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「階段を登ると息がきれる…」“年のせい”と放置した70代女性→ある日、突然倒れ込み…告げられた“病名”に「すぐ検査を受けていれば」

  • 2026.8.31
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

周術期管理や救急・全身管理において、多様な疾患をお持ちの患者さまの安全管理に携わっている麻酔科専門医の松岡雄治です。

「最近、階段を登ると妙に息が切れる…」日常の何気ない衰えを感じつつ、「もう70代だし年のせいで体力が落ちたんだわ」と放置していたKさん(70代女性)。

しかしある日、庭の手入れ中に立ちくらみがして倒れ込んでしまいました。病院で告げられた病名は、「大動脈弁狭窄症」でした。
入院し、カテーテル手術を受けて、現在は症状もありませんが、「あの時、年のせいだと片付けず、すぐに検査を受けていれば苦しい思いもしなくてよかったのに」と振り返っています。

今回は、心臓の出口に潜む「大動脈弁狭窄症」のサインについて解説します。

大動脈弁狭窄症は「心臓のドアが物理的に開きにくくなる」状態

なぜ、加齢に伴う衰えが心臓に重大な影響を及ぼすのでしょうか。心臓のドアが物理的に開きにくくなるメカニズムは、以下のように静かに進行します。

【心臓の出口が狭くなるフロー】
カルシウムの沈着(石灰化):長年の血液の流れによる負担や加齢により、大動脈弁にカルシウムが少しずつ蓄積します。
ドアの硬化(動きの制限):沈着したカルシウムにより、本来しなやかに動くはずの弁が硬く固まってしまいます。
全身への血流低下(虚血):心臓の出口のドア(弁)が数ミリしか開かなくなり、全身、特に脳へ送られる血液が減少します。
心臓の筋肉への負担(限界):狭い隙間から無理やり血液を押し出すため、心臓に過度な負担がかかり続け、体を動かしたときなどに症状が出てきます。

「年のせい」と「薬では治らない物理的閉塞」に潜む注意すべき境界線

「最近、運動不足だから息が切れるのだろう」「立ちくらみは一時的な貧血に違いない」。日々を懸命に生きる皆さんが、年齢に伴う衰えを「年のせい」と捉えて様子を見るのは、ごく自然な心理です。

しかし、本件を通してお伝えしたい「注意すべき事実」があります。大動脈弁狭窄症は根本的には「薬では治らない病気」です。硬く固まってしまった心臓のドアを飲み薬で元に戻すことは難しく、治療にはカテーテルによる大動脈弁植え込み術(TAVI)や手術で弁を交換するといった物理的な対応が必要になります。

さらに、この病気は少しずつ自覚症状がないまま何年も進行します。「息が切れる」「胸が圧迫される」といった症状が出た時点では、すでに病状はかなり進行していることが知られています。治療をしなければ、症状出現後の平均寿命はわずか2〜3年という厳しいデータも存在し、突然倒れてしまうリスクも高まってしまいます。歳のせいと考えすぎず、気になる場合には一度ぜひお近くの循環器内科を受診してみてください。

重症化する前に、確認すべき3つのサイン

ただの運動不足や貧血と、心臓の出口が塞がっている危険なサインを見分けるために、以下の3つの初期サインをご確認ください。

1. 動いたとき「だけ」起きる息切れ

安静時には何ともないのに、階段を数段登る、あるいは少し早歩きをした瞬間にだけ急激に息が切れます。

2. 動作時の「胸の奥の締め付け感」

体を動かした際、胸の真ん中がズーンと重く圧迫されるような違和感や鈍い痛みが走ります。

3.動いた瞬間の「失神や目の前が暗くなる感覚」

動いた瞬間に脳への血流が一時的に不足し、ふらついて倒れそうになる立ちくらみや失神が生じます。特に動作中に倒れたり意識が遠のいたりした場合は、突然死の危険もある非常に危険なサインですので、様子を見ずに速やかに(必要に応じて救急車を呼んで)医療機関を受診してください。

突然倒れてしまう前に

まさか息切れの原因が、心臓の出口が固まったせいだったなんて思いもよらないのは無理もないことです。
まずは「階段を登るとき、いつも同じ段数で息が切れて立ち止まっていないか」という、簡単なチェックから始めてみましょう。もし怪しいサインがあるときは、我慢せずに循環器内科を受診し、心臓超音波(エコー)検査を受けてください。エコーの検査は痛みもなく、それでいて心臓の様子がよくわかる検査です。
突然倒れてしまう前に、まずは静かに出ている症状がないか、振り返ってみましょう。
日々の不安を取り除き、大切なご家族と笑顔で歩み続ける日常をこれからも安心して楽しむことができるよう、少しでもおかしいと感じたら、いつでも私たちを頼ってくださいね。


監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

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