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ある朝、顔色が悪く体が熱くなっている80代父→娘が慌てて病院に連れて行くと…医師から告げられた“意外な診断結果”とは?

  • 2026.9.21
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。泌尿器科専門医の小内友紀子です。

今回は、発熱と陰嚢(いんのう)の腫れで緊急入院となった、80代男性のエピソードをご紹介します。

※本エピソードは複数の患者さんの経験をもとに再構成した架空のものです。特定の個人を指すものではありません。

「なんとなく元気がない」その裏にあったもの

Aさん(83歳男性)は数日前から食欲がなく、家の中でぐったりと横になっていることが増えていました。

同居する娘のBさんは「年齢のせいで疲れやすくなっただけかもしれない」と思っていたそうですが、ある朝、いつもよりも顔色が悪く、触れると体が熱いことに気づき、近くの病院を受診させました。

血液検査をすると、体内で炎症が起きているときに上がる数値が非常に高い状態でした。CT検査などでさらに詳しく調べたところ、診断されたのは「左精巣上体炎(ひだりせいそうじょうたいえん)」。左の陰嚢は、すでに握りこぶしほどの大きさに腫れ上がっており、熱も39℃近くまで上がっていたため、そのまま緊急入院となりました。

精巣上体ってどんな臓器?

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「陰嚢が腫れる」と聞くと、がんなど重い病気を思い浮かべて不安になる方もいらっしゃるかもしれません。精巣上体は、精巣(いわゆる睾丸)の上から後ろにかけて寄り添うように付いている、細長い管状の臓器です。精巣で作られた精子を運びながら成熟させる、いわば通り道のような役割を担っています。

この精巣上体に細菌が入り込み、炎症を起こした状態が精巣上体炎です。尿道から侵入した細菌が精巣上体まで達することで起こるとされており、高齢の男性では、前立腺が大きくなることなどで尿の流れが滞りやすくなっている場合に、誘因の一つになることがあると言われています(日本泌尿器科学会の解説を参考)。なお、高熱や大きな腫れが出る前には、排尿時の痛みや頻尿、股・陰嚢周辺の軽い違和感といった初期症状が現れることも少なくありません。

陰嚢の腫れと痛みが急に起こる病気には、精巣そのものがねじれてしまう「精巣捻転(せいそうねんてん)」もあり、こちらは数時間以内の緊急手術が必要になることもあります。精巣上体炎とは対応の緊急度も治療法も異なるため——素人目には見分けがつきにくいものです。腫れやしこり自体は精巣腫瘍など他の病気でも起こり得るため、がんかどうかも含めて自己判断せず、まずは医療機関で調べてもらうことが大切です。

抗菌薬による治療と、少しずつの回復

入院後は、原因となっている細菌に対する抗菌薬(こうきんやく)の点滴治療が始まりました。入院からはじめの2〜3日は高熱が続き、会話もままならないほどぐったりとした様子だったAさんですが、治療が効いてくるにつれて少しずつ解熱し、表情にも元気が戻ってきました。あれほど腫れていた陰嚢も少し小さくなり——入院から約1週間で無事に退院となりました。

退院の日、Aさんは「熱が出たときはどうなることかと思ったけど、ちゃんと元気になれてよかったよ」と、少し照れくさそうに話してくださいました。付き添っていた娘のBさんも「まさか陰嚢の腫れが原因だったなんて思いもしませんでした。もっと早く気づいてあげればよかった」と振り返っていらっしゃいました。

ご家族の「なんとなく元気がない」は見過ごさないで

精巣上体炎は、抗菌薬による治療で多くの場合改善が期待できる病気です。ただし、治療が遅れると膿(うみ)がたまってしまったり、症状が重くなったりすることもあります。また、陰嚢まわりの症状は男性にとってもデリケートな話題であるため、家族にすら相談できずに我慢してしまうケースも少なくありません。

ご高齢のご家族に発熱と食欲低下がみられたときは、陰嚢の腫れや痛みがないかもさりげなく確認し、思い当たる様子があれば、恥ずかしがらずに早めに泌尿器科を受診することをおすすめします。小さな異変への気づきが、大きな安心につながります。


監修者:小内友紀子
公益財団法人ときわ会 常磐病院 泌尿器科 診療副部長、東京女子医科大学病院 泌尿器科 講師、医師、医学博士 女性泌尿器科医師として、普段は女性によくある尿もれから、男性の前立腺癌をはじめとする泌尿器科領域の癌診療まで診療しております。 【資格】医師 / 医学博士 / 泌尿器科専門医・指導医 / 透析医学会専門医・指導医 / 排尿機能学会専門医

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