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今の気分を凝縮。キッチンを「家の主役」に変える発想術29

  • 2026.7.23
Helenio Barbetta/Living Inside

かつては家事を行う実用本位の場所だったキッチンは、今や家族が集う空間の主役として進化を遂げている。2026年、キッチン空間において特にトレンドとして認識されているのが、ある特定のカラーグループ。「グリーンのキッチンの人気が確実に再燃しています」と、ナッシュビルを拠点とするデザイナーのロジャー・ヒギンズはUS版『エル・デコ』に語った。「真っ白なキッチンから趣を変えるのにぴったりで、選ぶ色合いさえ間違えなければ、時代に左右されない普遍的な魅力も保てます」。さらに、グリーンは様々な天然素材と非常に合わせやすいため、言わば“新たなニュートラルカラー”のような存在としてもその存在感を増している。専門家たちは、その効果を最大限に引き出す色として「セージ」「アボカド」「フォレストグリーン」を推奨する。

そしてもう一つの大きなトレンドが“個性化”だ。「今や家電を含め選択肢はかなり広がりました。キッチンに自らの個性を反映することは、誰もが求めていることであり、その表現の幅は無限大です」と、デザイナーのジェレマイア・ブレントは語る。彼がニューヨークの自身のスタジオのためにデザインしたキッチンを見れば、それは一目瞭然だ。そこには、スタイリッシュな「ジェンエアー」の家電と並んで、贅沢なヴィンテージのイタリア製壁掛け照明、上質な石材のアクセント、シンク下の目隠しカーテンといった個性的なディテールが随所に取り入れられている。「極めて現代的でスマート、かつ先進的なテクノロジーを備えながらも温もりを感じさせ、歴史や時の流れが何層にも重なる深みを感じさせるキッチンを実現できるのです」と彼は語る。

キッチン空間をワンランク上の場所へと引き上げるインスピレーションを与えてくれる、デザインアイデアをまずは見てみよう。US版「エル・デコ」より。

Frank Frances

「グリーン」のカラーパレットを取り入れる

デザイナーたちによると、グリーンはキッチンの“新たなニュートラルカラー”になり得るという。木や石といった天然素材の美しさを引き立てるのに、理想的な色相だからだ。その好例が、木と石の両方の素材を取り入れた、このアメリカ・バーモント州の邸宅のキッチン。手がけたのはデザイン界の巨匠、シーラ・ブリッジズ。

彼女はキャビネットとアイランドカウンターを「ファロー&ボール」の“コークグリーン”でペイントし、そこに「ジ・アーバン・エレクトリック・カンパニー」のグリーンのペンダントライトをコーディネート。さらに「ブルースター」のコンロとレンジフードにもフォレストグリーンを採用し、見事な調和を生み出している。

Joseph Bradshaw

「ゼリージュタイル」をバックスプラッシュに

キッチンに洗練されたスタイルと温かみのある個性をプラスする優れたアイデアが、何世紀もの歴史を持つモロッコの伝統技法で一枚一枚手作りされる「ゼリージュタイル」を取り入れること。

デザイナーのローラ・ジェンキンスが手がけたアトランタのこのキッチンでは、バックスプラッシュ(汚れ止めパネル)として採用。「手仕事ならではの不均一さが不思議と完璧な美しさを醸し出すこのタイルを使うことで、よくある型にはまったデザインになるのを避け、伝統を感じさせる個性豊かな意匠を実現しました」

Giulio Ghirardi

物語を紡ぐ「絵画的タイル」をセレクト

優れた空間というのは、言葉を介さずとも自ずとストーリーを語りかけてくるもの。デザイナーのピエール・ヨバノヴィッチが手がけた、パリのアパルトマンにあるコンパクトなキッチンがまさにその好例だ。

この空間で彼は、上品なアボカドカラーに彩られた特注のキャビネットに、アーティストのマチュー・コセが手がけた手描きの絵タイルをバックスプラッシュに配した。このアートのような演出は、格調高く洗練された印象を保ちながらも、豊かな個性と遊び心に満ちている。

David Marlow

「周囲の自然」をデザインに取り入れる

スキーの聖地として知られるコロラド州テルライド。デザイナーのサシャ・ビコフは、クライアントのキッチンの色合いを決めるにあたり、この地の険しくも美しい大自然からヒントを得た。

「キッチンにあしらった石は、山や小川で見かける小さな丸石や岩、そして大きな岩塊のようにも見えます」とビコフは語る。この素材である「ABCストーン」のチェッポ・ビアンコタイルは、ウォールナット調に塗装されたキャビネットと相まって、息をのむほど見事な素材同士の調和を生み出している。

また、バースツールは「BDDW」、オーブンは「サーマドール」を採用。天井に直付けされたシーリングライトには、「ジ・アーバン・エレクトリック・カンパニー」の“ジャクソン”を合わせている。

