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「特別扱いしろよ」常連だからと部屋を変えるよう求める客。だが、スタッフが毅然とした態度で断った

  • 2026.7.31
「特別扱いしろよ」常連だからと部屋を変えるよう求める客。だが、スタッフが毅然とした態度で断った

チェックインの列で

梅雨の晴れ間、私は妻と子どもを連れて、県内の温泉旅館へ出かけました。久しぶりの家族旅行で、子どもは車の中から浮き立っています。

夕方に着いてフロントへ向かうと、チェックインを待つ列がずいぶん伸びていました。

私たちの前には、五十代くらいの男性が一人。

身なりのいい、いかにも旅慣れた風の人です。カウンターのスタッフに向かって、さっきから同じことを繰り返していました。

「予約より広い部屋に替えてくれ。空いてるんだろう」

スタッフは丁寧に頭を下げ、落ち着いた声で「本日はあいにく満室でございまして、ご予約でのお部屋のご案内となります」と応じています。

引き下がらない常連客

それでも男性は引きません。

「俺はここの常連なんだよ。少しくらい特別扱いしてくれてもいいだろう」と、声を張り上げます。

何年も通っていること、いつも同じ宿を選んでいること、顔なじみのスタッフの名前まで持ち出して、なんとか広い部屋を出させようとしていました。

「特別扱いしろよ」

気づけば、そんなやりとりが五分以上も続いています。後ろで待つ私を含め、六組ほどの客が気まずそうに顔を伏せていました。

小さな子ども連れの家族も、荷物を抱えたまま所在なげに立っています。

毅然と、しかし丁寧に

それでも、カウンターのスタッフは態度を変えませんでした。

声を荒げることも、困った顔を見せることもありません。列の空気がどれだけ張りつめても、その物腰は少しも揺らがなかったのです。

「ご常連の皆さまには、いつもご利用いただき心より感謝しております。ですが、特定のお客様だけを特別にご案内することは、公平の点でいたしかねます」

まっすぐに、しかし穏やかに筋を通すその言葉に、男性はしばらく黙り込みました。

周りの視線にようやく気づいたのか、やがて「……まあ、いい」と小さく言って、渡された鍵を受け取ります。

男性が去ると、スタッフはこちらへ向き直り、何事もなかったように「大変お待たせいたしました」と微笑みました。

重く沈んでいた列の空気が、その一言でふっと軽くなります。旅の始まりに感じたわだかまりは消え、私は気持ちよくカウンターへ進みました。ぶれずに筋を通すというのは、こういうことなのだと、妙に感心してしまったのです。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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