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新種の盲目魚「デーモン・ケーブフィッシュ」を地下洞窟で発見、米アラバマ州

  • 2026.7.30
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

米アラバマ州北部の地下洞窟で、眼も体色も持たない奇妙な魚が見つかりました。

生きているときの体は白色から淡い青色で、暗闇の水中をひっそりと泳ぎます。

その姿から付けられた名前は「デーモン・ケーブフィッシュ(学名:Demogorgonichthys arcanus)」

また驚くべきことに、この魚が見つかったのは人跡未踏の洞窟ではありません。

絶滅危惧種のエビ「アラバマ・ケーブ・シュリンプ」を守るため、30年以上にわたって繰り返し調査されてきた場所でした。

研究の詳細は、米アラバマ大学ハンツビル校(UHA)により、2026年7月6日付で『Scientific Reports』に掲載されています。

目次

  • 地下洞窟に潜んでいた「新種新属」の盲目魚
  • 同じ水たまりで暮らす2種が、別々に「盲目」へ進化した

地下洞窟に潜んでいた「新種新属」の盲目魚

発見場所は、ハンツビルにある米陸軍レッドストーン兵器廠の地下に広がるボブキャット洞窟です。

この洞窟では1990年以降、絶滅危惧種のエビの個体数や水質が継続的に調べられてきました。

絶滅危惧種のエビ「アラバマ・ケーブ・シュリンプ」/ CREDIT: en.wikipedia

ところが2025年2月の調査で、既知の洞窟魚とはどこか異なる魚が見つかりました。

その魚は眼を完全に失い、黒い色素もなく、吻部(ふんぶ、口先)や顎、背中の形にも独特の特徴がありました。

ただし、外見は同じ洞窟に生息する既知のサザン・ケーブフィッシュとよく似ています。

そのため、過去の調査では、2種が同じ魚として数えられていた可能性があります。

地下洞窟で発見されたデーモン・ケーブフィッシュの画像がこちら

チームは体の形を詳しく比較し、CTスキャンで骨格を調べ、さらにDNAも解析。

すると、新しい魚は既知のどの属にも収まらない、独立した系統であることが分かりました。

特に注目されたのが、暗い場所で光を感じるために使われる「ロドプシン遺伝子」です。

デーモン・ケーブフィッシュでは、この遺伝子に284塩基対という大きな欠失があり、正常なタンパク質を作れない状態になっていました。

これは暗闇で暮らすうちに、視覚に関係する機能への進化的な制約が弱まった可能性を示しています。

ただし、この結果だけで、魚があらゆる光を完全に感知できないと断定することはできません。

属名の「デモゴルゴニクティス(Demogorgonichthys)」は、地下世界の怪物デモゴルゴンと、ギリシャ語で魚を意味する「イクチス(ichthys)」を組み合わせたものです。

種小名の「アルカヌス(arcanus)」は「隠された」「秘密の」を意味し、長年調査された洞窟に潜んでいた今回の魚にふさわしい名前となっています。

同じ水たまりで暮らす2種が、別々に「盲目」へ進化した

デーモン・ケーブフィッシュの拡大画像がこちら

この発見の最大のポイントは、新しい魚が見つかったことだけではありません。

デーモン・ケーブフィッシュは、既知種のサザン・ケーブフィッシュと同じ洞窟だけでなく、同じ水たまりで一緒に暮らしています。

どちらも眼と色素を失った青白い魚ですが、DNA解析では近縁な姉妹系統ではありませんでした。

つまり両者は、異なる祖先から別々に地下環境へ適応し、よく似た姿へ進化したと考えられます。

このように、異なる系統の生物が同じ環境圧によって似た特徴を獲得する現象を「収斂進化」と呼びます。

地下洞窟の画像がこちら

太陽光の届かない洞窟では、眼や体色を維持する重要性が低下します。

その一方で、水流や振動を感じる感覚は、生き延びるうえで重要になります。

洞窟という環境は、遠い系統の魚を、盲目で色のない似た姿へと導いたのです。

しかし、この貴重な魚の未来は決して安泰ではありません。

現在確認されている生息地は、ボブキャット洞窟とそれにつながる帯水層だけです。

2025年の調査で一度に確認された個体は8~18匹で、総個体数や地下での分布範囲は分かっていません。

洞窟が軍施設の地下にあることで直接的な開発は抑えられていますが、地下水は周辺の地表とつながっています。

汚染物質や土砂、水位の変化が流れ込めば、洞窟の奥に暮らす魚にも影響が及ぶ可能性があります。

この魚を守るには、洞窟の入口だけでなく、水が地下へ染み込む周辺の土地と地下水全体を守る必要があります。

長年調査されてきた洞窟でさえ、まったく新しい脊椎動物の系統が見過ごされていました。

デーモン・ケーブフィッシュの発見は、未知の生物を探すには、遠く離れた秘境だけでなく、すでに知り尽くしたと思っている場所をもう一度見直すことも重要だと教えてくれます。

地下世界の生物目録は、まだ完成にはほど遠いのです。

参考文献

Hiding in plain sight: UAH researchers discover new ‘Demon Cavefish’ in North Alabama cave
https://www.uah.edu/news/items/hiding-plain-sight-uah-researchers-discover-new-demon-cavefish-in-north-alabama-cave

Auburn biologist helps identify new cavefish lineage discovered in Alabama cave
https://wire.auburn.edu/content/cosam/2026/07/1300-stranger-things-cavefish-new-species.php

元論文

Surprising cryptic cavefish diversity in a long-studied karst cave ecosystem of northern Alabama
https://doi.org/10.1038/s41598-026-54315-4

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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