Stephen Kent Johnson

アイランドカウンターは「大胆」に

ハンプトンズにあるビーチハウスのために、デザイン事務所ユニオンワークスのデザイナー、プーナム・カーナは、塊のような存在感を放つアイランドキッチンを、眩いばかりの真鍮で覆った。この真鍮は、歳月の経過とともに自然な味わい深い経年変化を遂げていく。その強い個性を、すっきりとした無駄のないキャビネットと対比させることで、美しく引き立てている。ペンダントライトは「アパラタス」のもの。

Douglas Friedman

照明は「グラマラス」なタイプも検討

自分の目指すスタイルが華やかでグラマラスなものなら、マーティン・ローレンス・バラードのキッチンをぜひ参考にしてほしい。

この空間では、クリストファー・ピーコックが手がけた摘みたてのようにフレッシュなグリーンで彩られた特注のキャビネットやアイランドカウンター、レンジフードに対し、その頭上にはバラード自身が「コーベット・ライティング」のためにデザインした、圧倒的な存在感を放つ大ぶりの照明器具が浮かんでいる。さらに、モザイクタイルのバックスプラッシュも、言うまでもなく息をのむ美しさだ。

Ye Rin Mok

「オブジェ」のような収納パントリー

多くの人がキッチン家電を単に“隠す”ことを選ぶ一方で、なかには空間内で巧妙に“カモフラージュする”ことを選ぶ人もいる。ロサンゼルスを拠点とするデザイン事務所LAUNが手がけたこの邸宅のキッチンは、特注の石製アイランドカウンターと、無塗装の真鍮製キャビネットが特徴。

ひときわ目を引くグリーンのラッカー塗装のボックスは、「マニューバーワークス」が現地で製作したもの。「フィッシャー&ペイケル」の冷蔵庫をはじめ、食器やパントリー食材、その他の家電を収める内部のキャビネットや棚一式を、すっきりと覆い隠している。

Douglas Friedman

ひねりを効かせた「トラッドスタイル」

スティーブン・ギャンブレルが手がけたこのキッチンでは、家電が主役としての存在感を放っている。空間には、特注のレンジフードや「ウォーターワークス」の水栓金具に加え、カラカッタゴールドの大理石をあしらった天板が美しく設えられている。

シックなキャビネットは、「ベンジャミンムーア」の“ストーニントン・グレー”でペイントされており、壁面には“ウォーカー・ザンガー”のタイルが張り巡らされている。

William Waldron

都会派は「スマート」に徹する

たとえキッチンのスペースが限られていても、洗練されたスタイルを表現できない理由などどこにもない。

このマンハッタンのアパートメントでは、使い勝手に優れた機能的な通路型キッチンに、「ウルフ」のコンロと「ベント・ア・フード」の特注レンジフードを採用している。天板にあしらったカラカッタゴールドの大理石が空間に程よい華やかさを添える一方で、冷蔵庫には実用性を重視して「サブゼロ」のものを選んでいる。

Eric Piasecki

「ツートンカラー」のキャビネット

デザイナーのJ・ランドール・パワーズは、ヒューストンにあるこの邸宅のキッチンを、印象的なツートンカラーのキャビネットの組み合わせで生まれ変わらせた。

特注の下部キャビネットには、ハケで細い筋模様を表現するストリエ調の塗装を施す一方、上部キャビネットには「シャーウィン・ウィリアムズ」の“ローマン・コラム”のペイントを採用。水栓金具は「ロール」、コンロは「ウルフ」、冷蔵庫は「サブゼロ」、で揃え、壁面には「ウォーカー・ザンガー」のタイルを合わせている。

Richard Powers

「機能美」を極めたラグジュアリーキッチン

メキシコ・グアダラハラにある、モダンなツリーハウスを思わせる邸宅。そのキッチンは、「ボッフィ」のキャビネットやレンジフード、テーブルを配し、クワイエット・ラグジュアリーの気品を漂わせている。天板にはシーザーストーンを、水栓金具には「ドルンブラハ」を採用。さらに、コンロは「ウルフ」、オーブンには「ミーレ」を選び、機能美を極めている。

Stephan Julliard

「大理石」に包まれた調理スペース

床から天井まで大理石で埋め尽くされた空間ほど、贅沢なものがあるだろうか。ウーゴ・トロが手がけたパリの通路型キッチンでは、天板や床、そして壁に至るまで、人の目を引きつけるブレッシュ・ド・メディシスの大理石で覆われている。

肉の回転焼き機やオーブンコンロ、レンジフードは「ラ・コルニュ」を採用。一方で、キャビネットには「レッドフィールド&ダトナー」による特注の赤いラッカー塗装が施されている。

