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客「この駅ならではの駅弁を味わいたい。おすすめは?」駅弁の取り扱いなしと伝えるも…→直後の“一言”に駅員も困惑

  • 2026.9.4
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。元鉄道駅員の川里です。 旅の大きな楽しみの一つといえば、車窓を眺めながら味わう「駅弁」ですよね。

旅情を感じられる最高の時間ですが、実は駅の規模や環境によっては、必ずしも旅の理想通りのご案内ができるとは限りません。

今回は、私が駅員時代に体験した「お客さまの旅への強いこだわり」と、現場の現実との間で頭を悩ませた印象的な出来事をご紹介します。

売店が改装中

あるとき、駅の売店が改装工事を行うため休みになりました。

売店とはいっても、特別なものを売っているわけではありません。実際にはよくある普通のコンビニ。改札口のすぐそばにあり、お客さまから「売店はありますか?」と尋ねられればこのコンビニを案内するので、わかりやすいように「売店」と呼んでいました。

お客さまが乗車前に飲食物を購入できるようなコンビニはほかにもありますが、駅の改札口から少し歩く場所に位置しています。

「売店は数か月かかる大規模な改修をするそうだ」と上司から聞きました。駅に直結していて利便性が高かっただけに、しばらく使えなくなるのは自炊をしない私にとっても大きな痛手でした。

こうしてしばらくの間、売店をお探しのお客さまに

「申し訳ありませんが改装中ですので、一番近くても、駅を出て少し進んだところにあるコンビニをご利用ください」

と回答する日々が始まりました。

「旅情」にこだわるお客さま

ほとんどのお客さまは飲食物の購入を諦めるか、改札内の自動販売機で飲み物を買う選択を取ってくださいました。どうしても空腹を我慢できない、または列車まで時間があるという方は、実際に少し遠くのコンビニまで足を延ばしていました。

意外と無いなら無いで、みなさま上手く対応してくださるんだなと感じていたところ、1人のお客さまが改札口に現れました。

このお客さまも売店をお探しでした。それも

「この駅ならではの駅弁を味わいたい。駅員さんのおすすめは?」

というお尋ねでした。「売店」と呼んではいたものの、よくある普通の「コンビニ」です。これといった名物も特にありません。そしてその時はその売店も、改装工事のため休業中です。

「駅弁はこの駅では売っていません。通常のお弁当も、駅を出て少し進んだ先のコンビニであれば購入が可能です」

と回答させていただいたところ、さらにお客さまから質問がありました。

そこに旅情はあるのか?

「いやあ、駅弁がないのは違うんじゃないですか?」

お客さまは少し残念そうな表情を浮かべていました。私にはすぐには理由がわからず困惑していると

「駅弁って、鉄道旅の醍醐味じゃないですか。車窓を眺めながら地域の食文化を味わうのがいいんですよ。コンビニ弁当じゃ旅情がないっていうか…」

駅弁への強いこだわりをお持ちのようで、旅情の素晴らしさについて熱心にお話しされた後、改札へ向かわれました。

私も旅行が好きなので、旅先の食事を楽しみたい気持ちはとてもよくわかります。とはいえ現実的な代案があるわけでもありません。

オープン前に定期異動

その後、売店の改装工事は無事に終わり、リニューアルオープンしました。

しかし、私はその新しくなった店舗をその駅の係員として見届けることはありませんでした。オープン直前の定期異動で、数駅離れた別の駅に配属されたためです。

新しい駅には電車で通勤していたため、リニューアル後のピカピカした売店を外から眺めることはできましたが、出勤中や帰宅中に立ち寄ることはありませんでした。

トラベルプランナーじゃないので…

ちなみに、私がそうであるように、駅員は数年で異動します。そのため、「駅員のみぞ知る隠れた名店」というものは、なかなか出てこないかもしれません。もちろん駅員によりますが、業務の忙しさゆえ、駅から近い場所やすぐ購入できるコンビニなどで昼食を済ませてしまう人も多いのが現状です。

駅弁に限らず、『せっかくの旅行だから』と、私たち駅員に旅のプロとしての提案を期待されるお客さまはいらっしゃいます。『駅員におまかせで旅行コースを作ってもらおう』と窓口にお越しになる方も稀にいらっしゃいますが、残念ながら観光プランや穴場スポットには、旅行会社ほど詳しくありません。

駅員が案内できるのは自社の乗換案内や、勤務する駅の情報などです。今回紹介したようなケースではなかなか提案も難しいところがありますが、乗換駅での移動方法や駅のお手洗いの場所などならご案内できます。

そのため、鉄道旅をするときは「出発前の計画の相談は旅行会社、出発後の現地での困りごとは駅員」と使い分けると、より良い旅になるのではないでしょうか。


ライター:川里隼生

鉄道会社の駅係員として8年間、4つの駅を経験しました。コロナ禍やデジタル化を通して移り変わってきた、会社としての鉄道サービスの未来像と、お客さまそれぞれが求めている鉄道サービスのあり方の両方から学んだことを記事にしていきます。


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