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60歳目前で娘を亡くし、ひとりに。パフューマー山藤陽子さんが選んだ30㎡の小さな部屋と、手放した暮らし

  • 2026.7.29

60歳目前で娘を亡くし、ひとりに。パフューマー山藤陽子さんが選んだ30㎡の小さな部屋と、手放した暮らし

人生の後半戦、“自分サイズ”を見直して、シンプルかつコンパクトに暮らし替えをされた方を紹介する「小さい暮らし」の見本帖。今回、登場いただくのは、パフューマーの山藤陽子さん。2024年末から、執着を手放してこれからを見つめ直すために選んだコンパクトルームで暮らしています。

Profile

山藤陽子さん
パフューマー●1963年山口県生まれ。結婚、出産、離婚を経て、オーガニックコスメブランドのマネージャー職を歴任。独立後、自身のパフュームブランド「SCENT OF YORK.」を立ち上げ、“気持ちのいいもの”を軸にライフスタイル提案も行う。

40代でオーガニックと香りの世界に飛び込んで

東京の街並みを一望できる開放感と、屋根裏部屋のようなひっそり感が同居するヴィンテージマンションの一室。2024年末、山藤陽子さんはコンパクトなこの部屋へ引っ越してきた。

「今後どう生きていくかを考える場所として選んだのがここ。思いがけず天涯孤独となり、いったん持ち物を手放して、住まいも変えることで思考をクリアにしようと思ったんです」

20代で結婚と出産をし、関西で専業主婦として過ごしていた山藤さん。30代での離婚を機に長女とのふたり暮らしになり、生活のため残業もいとわず商社の派遣社員として働き始める。その後転機となったのが、英国のオーガニックコスメブランド「ニールズヤード レメディーズ」との出合い。

「当時私は40代で、まだオーガニックというものが一般的ではない時代。ふらっと入った店舗で、香りやセンスのよさに魅了されてしまいました。もっと知りたいと土日に店舗でアルバイトも始め、週7で働くハードな毎日に。でも、香りや自然療法などを学ぶことができ、楽しかったですね」

その後、商社を辞めて正社員に。本部への栄転で住まいを東京に移し、50歳で独立してからは、エッジのきいたオーガニック店をプロデュースしたり、自身のブランドを立ち上げたりと活動を広げた。

長女の急逝というつらい出来事に襲われたのは、山藤さんが60歳目前というとき。長年ともに暮らし、仕事のサポートもしてくれていた唯一無二の存在だった。

「自分の健康問題、親の介護や見送りなど、ライフステージが大きく変わるのが60代だと感じていました。でもまさか、娘を亡くし残りの人生を問われるなど、1ミリも思ってはいなくて。思考が止まり、何もできない時間が1年以上続きました」

「イケア」のベッドは、組み立て式で引っ越し先に運びやすいことから長年使い続けている。日中はソファ代わりに。

天然香料のみの「SCENT OF YORK.」のパフューム。左の『モカ』はコーヒーとたばこがベースのユニセックスな香り。

動物モチーフ好きの山藤さん。左のネコは愛猫モカがモデル。長女を亡くした山藤さんに寄り添い、5カ月後に24歳で旅立った。

この部屋を借りる決め手にもなった見晴らしいのいいバルコニー。「夜は星もきれいなんですよ」と山藤さん。淹れたてのコーヒーをここで飲むのが毎朝の習慣であり楽しみのひとつだとか。椅子は屋外で気兼ねなく使えるアウトドア用を愛用中。

「やめたこと」は何ですか?

有限の時間を大切に過ごしたいから執着することをやめました

「人間のいちばんしんどい感情だと思うのが執着心。好きな人の心が離れてしまったり、仕事のポジションを誰かに奪われてしまっても、執着を手放してしまえば楽になれるし自由になれます。そんないい精神状態で、有限の時間を大切に過ごしたいと思うようになりました」

「手放したもの」は何ですか?

コンパクトな部屋への引っ越しを機にたくさんのものを手放しました

<ヴィンテージ家具>
気に入っていたけれど、次のステージで欲しいと思ったものを改めて迎えようとあえて処分。知人のヴィンテージショップで委託販売してもらった。

<作家ものの器>
知り合いの作家のものもあり心が痛んだが、物理的に持っていけないと、写真つきリストを作り友人へ譲った。セットものは1人分だけ残したものも。

<洋服>
山藤さんは旅に着ていけるような機能的な服が好み。残したいものが明確で、躊躇なく手放せた。「捨てるのは忍びなくて、リサイクル店にまとめて持ち込みました」

<本>
料理本と仕事で必要な専門書は残して、それ以外は古書店へ。「電子書籍やオーディオブックにチャレンジしていますが、紙のほうが好き。内容が入ってきやすいです」

どうしても手放せなかったものも。マグカップは買い付け旅行の思い出が詰まった品。

遊牧民のラグは100年以上前の一点もの。

撮影/土屋哲朗 取材・文/志賀朝子

※この記事は「ゆうゆう」2025年8月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。

※2025年7月21日に配信した記事を再編集しています。

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