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「お守りです」 市川市動植物園の赤い腕章に見る飼育員の「プロ意識」

  • 2026.7.29
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群れ入りを目指して奮闘中のパンチくんが注目を集める、千葉県にある市川市動植物園。同園では6月末から、撮影されたくない飼育員が身につける「赤い腕章(撮影禁止のサイン)」を導入し、大きな話題を呼びました。一方、ファンからは「いつもつけているわけではないみたい?」「どんな時につけているの?」という声も。そこで今回は改めて、同園の安永崇課長に腕章導入の背景や狙いなどについて聞きました。

「公務員」としてのジレンマと腕章導入の経緯

そもそも市川市動植物園では、以前からピクトグラム(絵文字)の注意書きなどで「作業中の飼育員に話しかけたり、撮影したりしないでください」というルールを定めていました。しかし、そこには「公務員」ならではの難しい事情があったと安永課長は語ります。

安永課長:「過去の判例でも、公務員の肖像権というのは制限される(=個人の権利として守られる以上に、市民が公務を監視・記録する権利が優先される場合がある)というのが一般的な理解です。市営動物園の飼育員も公務員である以上、来園者から仕事ぶりを見られることや記録されることは、受忍の範囲内と考えざるを得ませんでした」

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市川市動植物園のサル山=千葉県市川市動植物園(撮影:ゆんち)

これ以上は許容範囲を超えると判断

しかし、パンチくんへの注目が国内外問わず高まる中、過度な撮影が飼育業務の妨げになったり、スタッフの精神的な負担になったりするケースも出てきました。

安永課長:「以前から、多くのファンの皆さんより園に対して『飼育員が可哀想』という声をいただいてましたし、私自身も一部ファンによる飼育員への撮影やSNS投稿には問題があると感じていました。飼育員個人への興味関心しか感じられないような画像や動画です。飼育員にとってこうした行為が受忍の範囲を超えてしまえば、業務にも私生活にも支障をきたしてしまいます。SNSで市川市動植物園を紹介してくださること自体はありがたくても、動植物園と職員の業務を守るための一線を引かなければならない。そこで腕章を作ることにしました」

公務員としての立場を認識しつつも、現場の負担が「公務の監視として受忍できる範囲」を超えてしまわないよう、明確な「撮影お断り」の意思を示すツールとして導入されたのが、この赤い腕章でした。

実際に導入して、飼育員を始めとしたスタッフの反応はどうだったのでしょうか。

安永課長:「腕章はサル山の2人だけでなく全員に配付しました。飼育員は『お守りになっている』と話しています。いざという時に使える安心感が生まれたためでしょうか。実際、園内を移動中にこっそりカメラを向けられるようなケースもかなり減って、落ち着いて業務に集中できるようになったようです。来園者の皆さんのご協力に感謝しています」

腕章をあえて「外す」時間もある

ファン同士の間でも「腕章ルール」が浸透してきているようですが、着用はあくまで「業務に集中すべきとき」と現場の飼育員個人の判断に任されています。現在のところ、園から常時着用を義務付けたり、外すように指示することはないそうです。

そして注目を集めるサル山の担当飼育員。実際にサル山に足を運んで観察したことのある人は気づいた人もいるかもしれませんが、動物たちが活発に動く「給餌(エサやり)」の時間は、ほとんどの場合腕章を着用していません。

安永課長は、現場の飼育員の思いを次のように紹介しました。

安永課長:「飼育員は『腕章をつけていることで、給餌中の動物の生き生きとした姿まで撮影しづらくなってしまうのは避けたい』と考えているようです。園としては彼らのプロ意識を尊重していますが、一方で撮影する皆さんのマナーも問われているように思います。腕章がなくても、給餌は飼育員個人の撮影タイムではありません。特にSNSに投稿する際は十分な配慮をお願いしたいものです」

「腕章による撮影禁止」というルールの裏側には、公務員として撮影されることへの責任と葛藤、そしてそれでも動物たちと来園者のことを思う、飼育員のプロ意識と温かい心遣いが隠されていたのです。

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市川市動植物園のサル山=千葉県市川市動植物園(撮影:ゆんち)

■市川市動植物園:公式サイト

ライターコメント

「純粋に動物の姿を楽しんでほしい」と、状況に応じてあえて腕章を外すこともあるという飼育員の皆さんの配慮に応えられるよう、私たち来園者もマナーを引き続き守っていきたいと思います。SNSに写真や動画をアップするときは、スタッフが写り込んでいないか確認し、必要ならスタンプで隠したり、投稿自体を控えたりすることも大切です。そうした心がけ一つで、誰もが気持ちよく楽しめる動物園になるのではないでしょうか。

<ライタープロフィル>ゆんち

2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。

現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。

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