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『タンス預金ならバレない』は間違いだった。税務署が“隠し財産”を特定する、「驚きのカラクリ」とは?【お金のプロが解説】

  • 2026.8.1
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

相続対策として「タンス預金」で管理したり、家族名義の口座へお金を移したりして「税務署の目には触れないはず」と考える方は少なくありません。しかし相続が発生した際、税務署は驚くほど精緻に過去の資産の動きを把握しています。

なぜ隠したはずの資産が税務署に見抜かれてしまうのでしょうか。また、家族への生前贈与が「名義預金」とみなされず、正しく認められるためにはどんな準備が必要なのでしょうか。今回は専門家の見解をもとに、相続税調査のリアルな実態と正しく資産を守るための管理方法を解説します。

税務署はなぜ隠したはずの「タンス預金」を見抜けるのか

---タンス預金は物理的に「見えない」はずですが、なぜ相続の時に税務署は把握できるのでしょうか?

中川 佳人さん:

「税務署はタンス預金そのものを直接見ることはできません。しかし相続が起きた時、『申告された遺産額』と『過去の収入・資金の流れから推定される保有資産』との不一致を手掛かりに、タンス預金の存在を推定できるのです。

国税当局は『KSKシステム』(税務署内部で過去の所得税や固定資産税などの申告情報を統合管理する仕組み)に、長年の申告記録を蓄積しています。さらに税務署には、金融機関へ照会する法的な権限が認められています。必要に応じて取引履歴や残高を確認することも可能です。相続税の調査では過去5年分の照会が基本で、悪質が疑われる場合は7年、実務上は10年程度まで遡るケースも見られます。こうして過去の申告情報と資金の流れを突き合わせ、申告額との差を確認していくのです。

たとえば退職金2,000万円を受領し、生前の預金引き出しが1,000万円規模であったにもかかわらず、申告された金融資産が数百万円にとどまるケースをご想像ください。差額の行方が説明できなければ、タンス預金や名義預金があったと見なされる可能性は高まります。亡くなる直前の大口出金も、タンス預金化の疑いを招きやすい典型的な材料と言えるでしょう。

『見えない』からこそ『逆に不一致で浮かび上がる』のがタンス預金の実態なのです。ご自身での判断が難しい場合は、税理士や所轄の税務署へ相談するようにしてください。」

銀行からの資金移動は要注意!「名義預金」と判断されるリスク

---多額の出金や家族への資金移動が、なぜ相続税の追徴リスクにつながるのでしょうか?

中川 佳人さん:

「家族名義の口座へ資金を移した際、実態が伴っていなければ『名義預金』と判定されるリスクがあるためです。形式上は家族の名義であっても、実質的に被相続人の資産とみなされれば、相続税の課税対象に戻されてしまいます。

正しい贈与として認められるためには、以下の要件など『実態を伴う運用』が欠かせません。

  • 贈与契約書の作成(お互いの合意の証明)
  • 受贈者ご本人による通帳・印鑑・キャッシュカードの管理
  • 受け取った本人が自由に使えている状態であること

たとえば、親が子ども名義の口座を作りお金を移していても、親本人が通帳や印鑑を管理していたり、子どもが口座の存在すら知らなかったりした場合は、名義預金と判定されやすくなります。過去の贈与そのものが否定されれば、相続税の追徴だけでなく加算税・延滞税が発生する恐れもあります。

なお、110万円枠を活用した暦年贈与であっても、税制改正により相続開始前の一定期間の贈与は相続財産に足し戻すルール(生前贈与加算)があります。※2024年1月1日以降の贈与から段階的に延長され、2031年以降の相続から完全に7年加算となります。

資金移動を行う際は、後から客観的に説明できるよう『透明な記録』と『実態のある贈与』をセットで揃えておくことが大切です。」

税務署に疑われないための第一歩!今日からできる資産管理

---税務調査で問題にされないためには、具体的にどのような対策を講じるべきでしょうか?

中川 佳人さん:

「正しい資産管理の第一歩は、『資産の全体像をご家族で可視化し、記録として残す』ことです。税務調査で重要になるのは『出所や使途を説明できるかどうか』です。相続税の基礎控除(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超える可能性があるご家庭ほど、以下の4つの整理を早めに進めておくことをおすすめします。

  1. 財産目録の作成:預金・不動産・保険・有価証券・現金などを一覧化し、保管しておく。
  2. 贈与の記録化と実態づくり:贈与契約書を作成し、受贈者本人が通帳・印鑑を管理する。110万円を超える場合は期限内に贈与税申告を行う。
  3. 高額現金取引の記録:不動産や自動車、リフォームなどを現金で支払った場合は、領収書や契約書をセットで保管する。
  4. タンス預金の整理(出処の証明):保管している現金がある場合、過去にどの口座から引き出したものかがわかる『当時の通帳記録』や『メモ』と一緒に保管する。

口座に戻す際も出所を証明できる状態にしておくことが大切です。『隠す』のではなく『記録して客観的に説明できる状態を作ること』。これが何よりの対策です。資産構成が複雑な場合や手続きに不安がある場合は、無理に自己判断せず、早めに税理士などの専門家へ相談しましょう。」

「隠す」のではなく「記録する」。明日のための資産整理

税務署は過去のデータと資金の流れから生じる「不自然なズレ」をしっかりと確認しています。だからこそ、相続対策において真に重要なのは「資産を隠すこと」ではなく、「資金の流れを記録し、誰が見ても説明できる状態を作ること」です。

まずは財産目録の作成など、今日からできる資産の可視化から始めてみてはいかがでしょうか。不安がある場合は一人で抱え込まず、相続に強い税理士などの専門家へ相談し、円滑な資産承継の準備を進めていきましょう。


※本記事は一般的な税制の概要や傾向について情報提供を行うものであり、個別具体的な税務指導や申告アドバイスを行うものではありません。実際の相続税申告や贈与にあたっては、所轄の税務署または税理士等の専門家にご相談の上、ご自身の判断で行ってください。

監修者:中川 佳人
金融機関勤務の現役マネージャー。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。20年にわたり、資産形成や家計管理・住宅ローンなどの実務に携わってきた経験を活かし、記事の監修や執筆を行っている。専門的な内容を、誰にでもわかりやすく伝えることをモットーとしている。

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