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ドラマ評論家が選ぶ、夏クールドラマ【ベスト3】 第1位は複雑な人間模様を描いた“話題作”

  • 2026.8.10
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岡崎紗絵 (C)SANKEI

夏クールのテレビドラマは、細部まで作り込まれたユニークな作品が多くて、続きが気になるものが多い。
今回はドラマ評論家の筆者が傑作だと思った夏ドラマ・ベスト3を紹介する。

以下本文には放送内容が含まれます。

『告白-25年目の秘密-』純粋さと危うさ

第3位の『告白-25年目の秘密-』は、松村北斗が演じる青年・雪村爽太が主人公のラブ&サスペンス。野瀬化粧品で働く爽太は、影の薄い平凡な青年だと周囲から思われていたが、実は野瀬化粧品の社長令嬢・野瀬麻里子(岡崎紗絵)に25年間片想いをしていた。幼少期に麻里子に助けられた爽太は、影から彼女を守ると決意して、同じ中学、同じ高校、同じ大学に入り、同じ会社に入社した。
遠くから麻里子を見守るだけで爽太は満足だった。しかし、困っている彼女を助けたいと思った爽太は、自分から麻里子に接触してしまう。片想いの女性を見守る青年の物語。こう書くとロマンティックなラブストーリーに聞こえるかもしれないが、爽太の行動は常軌を逸したもので、ストーカーと変わらない。

その意味でとても危ない男なのだが、麻里子への想いはとてもピュアで一途なので、応援したくなる。爽太を演じる松村北斗は『夜明けのすべて』、『ファーストキス 1ST KISS』、『秒速5センチメートル』といった映画で、繊細な内面を抱えたナイーブな青年を演じたことで俳優として高く評価されている。
今作の爽太も、松村が得意とする繊細でナイーブな青年だが、ピュアさの向こうに好きな人を守るためなら何をしても構わないという覚悟があるため、危険な存在感を漂わせている。

危うさと純粋さを抱えた爽太を、松村北斗がどのように演じ切るのか注目している。

『マイ・フィクション』迷宮の中を彷徨っているような感覚

第2位の『マイ・フィクション』は、観ていると迷宮の中を彷徨っているような不思議な感覚に陥るドラマだ。伊川正樹(玉森裕太)は老人ホーム「はるなぎ園」で介護士として働きながら、妻の真弓(宮澤エマ)と幸せな日々を過ごしていた。
しかし、転落事故で意識不明の重体となった伊川が病院で目を覚ますと、老人ホームの同僚だった多田義孝(ジャンボたかお)が伊川正樹として妻と暮らしており、自分が伊川正樹だと言っても誰にも信じてもらえない。
自分が本物だと証明する手段がない伊川は、偶然知り合った予備校職員でシングルマザーの二宮由梨(森川葵)に助けられて、自分のことを知っている人間を探そうとする。

一方、元刑事の津村大輔(野村周平)は、伊川のことを調べていた。劇中には怪しい人物が次々と登場し、話が進むに連れてドラマは複雑化していく。そして、何が本当で何が嘘なのかわからなくなっていく。
何より印象に残るのが、もう一人の伊川こと多田義孝が放つ不気味な存在感。演じているジャンボたかおは、お笑いコンビ・レインボーのメンバーとして活躍する芸人。
これまでにも俳優として様々なドラマに出演していたが、本作での悪役は実に見事で、多田の正体が知りたくて、ドラマを追いかけている。

『Tシャツが乾くまで』生方美久の新境地。

そして第1位は、生方美久脚本の『Tシャツが乾くまで』。本作は二組の夫婦の奇妙な絆を描いた物語。出版社で働く瀬尾咲子(蒼井優)とカフェを営む夫の充(松山ケンイチ)は幸せな日々を過ごしていたが、充がバス転落事故に巻き込まれて行方不明となってしまう。そして、咲子が以前、コインランドリーで知り合った製菓メーカーで働く園田樹生(中島歩)の妻・あずさ(夏帆)も、充と同じバスに乗っていて転落事故で命を落としたことが判明する。行方不明になった夫を心配して不安な日々を過ごす咲子に対し、樹生は優しく接し、二人は連絡を取り合う仲となっていく。

だが、樹生は充とあずさが不倫していたのではないかと疑っていた。本作は、不倫の関係にあったと思われる充とあずさがいない中で、残された咲子と樹生が、お互いのパートナーが不倫をしていて、自分たちには見せない別の顔があったのではないかと思い悩むドラマとなっている。脚本を担当する生方美久は2022年に初めて執筆した連続ドラマ『silent』で注目された、新進気鋭の若手脚本家だ。今回の『Tシャツが乾くまで』は、これまでの作品と比べて、大人向けのドラマとなっており、彼女が得意とする哲学的な問いかけを散りばめたミステリアスな会話劇は、より洗練されたものに仕上がっている。

残された咲子と樹生の間に恋愛感情は生まれるのか?行方不明になった充がどのような形で再登場するのか?そして充とあずさは本当に不倫をしていたのか?この3点が今後の注目ポイントだが、簡単に説明することができない複雑な人間模様を描いてきた生方美久のドラマだけに、一筋縄ではいかない展開が待っているのではないかと期待している。

この3作は、どれもオリジナルドラマだが、謎めいた展開と不穏なキャラクターが次々と登場するため、先の展開が全く読めない。だからこそ続きが気になって毎週観てしまうのだが、最終的にどこに着地するのか、とても楽しみである。


出典:
日本テレビ系 土曜ドラマ『告白-25年目の秘密-』
テレビ朝日系 日10ドラマ『マイ・フィクション』
TBS系 金曜ドラマ『Tシャツが乾くまで』

ライター:成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)、『テレビドラマクロニクル 1990→2020』(PLANETS)がある。

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