1. トップ
  2. 自然と馬、人との調和を目指して by 米本晃子

自然と馬、人との調和を目指して by 米本晃子

  • 2026.7.21

幼い頃から馬と共に生き、ドイツ馬術界最高の栄誉「ゴールデンライディングバッジ」を受章した米本晃子さん。北海道で曽祖父の代から続く牧場と馬に囲まれた環境で育ち、競走馬生産や乗馬文化の発展に深く関わってきました。今回は、ノーザンホースパークの取り組みを通じて米本さんが目指す、自然と馬、そして人の共生についてお話しいただきます。

AKIKO YONEMOTO

<Profile>
米本晃子(よねもとあきこ)/ノーザンホースパーク取締役
東京都出身。祖父の吉田善哉氏が創業した社台ファーム早来牧場(現ノーザンファーム)で育つ。ドイツに留学し、馬場馬術の選手として活躍。ノーザンホースパーク取締役CS部門長として経営に携わり、2021年より競走馬ファンド「シルク・ホースクラブ」社長を兼任。

自然と人馬が調和する、ノーザンホースパーク

自然が美しいノーザンホースパーク。 AKIKO YONEMOTO

夏の北海道には、都会では得がたい寛容さと静けさがあります。強い日差しの中にもどこか柔らかさがあり、澄んだ空気と広がる緑は、心の感覚を緩やかに整えてくれます。

ノーザンホースパークもまた、この季節になると、その魅力が一層際立ちます。芝生や木々は爽やかな風に揺れ、透き通る青空との対比の中で鮮やかな緑を輝かせながら、優しく広がります。

多くの馬たちも、その美しい緑に囲まれながら、穏やかに過ごしています。中には競走生活を終えたサラブレッドもおり、ゲストの乗馬体験など新たな役割を通じて、人との穏やかな関係を築いています。これは人と馬が共存する一つのかたちであり、互いに応益があることで持続的な関係性が成り立っていると考えています。

パークでは、このかたちを芝生や木々といった自然との関係にも応用したいと考え、人と自然が心地よく共存する環境づくりを目指しています。これは私が馬術のトレーニングで滞在するドイツにおいて、緑地が都市の中で社会基盤の一部として認知され、丁寧に維持されていることに感銘を受けたのがきっかけです。

しかし、実際にパークで取り組んでみると、季節や気候に応じた細やかな緑地管理や、自然の力を生かしながら持続可能な景観を維持することは容易ではありませんでした。それでもスタッフと試行錯誤を重ね、2022年には「緑の認定」制度として知られるSEGES認定を取得しました。社会や環境に貢献する緑地として評価いただいたことを励みに、持続的な社会基盤として定着させられるよう、皆で活動に取り組んでいきたいと思います。

パークを訪れる皆さまに自然との共存体験を提供し、その価値を感じていただくことも、とても大切なテーマです。園内には約1万坪のボタニカルガーデンが広がり、16の異なるコンセプトで構成された庭園では、四季折々の草花の表情を楽しめます。また、馬との触れ合いや収穫体験などのイベントも行っています。遠方からお越しになるゲストにとっては特別な体験となり、地域の皆さまにとっては身近につながる場でありたいと考えています。

この夏、パークでは国内初となる馬術大会「ノーザンマスターズ・ホースショー」が開催されます。選手と馬が高いレベルで調和する競技の時間は、パークでの触れ合いとは異なる洗練された緊張感に満ち、美しさと品格を肌で感じられます。国内トップクラスの人馬が集うこの新たな舞台は、競技者にとって次なる目標となると同時に日本の馬術競技全体の底上げにもつながることを目指しています。

世界的にもハイレベルな競技を夏の北海道に創出することは、この地の自然環境と馬事文化を結び付け、その魅力を国内外へ広く発信する試みでもあります。穏やかな自然公園の空気と研ぎ澄まされた競技の時間。その両者が共存する点も、この場所ならではの新たな価値だと感じています。

自然と馬、人が調和する空間で過ごすひとときは、華やかさとは異なる確かな贅沢です。夏の北海道で、自分の感覚を静かに取り戻す――そんな時間を、ぜひ体験してみてはいかがでしょうか。

【世界の馬事文化@アメリカ】

アメリカ最大のサラブレッド生産地・ケンタッキー州での引退競走馬のリトレーニング競技会「サラブレッド・メイクオーバー」での一コマ。 AKIKO YONEMOTO

引退競走馬は、決して「役目を終えた存在」ではありません。アメリカでは一時、サラブレッドの需要が減少しましたが、近年はアフターケア団体の整備や支援の仕組みを通じ、その価値が見直されています。繊細さや賢さ、高い運動能力を備えたサラブレッドは、乗馬や教育、セラピーなど新たな分野で活躍。セカンドキャリアは“救済”ではなく次のステージへの自然な移行と考えられ、日本でも乗馬の6〜7割を占める存在としてその可能性は広がり続けています。

初出:リシェスNo.56 2026年6月26日発売
EDITING:RYOKO KUROBE

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