Helenio Barbetta/Living Inside

「宝石箱」のようなキッチン&ダイニング

「神は細部に宿る」とは、近代建築の巨匠ミース・ファン・デル・ローエがかつて残した名言だが、この息をのむほど美しいキッチンにおいて、見過ごされたディテールはただの一つもない。

デザイナーのハネス・ペールが手がけたミラノのキッチン。その中央には、特注の手鋳造ガラスのシャンデリアが優雅に吊り下がっている。さらに、真鍮仕上げのキャビネット、大理石の天板、そして「ミーレ」の家電が、実に見事な素材のコントラストを描き出している。

Douglas Friedman

「ファームハウス」も参考に

ケン・フルクがデザインを手がけたソノマの邸宅。そのキッチンは、味わい深いファームハウスを思わせるアンティークのオーク材の板張り床と、塗装を施したV字模様のキャビネットが特徴。このキャビネットは、生活感の出やすい冷蔵庫をスマートに隠す役割も兼ね備えている。

中央のアイランドカウンターは、単なる調理設備としてではなく、まるで独立した一つの家具のような佇まいを持たせるために特注で製作されたもの。その周囲には、スウェーデンの高名なデザイナーであるカール・マルムステンが1950年代に手がけたバースツールが配されている。

Nicole Franzen

「自然と調和」するエレメント

デザイナーのジェニファー・ブンサが手がけたこのキッチンは、特注のオーク材キャビネットに、グリーンのテラゾーの天板を合わせて美しく引き立てている。しかし、このキッチンの本当の贅沢は、窓の外に広がる庭の瑞々しい緑の眺めにほかならない。これほど素晴らしい景色を望めるのなら、喜んで皿洗いを買って出たくなるほどだ。

Read McKendree

「海辺の心地よさ」を堪能する

エリン・ローダーがロングアイランドに構える、モダニズムスタイルの高台の隠れ家。そのキッチンでは、周囲に広がる砂丘の美しい景色が主役を務めている。空間には、「ボッフィ」の水栓金具や、「ネオリス」の“ピエトラ・ディ・ルナ”を採用した天板、を配置。そこに飾られたボウルは、ローダー自身が手がけるライフスタイルブランド「アリン」のもの。

Joshua McHugh

「異素材の調和」を試みる

ロングアイランドにあるこのビーチハウスのキッチンでは、ステンレスとウォールナットを組み合わせた、特大のアイランドカウンターが主役級の存在感を放っている。

シンクは「ジュリアン」、水栓金具は「ドルンブラハ」を採用。冷蔵庫とオーブンコンロは「サーマドア」で揃え、キャビネットには「ラルフ・ローレン」のペイントによる上質なラッカー塗装が施されている。

Anson Smart

アイランドの「存在感」を追求

もし、キッチンの中で最も投資すべき場所を一つ挙げるなら、デザイン性と機能性を高次元で兼ね備えたアイランドキッチンをおいて他にない。

デザイナーのタムシン・ジョンソンは、ビアンコ・ジョイアの大理石を使った、特注の片持ち構造のアイランドカウンターを製作し、シドニーのこのキッチンの主役に据えた。そこに深緑色のジオ・ポンティのスツールを合わせた佇まいは、まるでアートギャラリーの一角のようだ。

Stephen Kent Johnson

「コントラスト」を効かせたキャビネットの配色

デザイン事務所アッシュ・レアンドロは、パークアベニューにあるこの邸宅のキッチンで、洗練されたスカンジナビアスタイルを表現した。「ウルフ」のコンロに加え、お気に入りの食器を美しくディスプレイするための温かみのある作り付け棚や、本やアートを豊かに飾り込んだ本格的な本棚スペースが特徴。

Chris Mottalini

「ニュートラルカラー」で洗練させる

ラグジュアリーとは決してきらびやかである必要はない。それをこのエレガントなキッチンが、その事実を見事に証明している。

デザイン事務所ハズバンド・ワイフが内装を手がけたこのアパートメント。そのキッチンには、同事務所が老舗キッチンブランド「セント・チャールズ」とタッグを組んでデザインした、クリーミーな色調の特注キャビネットが据えられている。大理石のバックスプラッシュが、穏やかなニュートラルカラーでまとめられた空間に素材の豊かな表情をプラスする。一方で、天井を彩る1960年代のランプは、スウェーデンのデザイナー、アンダース・ペールソンによるもの。

Christian Harder

「モダンな色使い」で個性を確立

ジェット・プロジェクトが手がけたこのアパートメントのキッチンエリアでは、白い大理石の天板と、黒い大理石のダイニングテーブルの対比が、ダイナミックな色彩のドラマを描き出している。

