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訪問看護で…遠方の患者家族「買い物や掃除も見てもらえます?」→その後の“一言”に看護師「正直少しモヤっとした」

  • 2026.8.24
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。現役看護師ライターのこてゆきです。

訪問看護では、利用者さん本人だけでなく、ご家族からさまざまな相談や要望を受けることがあります。

特に夏休みやお盆の時期には、普段遠方で暮らしている家族が帰省し、訪問時に初めて顔を合わせるケースもあります。

普段の生活を見ていないからこそ、家族には家族なりの不安があります。

今回は、脳梗塞の後遺症がある高齢男性Aさんの訪問時に、県外から帰省した息子夫婦から次々と要望を受けた日のことです。

最初は「そこまで求められても…」と戸惑いました。しかし、話を聞いていくうちに、その言葉の奥に隠れていた家族の本当の気持ちが見えてきました。

「毎日来てもらえませんか?」突然始まった家族からの質問

Aさんは脳梗塞の後遺症があり、訪問看護を利用しながら自宅で生活していました。

普段は妻と2人で暮らしており、訪問時には体調確認や血圧測定、服薬状況の確認、日常生活についての相談などを行っていました。

その日は、いつものように訪問すると、玄関に見慣れない靴が並んでいました。

「こんにちは。今日はご家族いらっしゃるんですね」

そう声をかけると、Aさんが笑いながら答えました。

「息子らが帰ってきてるんですわ」

県外で暮らしている息子夫婦が、夏休みを利用して帰省していたようです。

リビングへ入ると、息子さん夫婦が挨拶をしてくれました。

「いつもお世話になっています」

最初は和やかな雰囲気でした。

ところが、バイタル測定を始めた頃から、息子さんが質問を始めました。

「血圧って、普段どのくらいなんですか?」

「日によって変わりますが、大きな変化がないかを訪問時に確認しています」

そう答えると、今度は、

「じゃあ、毎日測ったほうがいいですよね?」

と聞かれました。

「必要があれば主治医とも相談しながら対応しますが、現在は通常の訪問時に確認しています」

そう説明すると、息子さんは少し考えたあと、こう言いました。

「じゃあ、毎日来てもらうことはできないんですか?」

一瞬、返答に迷いました。さらに続けて、

「ついでに血圧も毎日測ってほしいです。あと、買い物とか掃除とかも見てもらえます?」

と、次々に要望が出てきました。

「家族なんだから当然でしょ?」に戸惑った

私は一つひとつ必要性を確認しながら説明しました。

訪問看護でできることには限りがあり、介護サービスなど別の支援が必要になる場合があるということです。

しかし、息子さんは少し困ったような表情を浮かべていました。

そして、ぽつりと、

「でも、家族なんだから要求するのは当然でしょ?」

と言ったのです。

その言葉に、正直少しモヤっとしました。もちろん、息子さんがAさんを心配していることは分かります。

ただ、「家族だから」という理由だけで、訪問看護にすべてを任せるような形になると、支援する側としても困ってしまいます。

看護師としては、利用者さんの安全を守りながら、必要な支援を適切につなげることも役割です。

そのため、「できることは何でもします」とは簡単に言えません。

私は一度、質問に答えるのを止めました。

そして、

「息子さん、何かAさんのことで特に心配なことがありますか?」

と聞いてみました。

すると、少し沈黙がありました。

「…実は、何が正解なのか全然分からなくて」

先ほどまでの勢いが少しなくなりました。

本当は「何もできていない」ことが怖かった

息子さんの話を聞いていくと、県外で暮らしているため、Aさんの普段の生活をほとんど把握できていないことが分かりました。

「電話では元気って言うんです。でも、実際どうなのか分からなくて」

「脳梗塞の後遺症があるって聞いても、どこまでできて、どこから手伝ったらいいのか…」

隣にいた奥さんも、

「今回帰ってきて、思っていたより父ができないことが多いのを知って…」

と話しました。そして息子さんが小さな声で、

「自分、何もしてないんじゃないかって思ってしまって」

と言いました。

その瞬間、先ほどまで感じていた「無理な要望」という印象が少し変わりました。

毎日訪問してほしい。血圧を毎日測ってほしい。買い物や掃除もしてほしい。

一見すると、訪問看護に対する過剰な要求にも見えます。でも、その背景には、

「父親に何かあったらどうしよう」

「自分が離れて暮らしているせいで、何かを見逃しているのではないか」

「家族なのに何もできていない」という焦りがあったのです。

「何でもやります」ではなく「一緒に考えます」

私は息子さんに、現在のAさんの生活状況や訪問看護で確認していることを改めて説明しました。

そして、

「今の状態で必要な支援を一緒に整理してみましょう」

と伝えました。

「毎日来てもらう必要があるのか、別のサービスを組み合わせたほうがいいのか、それはAさんの生活を見ながら考えたほうがいいと思います」

息子さんは黙って聞いていました。しばらくして、

「そういうふうに考えればいいんですね」

と、少し安心したように笑いました。

その後は、Aさん本人の希望も確認しながら、普段どのような生活をしているのか、家族がどこまで関われるのかについて話をしました。

最初は「毎日来てください」と言っていた息子さんも、話が終わる頃には、

「自分たちができることも考えてみます」

と言っていました。

「理不尽」に見えた言葉の奥にあったもの

この日の出来事を振り返ると、「家族なんだから要求して当然でしょ?」という言葉だけを切り取れば、看護師側が困ってしまうのも無理はありません。

実際、現場では時間や人員、制度上の制限もあります。できないことを曖昧に引き受けてしまえば、結果的に利用者さんにも家族にも迷惑をかける可能性があります。

だからこそ、要望に対して必要な説明をすることは大切です。

ただ、その一方で「なぜ、この人はここまで強く求めているのだろう」と考えてみることも大切なのだと感じました。

家族からの強い言葉の裏には、怒りではなく、不安や罪悪感、戸惑いが隠れていることがあります。

「ちゃんと見てほしい」という言葉が、本当は「自分では見られないから助けてほしい」という意味だったりするのです。

もちろん、すべての要望を不安の表れとして受け止めればいいわけではありません。必要な線引きをしながら、家族の思いにも耳を傾ける。

その両方が必要なのだと思います。

訪問看護では、利用者さんの家に入るからこそ、その人を取り巻く家族の生活や思いが見えてくることがあります。

「家族だから当然」という一言に、最初はモヤっとした私でした。

でも、その言葉の奥にあったのは、父親を心配する気持ちと、「自分も何かしなければ」という焦りでした。

看護師に求められているのは、要望をそのまま受け入れることでも、断ることでもありません。

その言葉が出てきた背景まで考えながら、利用者さんと家族にとって必要な支援を一緒に探していくことです。

あの日の訪問は、家族からの「無理なお願い」に見えた言葉を、別の角度から捉え直すきっかけになりました。



ライター:精神科病院で6年勤務。現在は訪問看護師として高齢の方から小児の医療に従事。精神科で身につけたコミュニケーション力で、患者さんとその家族への説明や指導が得意。看護師としてのモットーは「その人に寄り添ったケアを」。


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