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日常の延長にある豊かさを提供。OSAJIの茂田正和が手掛ける一棟貸しの宿「しらかば荘」が猿ヶ京温泉にオープン

  • 2026.7.20
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群馬県利根郡みなかみ町にある猿ヶ京温泉に、一棟貸しの宿泊施設「しらかば荘」がオープン。便利さから少し距離を置き、心身を整える時間と向き合うための場と捉えた新コンセプトの宿について、同プロジェクトを手掛けたOSAJI代表取締役CEOの茂田正和さんに話を伺いました。

自分らしいリズムに立ち返り、自由な滞在を叶える一軒宿「しらかば荘」とは?

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ユネスコエコパークにも登録される里山地域に属する猿ヶ京温泉に開業した、一棟貸しの宿「しらかば荘」。健やかな肌と心を追求する化粧品ブランドOSAJI(オサジ)の茂田正和さんと、自然と人との関係性を建築から問い続けてきた建築家の安齋好太郎さん率いるADXがタッグを組み、モダンなコンセプトを掲げる宿泊施設が誕生しました。「どう過ごすか」という問いに正解を用意せず、日常では見過ごされがちな感覚や自分らしいリズムを静かに呼び起こすような滞在を提案しています。

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同施設では、デジタルとアナログのバランスを絶妙に調和させた仕組みを導入。例えば、薪をつかう暖炉などのアナログを備えながらも、料理は二次元コードを読み込んでつくり方の動画を見たり、キッチンで作業しながら遠隔で温泉の温度が確認できるなど、デジタルを利用することで限られた滞在時間を最大限に楽しめるような設備が取り入れられています。

また、滞在期間の天気や周辺にある店の情報など、周辺情報が事前にメールで共有されるなど、馴染みのないエリアでの滞在を最大限に楽しむためのサポート体制からも気配りを感じさせます。

特別な日常を演出するのは、和の設えで整えられた心地良い建築デザイン

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1963年に建てられた元学習講堂を再生させた同施設は、「新しい価値を上書きするのではなく、ここに積み重なってきた時間や営みを引き受ける」という想いのもと、あえて「しらかば荘」という名を継承。安齋好太郎さん率いるADXによる建築デザインのもと、土地の素材を使用し職人技を駆使して完成しました。畳や障子、襖は群馬県沼田市の職人による手仕事によるもので、同市の指物師が手掛けたという違い棚は、住まいが本来持っていた温もりと静けさを宿しています。

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客間は3つあり、視線が交わらないよう中心をずらして配置。椅子のように腰掛けられる縁側や、障子を開閉することで空間を自在に繋ぐ設計にするなど、ゲストのスタイルに合わせて自由に滞在できるようデザインされています。

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棟内には、フィンランド式サウナと群馬県産の桧を贅沢に使用した源泉掛け流しの温泉の浴槽を完備。湯の温度や火加減を調整する小さな行動が、熱、音、香り、静寂によって五感を少しずつ研ぎ澄まし、ゆっくりと心がほどけていくような時間に繋がるはずです。

滞在の中心に据えるのは、新たなコミュニケーションへと導くキッチンエリア

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キッチン&ダイニングは、棟内でもその存在感が際立つ場所。地元の安山岩と御影石を組み合わせたカウンター、そして150年以上前のクスノキで仕上げたダイニングテーブルが置かれ、料理をする人と待つ人、それぞれの時間が穏やかに交差するような空間設計に。その奥に広がる和室は外の景色と緩やかに繋がるよう設計されるなど、計算しつくされた内装デザインが随所に施されています。

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キッチンには滞在中の軽い調理に必要な基本的なツールが揃えられているほか、バーベキューやしゃぶしゃぶ、鰻ご飯、和朝食など、食材がセットになった各種プランも別料金で用意されています。そこには、「一緒に料理をすることで自然に会話が生まれるなど、新たなコミュニケーションを体験として持ち帰って欲しい」という思いが込められているそうです。

茂田正和さんが語る「しらかば荘」で叶える五感を呼び起こす滞在の本質とは

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クリエイティブとエコノミーの両立を常に目指し、美容と食、暮らし、工芸など多様なビジネスを展開する、OSAJIの代表取締役CEOの茂田正和さん。心身を良い状態に導くための要素として、五感からのアプローチの重要性を実感する茂田さんに、「しらかば荘」のプロジェクトの背景やコンセプトについて伺いました。

<Profile>
茂田正和(シゲタ マサカズ)/OSAJI CEO兼ブランドディレクター、fooop CEO

レコーディングエンジニアとして音楽業界での仕事を経験後、2001年より母親の肌トラブルをきっかけに化粧品開発者の道へ。皮膚科学研究者であった叔父に師事し、2004年から曽祖父が創業したメッキ加工メーカー日東電化工業のヘルスケア事業として、化粧品ブランドを手掛ける。2017年、皮膚科学に基づいた健やかなライフスタイルをデザインするブランドOSAJIを創立、現在もブランドディレクターを務める。2023年10月に株式会社OSAJIの代表取締役CEOに就任。

