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「数週間前から朝だけ『キュルキュル』音がしていました」40代男性が高速道路で直面した約30万円の事態

  • 2026.9.3
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出典:PIXTA(※画像はイメージです)

元自動車整備技術アドバイザーの松尾です。

「エンジンをかけたときだけ、キュルキュル音がする。でも少し走れば消えるから大丈夫」

そんなふうに車の異音を放置していませんか?今回は、筆者が以前勤務していた整備工場にレッカー搬送されてきた、40代男性のお客様・Kさんの事例をご紹介します。朝だけ発生していた異音を放置した結果、走行中に補機ベルトが切れ、最終的にはオーバーヒートによる高額修理につながってしまいました。

高速道路を走行中、突然の警告灯と水温上昇

Kさんの車が運ばれてきたのは、高速道路を走行中にトラブルが発生したためでした。

「突然バッテリーの警告灯が点いたんです。そのあとエアコンが効かなくなって、水温計も上がってきて」

話を聞きながら車両を確認すると、補機ベルトが切断されています。そこでKさんが思い出したように、

「そういえば、数週間前から朝だけ『キュルキュル』って音がしていました。でも、しばらくすると消えていたので」

と話してくれました。

補機ベルトは、エンジンの動力をオルタネーターなどに伝える重要な部品です。車種によってはウォーターポンプもベルトで駆動しています。つまり、ベルトが切れると単に「ベルトがなくなる」だけではありません。オルタネーターが回らなくなれば発電できなくなり、バッテリー警告灯が点灯します。さらに、ウォーターポンプまで停止する構造なら冷却水を循環できなくなり、水温が急上昇する可能性があります。

「音が消えた=直った」ではなかった

では、なぜKさんの車は朝だけキュルキュル鳴っていたのでしょうか。

エンジン始動直後はベルトが冷えて硬くなっていたり、湿気などの影響を受けたりして、プーリーとの間で滑りが発生することがあります。また、ベルトそのものの劣化だけでなく、テンショナーやプーリーのベアリングに不具合がある場合にも異音が発生します。特に注意したいのが、「しばらくすると音が消える」というケースです。音が消えたからといって、原因までなくなったとは限りません。ベルトの摩耗や硬化が進んでいれば、見た目では大きな異常がなくても、ある日突然切れてしまうことがあります。

今回も、最終的には走行中にベルトが切断。その結果、充電機能が失われ、さらに冷却機能にも影響が及び、水温が上昇してしまいました。

「もし水温が上がった段階で安全な場所に停車していたら、被害を抑えられた可能性があります」

と私はKさんに説明しました。

水温異常を確認したまま走り続けると、オーバーヒートが進行し、ヘッドガスケットやシリンダーヘッドなど、エンジン内部まで損傷する可能性があります。Kさんの場合も、ベルト交換だけで済むはずだったトラブルが、エンジン側まで修理が必要となり、最終的な修理費用は約30万円にまで膨らみました。

「キュルキュル」は小さな異常ではない

補機ベルトの交換だけなら、オーバーヒートによるエンジン修理と比べれば、負担は大きくありません。だからこそ、「朝だけだから」「雨の日だけだから」「少し走れば消えるから」と放置しないことが大切です。「キュルキュル」という音が出たら、ベルトだけを交換すればいいとは限りません。ベルトの状態に加えて、テンショナーやプーリーの動き、ベアリングの異常なども含めて点検してもらうことをおすすめします。

また、高速道路を使う予定や長距離ドライブの前には、普段から気になっている異音をそのままにしないことも重要です。もし走行中にバッテリー警告灯が点灯したり、水温計が異常に上昇したりした場合は、「あと少しなら走れる」と考えず、できるだけ早く安全な場所へ停車しましょう。

異音は、車が発している「そろそろ点検して」というサインかもしれません。「音が消えたから大丈夫」ではなく、「音が出た時点で原因を確認する」という意識が、数万円で済んだはずの修理を数十万円にまで膨らませないためにも大切なのです。


ライター:松尾佑人(二級ガソリン自動車整備士・二級ジーゼル自動車整備士資格保有)
新卒で自動車整備業界に入り、約8年間整備に従事したのち、現役メカニックに向けた故障診断アドバイザーや各種講習の講師として活動。年間約1,200件の技術相談に対応し、電気回路や配線図の読み解きを基盤とした電子制御システムの解説を得意としている。


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