で決めたのです。

湯気の向こうに、手入れの行き届いた庭がぼんやりとにじんで見えます。

しばらくは、この露天風呂に浸かるためだけに来たようなものだと、二人で笑い合っていました。

洗い場から動かない人

ところが、露天風呂へ行くたびに、決まって同じ宿泊客と顔を合わせるのです。

年のころは六十ほどでしょうか、口数の少ない、物静かなおじさんでした。

朝に行けば、いる。

昼に行っても、いる。

晩に行っても、やはりいる。

はじめは、私と同じでよほど湯が気に入ったのだろうと、微笑ましく思っていました。

けれど、何度か見かけるうちに、どうにも妙なことに気づきました。

そのおじさんは、いつも洗い場のあたりにいて、シャワーで体をさっと流すと、湯船のほうへは一度も向かわず、そのまま出ていってしまうのです。

私が湯に浸かっているあいだ、おじさんはずっと洗い場のほうで過ごしているように見えました。

湯気に隠れてはっきりとは分かりませんが、浸かっている姿だけは、どうしても目に入ってこないのです。

友人も見ていない

あまりに気になって、三度めに見かけた晩、私は湯の中から、隣の友人にそっと声をひそめて尋ねました。

「あのおじさん、湯船に浸かった姿、見たことある?」

友人はしばらく記憶をたどるように黙り、それから、ゆっくりと首を横に振りました。

言われてみれば、自分も一度も見た覚えがない、というのです。

私は思わず、口の中で小さくつぶやいていました。

「3回とも、シャワーだけで帰っちゃうんだ」

声に出してみると、その一日3回という繰り返しが、かえって不気味に思えてきました。

湯につかりに来た宿で、一度も湯につからない人がいるということだけが、妙に胸に残ったのです。

結局、その理由を確かめる勇気は出ないまま、私たちは翌朝に宿を発ちました。

あのおじさんが何をしていたのか、今も分かりません。

ただ、旅の楽しい思い出の片隅に、あの洗い場の背中だけが、今もひっそりと居座っているのです。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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