――「しらかば荘」のプロジェクトは、長い準備期間があったと伺いました。

群馬県みなかみエリアとの関わりの中で、使われなくなった合宿施設を引き受けたことがきっかけでスタートしたプロジェクトです。施設自体は比較的早い段階で引き受けていたのですが、すぐに活用することはせず、結果的に約8年間ほとんど手をつけない状態が続きました。ただ、その時間を「止まっていた」とはあまり捉えていなくて、むしろ必要なプロセスだったと感じています。無理に用途を当てはめて動かしてしまうと、その場所が本来持っている性質を見誤る可能性があるので、ある程度距離を取りながら観察する時間が必要でした。

――転機となったのは何だったのでしょうか。

ひとつはタイミングの問題で、もうひとつは制度的な後押しです。観光庁の「地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業」の補助金が整備されたことで、物理的な再編に踏み切る現実性が一気に高まりました。建物の3分の2を解体するという判断は、構想としては以前からあったのですが、それを実行に移すにはリスクが大きすぎた。制度が整ったことで、初めてその判断を現実の選択肢として扱えるようになりました。やりたいことと、できる条件が一致するタイミングを待つ、という意味でも、あの8年間は無駄ではなかったと思っています。

――「滞在」ではなく「変化」を持ち帰る場所という施設のコンセプトについて教えてください。

単に宿泊するだけの場所にはしたくない、という思いが最初にありました。滞在という行為の中で、何かしら自分の中に変化が起きること、それを持ち帰れることを前提に設計しています。

ただ、その「変化」はこちらが定義するものではありません。人によっては人との関係性かもしれないし、時間の使い方への気付きかもしれない。あるいは、何もしないことを許容できたという感覚かもしれない。重要なのは、何かを提供することではなく、変化が起きうる余白をつくっておくことだと思っています。

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――滞在体験で意識していることは何ですか?

提供側が体験を設計しすぎると、利用者の解釈の幅が狭くなってしまう。何もしない時間や、一見すると無意味に見える過ごし方も含めて、その人にとって必要な時間として成立するようにしたいと考えています。

――宿のデザインを進める上では、安齋好太郎さんとどのように進められたのでしょうか。

「誰とやるか」を決めるところまでは強く関与しますが、その後はできるだけコントロールしないようにしています。細かく調整しすぎると、どこかで見たことのあるものになってしまう感覚があって。それよりも、多少の違和感やノイズが残っている方が、その人の固有性が立ち上がると思っています。不確実性は伴いますが、それも含めて受け入れることで愛着が生まれるように感じています。

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――宿で提供する食体験についての仕掛けも教えてください。

「どれだけ純度高く知覚できるか」を軸にしています。例えば、ポーションは「最も味わいを鮮明に感じられる量」を基準にしています。量を増やせば満⾜度は上がりますが、増えすぎると美味しいと感じる閾値を超えてしまう。逆に少なすぎると素材の個性を⼗分に感じる美味しさのピークを迎える前に⾷べ終えてしまう。その体験の精度を重視して調整しています。

――レシピやメニューの設計思想について教えてください。

日々、使える食材が異なりますので、「どんなものでも美味しく食べられるように」ということを前提に考案しました。正直、出汁やドレッシングなど、すべて私が監修しているのですが、過去でいちばん難しいレシピとなりました(笑)。

使う食材は選ぶというより、「そこにあるものをどう扱うか」という発想に近いです。外から持ち込むこともできますが、それを繰り返すと、その場所である必然性が薄れてしまう。その土地で採れるもの、水、気候といった条件を前提にしたうえで成立する食体験の方が、結果的に一貫性のあるものになると考えています。

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――宿泊者にどんな時間を過ごしてもらいたいですか?

もともと学習施設だった背景もあり、「泊まるだけでなく何かを得る場所にしたい」という考えがありました。例えば、「自分の新しい一面に気付くこと」「誰かとの関係性が深まること」…そんな気付きを引き出すためのひとつとして、料理セットを使って宿泊者に夕食や朝食をつくっていただくアクティビティーを用意しています。自然にそれぞれの役割分担ができたり、料理をしながら普段話さないような会話が生まれたり…そんな流れの中から、“視点をずらす”という非日常的な体験をしていただけたら狙い通りですね。

美容についての考え方も同じです。完璧に整ったものよりも、少し不揃いなものに人は魅力を感じる。だからこそ、自分の欠点ばかりに目を向けるのではなく、その味わいという魅力に気付くためにも少し“視点をずらすこと”が大切だと思っています。

いまの時代は、情報ではなく「感覚を取り戻すこと」が重要だと思っています。何を選ぶか、自分にとって必要かどうかを感じる力。それが、その人らしさや豊かさに繋がるのでは、と思っているので、「しらかば荘」での滞在を通じて新たな視点が生まれるきっかけとなれば嬉しいですね。

四季折々の自然と共に、ここでしか味わえない余白の時間を提案する「しらかば荘」。便利な世界で鈍ってしまった感覚を取り戻すようなラグジュアリーな滞在に、ぜひご注目ください。

問い合わせ先
しらかば荘
所在地/群馬県利根郡みなかみ町猿ヶ京温泉263
TEL/03-4405-8622
URL/shirakabaso.jp

INTERVIEW:AYANO ISHIHARA

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