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「玄関を開けたら…」お盆5日間の帰省から戻った30代Aさん夫婦、4,200万円の自宅を襲った"想定外の事態"【一級建築士は見た】

  • 2026.8.9
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「お盆の帰省から戻って玄関を開けたら、家じゅうがサウナみたいで…観葉植物はぐったり、チョコは溶けて、木の引き戸まで渋くなっていました。閉め切っていただけなのに、家はこんなに熱をため込むものなんですか」

そう話すのは、3年前、郊外の住宅地に、地元の工務店で注文住宅(4LDK・延床約104㎡/土地約158㎡、約4,200万円)を建てたAさん(30代夫婦・子ども1人の3人暮らし)です。この夏は5日間、家族で妻の実家へ帰省。防犯のため1階のシャッターと全部屋のカーテンを閉め、戸締まりは完璧でした。

引き渡しのとき、工務店から「24時間換気は止めないでください」と説明を受けていたものの、留守中まで回す意味があるとは思えず、出発前に、節電のつもりでスイッチを切っていったのです。

閉め切った夏の家は「熱をためる箱」になる

真夏の家には、屋根や外壁から伝わる熱と、窓から入る日射の熱が、昼のあいだ絶えず注ぎ込みます。人がいれば窓を開けたり、冷房を使ったりして熱を逃がせますが、閉め切った留守宅では入る一方です。夜になっても熱は抜けきらず、翌日の分が上乗せされていきます。数日分の熱をため込んだ家は、「熱をためる箱」になってしまうのです。

Aさんの家でいえば、熱の主な入り口はシャッターのない2階の西向きの窓でした(2階は防犯上の優先度が低いとされ、シャッターを省く家は少なくありません)。カーテンは閉めていましたが、カーテンは室内側。ガラスを通り抜けた日射の熱は、もう部屋の中にあります。

「もったいない」で止めた24時間換気が、熱の逃げ道をふさいだ

それでも空気の通り道が生きていれば、熱気は少しずつ外へ逃げます。その役割を担うのが24時間換気です。2003年7月施行の改正建築基準法で、シックハウス対策(建材などから出る化学物質で体調を崩すのを防ぐ取り組み)として設置が義務づけられた、常時回し続けることが前提の設備です。

外の熱気を取り込んでしまうだけでは、と思うかもしれません。たしかに真夏の日中は外気も高温です。ただ、閉め切った家は日射と蓄熱で外気以上に熱をため込み、室温が40度を超えることもあります。換気で近づくのは、あくまで外気温まで。こもった40度が外気並みへ下がる方向と考えれば、回し続ける方が室温の上昇を抑える効果があるのです。

Aさんが切ったことで、家は熱にも湿気にも出口のない状態になりました。観葉植物がぐったりし、チョコレートが溶けたのは高温のせい。木の引き戸が渋くなったのは、空気が滞留し、逃げ場を失った熱や湿気で木材が影響を受けたためと考えられます。もともと消費電力の小さな設備で、切って浮く電気代はわずか。節電のつもりの一押しが、留守中の家から逃げ道を奪っていたのです。

Aさん夫婦はどう対応したのか

帰宅した日は、まず全部の窓を開けて熱を追い出してから冷房を入れました。最初からエアコンだけで冷やすより、早く涼しくなります。そのうえで、次の帰省に向けて留守中の支度を決めました。

24時間換気は回したまま出かける。シャッターのない2階の窓には、すだれを掛けて「窓の外側」から日射を遮る。観葉植物は直射の当たらない北側の部屋へ移す。さらにスマートリモコン(外出先からスマホで家電を操作できる機器・数千円から)を取り付け、帰宅の1時間前に冷房を入れられるようにしました。

夏の留守支度は「閉める」と「回す」のセットで

シャッターとカーテンを閉めて出かける夏の帰省は、防犯にも台風対策にもなる、留守の基本の支度です。戸締まりの安心があるからこそ、家族はゆっくり羽を伸ばせます。一方で、閉めるほど家は熱の逃げ場を失うのも事実。閉める支度には、逃がす支度をセットにしたいところです。以下を確かめてみてください。

・24時間換気は留守中も止めない(シックハウス対策で常時運転が前提の設備です)
・日射は窓の外側で遮る(西・南の窓にはシャッターやすだれを。室内のカーテンだけでは熱が入ります)
・帰宅したら、冷房の前にまず窓を開けて熱を追い出す
・熱に弱いもの(観葉植物・食品・精密機器)は、直射の当たらない部屋へ移して出かける

「閉める」と「回す」をセットにしておけば、お盆明けの玄関で待っているのは、熱気ではなくいつものわが家です。

参考:
建築基準法に基づくシックハウス対策について(国土交通省)
改正建築基準法|換気扇・送風機の基礎知識(三菱電機)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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