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「下の階の人、お土産渡してくるの」在宅の日を狙ってインターホンを鳴らす住人に、私が身構えた理由とは

  • 2026.7.27

女性限定という安心

その部屋を選んだ決め手は、女性限定という条件でした。

大家さんの敷地に建つ、上下に一軒ずつ、たった二軒だけの小さな賃貸です。

女性しか入らないと聞いて、私はすっかり安心していたのです。

一人暮らしを始めてしばらくは、静かで落ち着いた毎日でした。

階下も長く空いたままで、建物にいるのは自分だけのような気楽ささえあったのです。

ところがある日、仕事から帰ると、階下の窓に見慣れない灯りがともっていました。

越してきたのは年配の男性でした。女性限定と聞いていたはずなのにと戸惑いましたが、事情があるのだろうと、深くは考えませんでした。

出張土産のおせんべい

顔を合わせれば会釈をする、それくらいの間柄でした。

とりたてて言葉を交わすこともなく、しばらくは穏やかに過ぎていったのです。

ある日の夕方、玄関の鍵を開けて中に入った、まさにその直後でした。

まるで見ていたかのような間合いで、インターホンが鳴ったのです。

「出張のお土産です。よかったら」

ドアを開けると、階下のあの人が、大きなおせんべいの箱を差し出していました。

断る間もなく、私はお礼を言って受け取るしかありませんでした。

悪い人ではないのかもしれません。

それでも、なぜ帰ってすぐだと分かったのだろうという引っかかりが、どうしても消えませんでした。

結局その箱は開けないまま、翌日、職場の同僚にそっともらってもらったのです。

在宅を見計らう呼び鈴

それから数か月は、これといったことも起きませんでした。

あの日のことも、考えすぎだったのだと思うようにしていたのです。

変わったのは、家で仕事をするようになってからでした。在宅で机に向かっていた昼下がり、またあのインターホンが鳴りました。

玄関の画面には、見覚えのあるあの人が映っていたのです。

私が家にいる日にかぎって、まるで見計らったように呼び鈴が鳴る。

その符合に、私はだんだんと身構えるようになっていきました。

「下の階の人、お土産渡してくるの」

気心の知れた友人にだけ、私はそうこぼしました。

口にしてみると、大した事件でもないのに、自分でも不思議なくらい落ち着かない気持ちになったのです。

相手が何か悪さをしたわけではありません。ただ、私が在宅の日を、どこかで知られているような気がしてならない。

その薄い気配だけが、今も部屋のどこかに、そっと残り続けています。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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