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マミーサムって知ってる?育児中の手首や指の痛みについてクリニック理事長林裕章先生に伺いました

  • 2026.7.18

普段でもよく耳にする腱鞘炎。これって実際にはどんな病状がでる病気なの?育児中の女性に多いといわれたり、慢性化しやすいといわれたりするけれど本当?そんな疑問について、林外科・内科クリニック理事長の林裕章先生へお伺いしました。

ママ広場

赤ちゃんの抱っこや家事、スマートフォン操作を続ける中で、手首や指に「ピキッ」とした痛みを感じたことはありませんか。それは「腱鞘炎(けんしょうえん)」かもしれません。
腱鞘炎は手や指をよく使う人に起こりやすく、子育て中は抱っこ・授乳・おむつ替え・家事・スマートフォン操作で手首や親指に負担がかかり、特に産後の方に多くみられます。我慢していると、ペットボトルを開ける、ドアノブを回すといった日常動作までつらくなることがあります。今回は原因・治療・日常でできる工夫をわかりやすく解説します。

腱鞘炎とは?

手や指は、筋肉の力を骨に伝える「腱(けん)」というひも状の組織で動いています。その腱がスムーズに動くよう支えるトンネル状の部分が「腱鞘(けんしょう)」です。手や指を繰り返し使うと腱と腱鞘がこすれ合い、腱鞘が厚くなったり腱の表面が傷んだりして、痛み・腫れ・動かしにくさが出ます。これが腱鞘炎です。

代表的なものに、手首の親指側が痛む「ドケルバン病」と、指の曲げ伸ばしで引っかかる「ばね指」があります。日本整形外科学会も、ドケルバン病は妊娠出産期や更年期の女性、手をよく使う人に多いと説明しています。
産後のドケルバン病は、海外では「マミーサム」「ベビーリスト」という愛称で呼ばれるほど新米ママ・パパにありふれた症状です。育児中の親は1日に25〜30回も赤ちゃんを抱き上げるといわれ、その負担が積み重なります。「自分の使い方が悪いのでは」と気に病む必要はなく、育児を頑張っている証拠のような症状です。
最も多い原因は手や指の使い過ぎですが、それだけではありません。妊娠・産後・更年期などホルモン環境が大きく変わる時期は腱や腱鞘の状態が変化しやすく、症状が出やすくなります。とくに産後は、赤ちゃんのわきの下を親指と他の指ではさむようにして持ち上げる抱き方に注意が必要です。このとき親指が大きく開き、赤ちゃんの体重が親指の付け根の腱に集中してかかるため、負担が大きくなります。

腱鞘炎の治療方法

まず大切なのは、痛みの原因になっている動作をできるだけ減らすことです。手首を曲げたまま赤ちゃんを支えない、親指だけでスマートフォンを操作しない、重い荷物を片手で持たないなど、負担を減らす工夫が治療の第一歩です。
軽い痛みなら、ロキソプロフェンといった非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の湿布や塗り薬で一時的にやわらぐことがあります。ただし市販薬は痛みをやわらげるためのもので、腱と腱鞘の負担そのものをなくすわけではなく、同じ動作を続けると慢性化することがあります。

妊娠中または妊娠の可能性がある方は、自己判断で湿布や痛み止めを使わないでください。NSAIDsは妊娠時期や薬の種類によって注意が必要で、妊娠後期には使用しないとされるものもあります。授乳中の方も、使用前に医師または薬剤師へ確認すると安心です。
整形外科では、サポーターや固定具で手首・親指を休ませるほか、痛みが強い場合は炎症を抑えるステロイド注射を行うこともあります。改善しない場合や再発を繰り返す場合には、腱鞘を少し広げる手術が検討されます。

固定具は一日中つけなくても、夜だけ手首をまっすぐ保つだけで痛みがやわらぐことがあります。寝ている間は無意識に手首を曲げがちで、夜間の固定がその負担を減らすためです。ドケルバン病へのステロイド注射はよく効き、多くは1〜2回で痛みが治まると報告されています。手術を恐れて受診をためらう必要はありません。
放置して自然に治ることもありますが、育児や家事で同じ負担が続くと改善しにくいことも少なくありません。痛みが長引く場合は、早めに整形外科で相談しましょう。

慢性化しやすいのはなぜ?

