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忘れられないおもちゃの話。「手に入らなかった、メカたちの秘密基地」俳優・光石研

  • 2026.7.24
織山朋 イラスト

幼馴染みだった中島くん家(ち)は、地元で人気の鍼灸院(しんきゅういん)。いつ行っても、施術を待つ多くの人で溢れていました。2階が住まいで、彼の自室にあったのが、《サンダーバード秘密基地》のプラモデルです。

『サンダーバード』は、国際救助隊を名乗る秘密組織がスーパーメカ“サンダーバード”を駆使して活躍するSF特撮人形劇で、このおもちゃは、南太平洋に浮かぶ国際救助隊の秘密基地という設定。当時夢中になっていたテレビの世界観が目の前に広がったことに興奮しましたね。

小高い丘があって、管制レーダーがあったり、格納庫があったり。もちろん、サンダーバード1号や2号、ピンク色のロールス・ロイスなどのメカも勢揃い。今見れば大したことのないおもちゃかもしれませんが、当時はそれが無性に立派でカッコよく見えて、羨ましいやら悔しいやらで、子供心に「お金持ちっていいな」と思ったことを覚えています(笑)。

あの基地を手にすることは叶いませんでしたが、両親にせがんで、サンダーバード2号のプラモデルだけをゲット。脚部パーツを伸ばしてコンテナを取り付けることができ、その中にキャタピラの付いたトラクターのようなメカを格納するギミックが面白かったんです。テーマソングを鼻歌で歌いながら、一人サンダーバードごっこに明け暮れていましたね。

織山朋 イラスト

両親が共働きで一人っ子だった僕は、一人で遊ぶのが常でした。おもちゃについて教えてくれる兄弟もいなければ、スマホがあるわけもなく、情報源は、友達か、書店で雑誌を立ち読みして得るか。ごく薄い情報だけが頼みの綱でした。

だから、トヨタの2000GTと間違えてS800のプラモデルを買ってもらったことにしばらく気づかなかったことを筆頭に、何かを買ってもらえる機会に失敗して、ショックを受けたことも数知れず。でもわずかな視界だったからこそ、目に映るものが強烈に輝いて見えたのだと思います。当時恋焦がれた代物は、今も自分の心に強く刻まれています。

profile

光石 研(俳優)

みついし・けん/1961年福岡県生まれ。名バイプレーヤーとして映画やドラマで活躍。26年4月から放送のNHKドラマ10『コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店』、4月2日に配信開始のネットフリックスシリーズ『九条の大罪』に出演。

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