テーブルは、漆黒に走る白い脈模様が美しいネロ・マルキーナの大理石を用いた特注デザイン。そこに合わせられたのは、「カール・ハンセン&サン」による特注色のチェアだ。そして、天井から吊り下がるペンダントライトには、フォルカー・ハウグ・スタジオのデザインを採用している。

William Jess Laird

「オープンシェルフ」で魅せる

デザインスタジオ、スタジオMRSが手がけたこのキッチン。天板と、空間の視線を集める主役となっているオープンシェルフには、ダイナミックな白黒の脈模様が走るカラカッタ大理石が大胆にあしらわれている。一方で、壁面を覆うサブウェイタイルは、そのまま天井にまで貼り巡らされている。

シンクの脇に飾られた小さなアートから、色調を合わせてディスプレイされた黒いボウルに至るまで、この空間の随所に散りばめられたラグジュアリーなディテールの数々は、ぜひ参考にしたいポイントだ。

Thomas Loof

「借景」を100%味方に

ケリー・ベハンがデザインを手がけたこのキッチンでは、都市のスカイラインが主役を務めている。地上53階という、まるで空中を浮遊しているかのような場所にいるのだから、それが主役にならないはずがないだろう。

スタジオ・ソフィールドがデザインしたアイランドカウンターの上には、特注の漆喰製ペンダントライトが優雅に吊り下がる。そして、水栓金具には洗練された美しさで知られる「カリスタ」を採用している。

Peter Murdock

「名作家具」との対話を愉しむ

インテリアデザイナーのジョー・ネイハムが設計に携わった、このプールサイドのキッチン。ステンレススチール製の棚や、テラゾーで覆われたアイランドカウンターが造作され、さらに「ブルトハープ」の特注キャビネットが美しく組み込まれている。

天井を彩るペンダントライトは、ニューヨークの名門デザインギャラリー、R&カンパニーが扱うローガン・グレゴリーの作品。そして、そこに並ぶヴィンテージのハリー・ベルトイアの椅子は、クレマン・ブラジルによって再構築されたもの。

JASON SCHMIDT

「メタルの輝き」を際立たせる

これぞまさに、ステンレスが主役を張るキッチンだ。

アッシュ・レアンドロが高級リゾート地ハンプトンズで手がけたプロジェクト。その印象的なキッチンは、同素材のキャビネットに美しく溶け込む、特注のステンレス製アイランドカウンターが特徴。そこに合わせられた1950年代のバースツールは、カール・マルムステンのデザイン。無機質で硬質な素材が支配する空間において、このスツールが温もりを添えている。

Douglas Friedman

「大理石」の重厚感が語り出す

大理石は、贅沢に使うほど美しい。

ニコル・ホリスがサンフランシスコの邸宅にデザインしたこのキッチン。天板から床へと大理石が流れ落ちるように繋がる、特注のウォーターフォール型アイランドカウンターと、それと同素材で美しく統一され、すっきりと壁面に格納されたコンロやキャビネットは、すべてヴァセッリが「エレメンティ」のために手がけたものだ。さらに、チョコレート色の寄木細工の床が、この空間の魅力を一層引き立てている。

Kelly Marshall

空間に余裕があるなら「ダブルアイランド」

狭い家に住む人なら誰もが知る通り、広さこそが最大の贅沢。アイランドを2台も置ける大空間なら、なおさらだ。マーラ・ブロック・アキルの自邸では、特注キャビネットと2台並んだアイランドカウンターに「アルクリネア」を採用。壁面には、美しい網目模様が特徴のアラベスカート大理石が贅沢に張られている。

Stephen Kent Johnson

「温もりと洗練」の両立

スタジオ・シャムシーリが手がけたこのプロジェクト。ジョン・ウィリアムズによる特注のアイランドカウンターが、空間にモダンなファームハウスのような温かみと洗練された魅力を添えている。

コンロは「ウルフ」、水栓金具は「ドンブラハ」。そして、優美に下がるペンダントライトは「ローズ・ユニアック」のもの。足元のキャビネットは、「ファロー&ボール」の“ディアヘヴン”でシックにペイントされている。

Ricardo Labougle

「可憐なディテール」を見直す

アマロ・サンチェス・デ・モヤがセビリアに持つセカンドハウス。その中にある愛らしいコンパクトなキッチンの魅力を表すには、「可愛い」という言葉だけではとても足りない。

調理スペースはフリルのような波打つ装飾で縁取られ、オープンシェルフにはアンティークの食器や19世紀のスペイン製花瓶が美しく飾られている。一方で、バックスプラッシュにはアンティークの花柄タイルをあしらい、クラシックな白黒の市松模様の床には、カララとネロ・マルキーナの高級大理石を採用して、格別のラグジュアリー感をプラスしている。

original text : Sean Santiago, Geoffrey Montes

>>US版『ELLE DECOR』のオリジナル記事はこちら

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