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「境界線を勝手に動かさないでください」芝を刈っていた時の隣人とのトラブル。だが、隣人の祖母が明かした事実に絶句

  • 2026.8.1

芝を刈っていた土曜の昼

その家に越して、三度目の夏でした。

隣家とのあいだに塀はなく、二軒の庭は芝生でつながっているように見えます。

土曜の昼、夫が芝を刈っていると、隣の家の戸が開きました。

出てきたのは、隣に住む五十代くらいの女性です。

「そこ、刈らないでもらえますか」

夫は芝刈り機を止めました。

「はみ出していましたか。すみません」

「玄関先のそこまでは、うちの土地なんです」

女性が指したのは、わが家の玄関から二歩ほどしか離れていない場所でした。

しかし、家を購入したときに説明された境界とは、明らかに違います。

「私たちは、もう少し向こうが境だと聞いています」

夫がそう伝えると、女性は強い口調で言いました。

「祖父の代から、ここまでがうちだと決まっているんです」

それ以上話しても平行線になりそうで、その日は芝刈りを途中でやめました。

「祖父から聞いています」

翌日、夫と二人で隣の家を訪ねました。

「昨日の土地のことですが、私たちが聞いている境界とは違うようです」

夫ができるだけ穏やかに話すと、女性はすぐに首を横に振りました。

「間違っていません。祖父が何度も言っていましたから」

「でも、そこまで隣の土地だとすると、うちの玄関のすぐ前になります」

「昔からそうなんです」

女性は同じ言葉を繰り返しました。

話を聞いているうちに、女性は何かの書類を確認したわけではなく、亡くなった祖父の言葉だけを信じているように思えました。

それでも本人に迷いはありません。

「勝手に芝を刈られると困ります」

そう言われ、玄関の戸を閉められてしまいました。

ポストに入っていた便箋

それから、隣の家の様子が気になるようになりました。

ごみを出す朝も、車に乗るときも、隣の窓のカーテンがわずかに動きます。

「見られている気がする」

「考えすぎだよ」

夫はそう言っていました。

しかし金曜の夜、ポストに折りたたまれた便箋が入っていました。

太い字で、こう書かれています。

「境界線を勝手に動かさないでください」

私たちは地面に印をつけたわけでも、何かを移動させたわけでもありません。

それでも隣の女性の中では、私たちが土地を奪おうとしていることになっていました。

これ以上、当事者同士で話すのは難しいと思い、自治会長に相談しました。

自治会長は境界を決められる立場ではありません。

それでも、双方の話を聞くため、間に入ってくれることになりました。

「おじいさんが勝手に言っていただけ」

週末、自治会長を交えて、もう一度隣の女性と話すことになりました。

「祖父から、あの木のところまでがうちの土地だと聞いています」

女性は庭の端にある木を指しました。

「だから、そちらが芝を刈るのはおかしいんです」

そのとき、隣家の玄関から小柄な高齢女性が出てきました。

隣の女性と同居している祖母です。

「まだ、そんなことを言っているの」

祖母はあきれたような声を出しました。

「だって、おじいちゃんが、あの木までうちだって言っていたでしょう」

女性が答えると、祖母は大きくため息をつきました。

「あれは、おじいさんが勝手に言っていただけですよ」

庭にいた全員が黙りました。

祖母によると、亡くなった祖父は昔、隣の家が留守のときにも、その木のあたりまで芝を刈っていたそうです。

境界を確認したわけではありません。

単に「途中で止めると見栄えが悪いから」と、自分の判断で広い範囲を刈っていただけでした。

「そのうち、自分が手入れしている場所は全部うちの土地みたいに言い始めたんです」

祖母は困ったように続けました。

「おじいさんは、昔から話を大きくする人だったでしょう」

隣の女性は、祖母と庭木を交互に見ました。

「じゃあ、あそこまでがうちだというのは……」

「おじいさんが一人で言っていただけです」

祖母はきっぱりと言いました。

隣の女性はしばらく黙っていました。

やがて、小さな声で言います。

「ずっと、本当だと思っていました」

はっきりとした謝罪はありませんでした。

ただ、その日を境に、土地について何か言われることはなくなりました。

ポストに手紙が入ることもありません。

それでも夜、玄関の鍵を閉めるとき、私はときどき隣の窓を見上げます。

あの女性が信じていた境界線は、地面に引かれたものではありませんでした。

祖父の何気ない言葉が、長い年月をかけて、本人の中で動かせない事実に変わってしまったのかもしれません。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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