1. トップ
  2. エピソード
  3. 「勝手に来ちゃった、上がるね」子供と寝ているのに、アポ無しで訪問した義姉。だが、我慢出来ずに放った一言とは

「勝手に来ちゃった、上がるね」子供と寝ているのに、アポ無しで訪問した義姉。だが、我慢出来ずに放った一言とは

  • 2026.7.22
「勝手に来ちゃった、上がるね」子供と寝ているのに、アポ無しで訪問した義姉。だが、我慢出来ずに放った一言とは

寝かしつけた直後の足音

明け方まで授乳が続いた。

朝の七時過ぎ、ようやく娘が眠ってくれた。私も隣の布団に倒れ込み、目を閉じたところだった。

玄関の引き戸が、勢いよく開いた。

「勝手に来ちゃった、上がるね」

夫の姉の声だった。実家から歩いて数分のところに住んでいて、私が里帰りしていると母から聞きつけたらしい。

連絡は、一本もなかった。枕元の時計は、七時十分を指している。

「ほら、赤ちゃん見に行こうねー」

二歳の甥っ子が、廊下を走ってくる。

押し入れからおもちゃ箱を引き出す音。積み木が畳にぶちまけられる音。

閉めていた襖が、すぱんと開いた。

娘が、火がついたように泣き出した。

「あー、起こしちゃった。ごめんねー」

義姉は笑いながら甥っ子を抱き上げ、そのまま居間へ戻っていった。一時間かけて寝かしつけた娘を、私はまた抱き上げるしかない。寝不足の頭は、うまく回らなかった。

朝の居間で引いた線

娘を抱いたまま居間へ行くと、義姉は母の出したお茶を飲んでいた。

「せめて、連絡もらえたら助かるんだけど」

母に小声でそう言うと、返ってきたのは思ってもみない言葉だった。

「仕方ないじゃない。あんまり神経質に育てると、神経質な子になるよ」

湯呑みを置く音が、やけに軽く響いた。神経質。その三文字が、耳の奥で跳ね返る。

私は娘を抱き直して、義姉のほうを向いた。

「お義姉さん。今は身体を休ませてほしいんです。来るなら、必ず連絡してください」

義姉の笑顔が、途中で止まった。

「え…そんな、たいしたことじゃ」

「私、昨日から三時間しか寝ていません」

義姉は甥っ子の肩に手を置いて、私から目を逸らした。

「お母さんも。里帰りって、そのために帰ってきてるんだよ」

母が、はっと顔を上げた。台所から父が出てきて、湯呑み片手に言った。

「そりゃそうだ。産んだばっかりなんだから」

居間が静かになった。テレビの音だけが、やけに大きい。義姉は膝の上のバッグを引き寄せると、甥っ子の靴下を直しながら、小さく頭を下げた。

「……ごめんね。今度から電話する」

甥っ子の手を引いて、義姉は玄関へ向かった。散らかした積み木は、全部箱に戻してから帰っていった。

母は、しばらく黙ってお茶を淹れ直していた。それから、湯呑みを私の前にそっと置いた。

「ごめん。神経質は、言い過ぎたね」

「ううん。はっきりして、よかった」

翌週、義姉から電話が来た。玄関先で「二十分だけ寄ってもいい?」と聞いてから、上がってくる。あの引き戸が断りもなく開くことは、もうない。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