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先輩の大荷物を笑った私が、真夏に受け取ったもの

  • 2026.7.25
ハウコレ

「これに入れて。汗で紙が曲がるから」と差し出されたクリアポーチを受け取った時、私が呼んでいた「女子力」の中身が、初めてはっきり見えました。

「女子力高いですねー」で始まる挨拶

男性の先輩が机に日傘とハンディファン、それに冷感シートの袋を並べているのを、私はどこか面白がって見ていました。出社した時から「先輩、今日も女子力高いですねー」と声をかけ、続けて「そこまで焼けたくないんですか?」と付け足すのが、私の中の軽い挨拶になっていたのです。先輩は資料をまとめる手を止めず、「日焼けが嫌なだけだよ」と返してくるだけでした。出発の前、私は先輩のバッグを覗き込みながら「バッグ、荷物多すぎません?」ともう一言笑いました。返ってきたのは、「念のため」という短い返事でした。

駅から取引先までの15分

電車を降りて外に出ると、想像していた道のりとは違っていました。歩道橋の上には日陰がなく、信号待ちの間も直射日光が肩に落ちてきます。ジャケットの下は汗で貼りつき、資料を挟んだ薄いバッグの角も、指の湿り気で少し曲がっていくのがわかりました。取引先の建物が見えたころには、前髪が額に張りついたまま動きません。先輩は歩調を落として、私の隣に並びました。それからバッグから透明なクリアポーチを取り出し、「これに入れて。汗で紙が曲がるから」と差し出したのです。首の後ろに冷感シートをあてがってもらって、私はようやく息を整えました。

女子力の中身

商談を終えた帰り道、私は「先輩、女子力とか言ってすみませんでした」と口にしました。先輩は歩調をゆるめずに「私も最初は何も持ってなかったから」と答えました。最初の外回りで資料を汗でふやけさせて、取引先の前で焦った経験があるのだと話してくれました。バッグに詰まっていた予備は、先輩の見た目のためではなく、同行する誰かが困った時のためのものだったのです。私が「女子力」と呼んでいたものは、失敗して覚えた仕事道具の別名にすぎませんでした。オフィスに戻って同僚に「どうだった?」と聞かれても、私は「暑かったです」とだけ返しました。隣で先輩が「次は涼しいうちにしましょう」と呟いていました。

そして...

次の日、私のバッグには冷感シートと折りたたみ日傘が1つずつ入っていました。出社してすぐ、先輩に「今日は完全防備ですね」と声をかけられて、私は少し照れながら「はい。念のためです」と返しました。誰かに「女子力高いですねー」と言われたら、その時にまた念のためですと返せばいい。そう決めた自分の返事が、思ったよりまっすぐに聞こえたのが、少しだけ意外でした。

(20代女性・営業職)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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