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巨大なヒットの谷間で艷やかに。30年前に空気を変えた、わかっている人ほど頷く3人組の「大人の愛聴曲」

  • 2026.8.25
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1998年8月、横浜スタジアムで行われたglobeライブより(C)SANKEI

答えの出ない問いほど、人は長く抱えて生きていく。恋なのか、そうでないのか。白黒をつけられないまま持ち歩く感情には、はっきり答えの出た感情よりも長い寿命がある。

その宙づりの気持ちを、問いの形のまま旋律に乗せてしまったのが、globeの『Is this love』だ。冒頭、KEIKOのハミングがやわらかく立ち上がった瞬間から、この曲は答えを急がない。

globe『Is this love』(作詞:小室哲哉・MARC/作曲:小室哲哉)ーー1996年8月28日発売

弾む足取りをほどいて色香をまとう

『DEPARTURES』ですでにバラードの魅力を示していたglobeだが、『Is this love』の落ち着きは、また質が違う。感情を壮大に押し広げるのではなく、テンポを抑え、音の余白へKEIKOの声を沈ませていく。そこに浮かび上がるのは、これまでより大人びた、どこかセクシーなglobeの表情だ。

声を張って押し切るのではなく、ささやきの距離まで聴き手を引き寄せる歌になっている。この変化は、歌い方だけの話ではない。ビートの刻みは体を跳ねさせるためではなく、体を預けさせるために打たれている。踊らせる音楽から、寄りかからせる音楽へ。同じダンスミュージックの語彙を使いながら、目的地がまるで違う。

構成も、声の受け渡しでできている。冒頭のハミングが夜の温度を先に決め、MARCの語りかけるようなラップが物語の入り口を開き、そこからサビへなだれ込む。ハミングは言葉を持たないからこそ、聴き手の感情を先回りして受け止める器になる。派手な起伏で盛り上げるのではなく、声の質感の変化だけで場面を切り替えていく設計に、作り手の余裕と自信を感じる。

金字塔の谷間でともる常夜灯

1996年のglobeは、途方もない勢いの中にいた。同じ年の元日にリリースしたミリオンヒットの『DEPARTURES』があり、少しあとには『Can't Stop Fallin' in Love』が控えている。巨大なヒットに挟まれた位置で、この曲は50万枚超を売り上げた。

突出した記録の物語としてではなく、大波のあいだで確かに愛された一曲として振り返るほうが、この曲の輪郭は正しく見えてくる。この曲が古びないのは、規模ではなく手触りで記憶されてきたからだ。

だからこそ、globeの名前でまず挙がる曲ではないのに、挙がった瞬間に空気の変わる一曲になった。わかっている人ほど深くうなずく。そういう愛され方をしている。

大きすぎるヒットは、時代の記憶と分かちがたく結びつく。一方でこの曲は、時代よりも先に、聴き手ひとりひとりの個人的な記憶と結びついた。夢を叶えることは素敵だが、何か物足りなくなっていくという歌詞が見事に言い表している。

夜のドライブで、ひとりの帰り道で。曲の側が聴き手の景色に合わせて形を変えてくれる柔らかさが、この曲にはある。壮大なミュージックビデオの映像美とともに記憶している人も少なくないだろう。

問いのまま次の季節へ渡された曲

『Is this love』は、翌1997年の2ndアルバム『FACES PLACES』へ収められた。新しいアルバムへ向かう次のフェーズの、最初の一歩として置かれた曲である。

弾む元気の良さで駆け抜けた季節から、大人の陰影をまとう季節へ。その扉を開けたのが、答えを持たない問いの歌だったところに、globeというユニットの深さを感じる。勢いの絶頂で、あえて声を落とす。その選択ができる作り手だけが、時代を越えて聴かれる棚に曲を残していく。

この歌は最後まで答えを言わない。言わないからこそ、聴くたびに違う自分がその問いを受け取り直す。今夜もどこかで、冒頭のハミングに耳を澄ませながら、自分だけの答えを探しはじめる人がいる。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

(文・笄坂かける)

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