1. トップ
  2. エピソード
  3. 「手土産のお菓子くらい、普通は持つでしょ」お盆の帰省で義両親に詰められた。だが、夫の一言に救われたワケ

「手土産のお菓子くらい、普通は持つでしょ」お盆の帰省で義両親に詰められた。だが、夫の一言に救われたワケ

  • 2026.7.24
「手土産のお菓子くらい、普通は持つでしょ」お盆の帰省で義両親に詰められた。だが、夫の一言に救われたワケ

手ぶらでいい、と言われた夜

盆に義実家へ集まると決まったのは、七月の終わりでした。

日取りを知らせてくれた電話の最後に、義母がわざわざ付け足してくれたのを覚えています。

「手ぶらで来て大丈夫よ」

「いえ、何かお持ちします」

「気を遣わないで。こっちで全部用意するから」

そこまで言われて食い下がるのは、かえって失礼な気がしました。受話器を置いてすぐ、台所にいた夫にも伝えます。

「お義母さん、手ぶらでいいって」

「じゃあ、そうさせてもらおう」

当日の朝、車に積んだのは子どもの着替えと水筒だけでした。

玄関で止まった足

義実家に着いたのは十時前です。

引き戸を開けて子どもを先に上がらせたところで、義母が私の手元をじっと見ました。

「あら、何も持ってきてないの」

「手土産のお菓子くらい、普通は持つでしょ」

靴を脱ぎかけた足が、そのまま止まりました。式台に置いた子どものリュックだけが、やけに大きく見えます。

「すみません、気が回らなくて」

とっさに謝った私に、居間から出てきた義父の声が重なります。

「気が利かないなあ」

荷物を置いた夫が、玄関に戻ってきました。

「手ぶらでいいって、母さん言ってたよね」

「そんなの社交辞令に決まってるだろう」

夫が出した日付

夫は声を荒げませんでした。上がり框に腰を下ろして、携帯の通話履歴をゆっくり開きます。

「七月三十一日の夜、八時十二分。母さんからうちにかかってきた電話です」

義母が口を開きかけて、そのまま黙りました。廊下の時計の音だけが続いています。

「その電話で、手ぶらで大丈夫って母さんは言ってくれました。妻はそれを信じただけだよ」

「……言ったわね、私」

「言ったよ。荷物になるからって、気を遣ってくれたんだと思ってる」

義父が新聞を持ったまま、天井のほうを見上げました。

「なんだ、本当に言ってたのか」

「社交辞令かどうかは、言われたほうには分かりません」

私がそう返すと、義母は小さくうなずいて台所へ入っていきました。戻ってきた手には、冷やしてあった水ようかんの箱があります。人数ぶんきっちり並んだ、あの家の定番でした。

「これ、あとで開けましょう。……ごめんなさいね」

「はっきりして、よかったです」

その日、義母が私の手元を見ることは一度もありませんでした。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