1. トップ
  2. ヘルスケア
  3. 夜中に突然、“激しい頭痛と吐き気”に襲われた50代女性→翌朝、目を覚ますと…直面した“恐ろしい事態”に「あの時、放置しなければ」

夜中に突然、“激しい頭痛と吐き気”に襲われた50代女性→翌朝、目を覚ますと…直面した“恐ろしい事態”に「あの時、放置しなければ」

  • 2026.8.15
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

みなさん、こんにちは。日々、患者様の周術期の安全に向き合う麻酔科専門医の松岡雄治です。

「激しい頭痛と嘔吐感に突然見舞われたけれど、いつもの偏頭痛だろう。部屋を暗くして横になっていれば収まるはずだ」

そう思い込んで布団に潜り込み、痛みを耐え忍んでいた50代女性のAさん。しかし翌朝、片目の視野が急激に霞み、ほとんど視界を失う事態に陥りました。救急搬送先で「急性緑内障発作」と診断されたものの、対応が一晩遅れたことで視神経に修復不可能な傷が残り、重い視力障害を背負うことになってしまいました。遠近感が掴めず、車の運転もできなくなった不便な生活。「あの時、放置しなければ」と後悔しても、失われた光はすぐには戻りません。

今回は、偏頭痛と見誤りやすい「目の緊急事態」について詳しく解説します。

眼球がパンパンに。暗い部屋が引き起こす「出口の閉鎖」

なぜ「暗い部屋で休む」という一見問題ないはずの行動が、取り返しのつかない視力低下を招いたのでしょうか。それは、目の中の液体の出口が、複雑な連鎖反応を経て塞がれてしまうからです。

なお、この発作は50代以上の女性や遠視傾向(普段メガネなしで目が良い人)の方に起きやすいという特徴があります。

【暗い部屋が視神経を壊すフロー】

  1. 瞳孔の拡大(散瞳): 暗い部屋に入ると、光を取り込もうとして瞳孔が大きく開きます。
  2. 瞳孔ブロックの発生: 瞳孔が開くことで虹彩と水晶体が密着し、目の中の栄養液(房水)の流れがせき止められます。
  3. 虹彩の膨らみ: せき止められた房水の圧力で、虹彩(茶目)が前方へ押し出されます。
  4. 出口(隅角)の完全閉鎖: 栄養液の出口に蓋をしてしまいます。
  5. 眼圧の異常上昇と視神経の破壊: 行き場を失った房水が目の中に溜まり、眼圧が急上昇します。繊細な視神経に圧力がかかり、短時間で不可逆的なダメージを与えるのです。

眼圧が高まると、目に分布する三叉神経が激しく刺激されて頭痛が生じます。さらに三叉神経を介して迷走神経が刺激されることで、強い吐き気や嘔吐を引き起こします。

「いつもの偏頭痛」という思い込みと、見逃されやすい「目のSOS」

undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「頭痛と吐き気か、疲れているのかな」「頭が痛いから部屋を暗くして寝ていよう」。

そう自分に言い聞かせ、痛みをやり過ごそうとするのはごく自然な対応です。特に一般的な片頭痛であれば「暗く静かな部屋で休む」のが正しい対処法であるため、まさか原因が「目」にあるとは想像がつかないかもしれません。

しかし、急性緑内障発作の場合、暗闇は瞳孔を開かせ、出口を塞ぐ一連の流れ(瞳孔ブロック)を加速させる最も危険な環境となってしまいます。

また、市販の風邪薬や胃腸薬、抗アレルギー薬などの中には、瞳孔を開かせる成分(抗コリン作用)が含まれているものがあります。「頭痛を和らげたい」と自己判断でこれらの薬を服用すると、発作をさらに悪化させる危険があるため非常に注意が必要です。

重症化する前に、確認すべき3つのサイン

視機能障害を招く前に、激しい頭痛や吐き気を感じたら「目」に以下のような異変がないかを必ずチェックしてください。

1. 電灯の周りに虹のような輪が見える(虹視症)

眼圧の急上昇によって角膜(黒目)がむくみ、光が乱反射している特徴的なサインです。

2. 急に視力が落ちる、目がかすむ(霧視)

角膜がむくむことで、すりガラス越しに見ているように視界がぼやける危険な状態です。

3. 白目が真っ赤に充血し、目が石のように硬くなる

異常な圧力で眼球が張り詰め、充血します。特に、一般的な疲れ目の充血と異なり、白目と黒目の境目が強く充血する毛様充血を起こすことが特徴的です。

激しい頭痛と吐き気を見過ごさず視界の異変をチェック

急性緑内障発作は、暗い場所で瞳孔が開くことや抗コリン作用のある薬の服用などをきっかけに房水の出口が塞がり、急激な眼圧の上昇を引き起こす一刻を争う病気です。

一般的な片頭痛と異なり、「見え方の異常(かすみ・虹の輪)」「目の強い痛みや硬さ・充血」を伴うのが最大のポイントです。

発作は早期対応を行えば視力障害を防ぐことができますが、放置すれば数日で失明に至るリスクがあります。「目の異変を伴う激しい頭痛や吐き気」を覚えたら、暗室で静養して我慢することはせず、直ちに眼科や救急外来を受診してください。


監修者・執筆:松岡 雄治

総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

の記事をもっとみる

注目コンテンツ