慢性化しやすい理由は、痛みの原因となる動作を毎日繰り返してしまうことにあります。完全に休ませるのは難しいので、負担のかけ方を変えることが大切です。
赤ちゃんを抱き上げるときは、手首だけで支えず、肘から手首までの前腕の広い面で支えます。わきの下をつかむのではなく、手のひらを上に向けておしり側からすくい上げると、親指1本に集中していた力が手のひら全体に分散します。左右の腕を交代しながら抱っこするのも、片側への負担の偏りを防ぐコツです。

授乳時は授乳クッションや枕を使い、赤ちゃんの体重を手首だけで支えないようにしましょう。抱っこひもを使う、家族に交代してもらう、重い買い物袋を片手で持たないことも役立ちます。スマートフォンは片手で親指だけの操作が長くなると負担がかかるため、両手で持つ・机に置く・音声入力を使う・長時間続けないなど工夫を。
痛みが強い時期に無理なストレッチやマッサージを行うと悪化することがあります。落ち着いてきたら、医師や理学療法士の指導のもとで無理のない範囲で動かしましょう。

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子どもでも腱鞘炎になる?

子どもでも、スポーツ・楽器・ゲーム・スマートフォン・タブレットなどで同じ指や手首を長時間使うと、腱鞘炎のような症状が出ることがあります。
ただし、小さなお子さんで「親指が曲がったまま伸びにくい」「伸ばそうとすると引っかかる」場合は、大人の使い過ぎとは異なる「小児ばね母指」の可能性があります。親指の付け根付近で腱の動きが引っかかる状態で、以前は「先天性ばね指」とも呼ばれましたが、成長の途中で気づかれることもあります。自然に改善することもありますが、待てる期間や手術の要否は程度・年齢・生活への影響で変わります。親指が伸びにくい、痛がる、左右差がある場合は、小児整形外科または手外科を扱う整形外科で相談しましょう。

女性に腱鞘炎が多いといわれる理由

理由は一つではありません。妊娠・出産・産後・更年期などホルモン環境が大きく変化する時期に起こりやすいことが知られ、日本整形外科学会もドケルバン病は妊娠出産期や更年期の女性に多いとしています。
妊娠中や産後はむくみが出やすく、腱や腱鞘のまわりの状態も変化します。妊娠・出産期には腱鞘をしめる働きのあるホルモン(プロゲステロン)が増えて腱の通り道が狭くなりやすく、更年期には腱や関節を柔軟に保つホルモン(エストロゲン)が減ることなどが関わるとされます。さらに産後は抱っこ・授乳・沐浴・荷物運びなど手首や親指を使う場面が急に増え、これらが重なってドケルバン病が起こりやすくなります。
つまり「女性ホルモンだけが原因」ではなく、ホルモン変化・むくみ・育児動作・家事・仕事・スマートフォン操作などが重なって起こると考えるとわかりやすいでしょう。

その他、知っておいてほしいこと

特に大切なのは「痛みを我慢して使い続けないこと」です。手は毎日使うため、いったん悪化すると生活全体に影響します。
腱鞘炎やばね指は「手の使い過ぎ」だけの病気ではなく、体質や持病も関係します。とくに糖尿病があるとばね指を起こしやすく、一般では一生のうち約40人に1人(約2.6%)とされる割合が、糖尿病では約10%(10人に1人程度)まで高まると報告されています。関節リウマチや甲状腺の病気でも起こりやすくなり、なかなか治らないときは全身の健康を見直すきっかけにもなります。
次のような場合は、早めに整形外科を受診してください。

○痛みが1〜2週間以上続く/手首や指が腫れている場合。
○親指側の手首が痛く、物をつかむ・ひねる動作がつらい場合。
○指が曲がったまま戻りにくい、戻すときに「カクン」と引っかかる場合。
○赤く腫れて熱を持っている、しびれがある場合。
○赤ちゃんを抱っこできない、家事や仕事に支障が出ている場合。

特に赤く腫れて熱を持ち、触るだけで強く痛む場合は、感染など別の病気が隠れていることもあり早めの受診が必要です。また、関節炎・骨折・神経の圧迫・関節リウマチなど別の病気が原因のこともあります。診断がつけば、装具・薬・注射・リハビリ・手術など症状に合った治療を選べます。

手の痛みは「自分が我慢すればよい」と考えず、早めに負担を減らし、必要なときは専門家に相談してください。保護者の手を守ることは、毎日の育児と生活を守ることにもつながります。

参考資料
・日本整形外科学会「ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)」「ばね指(弾発指)」
・PMDA「NSAIDsの妊婦等への使用上の注意改訂関連資料」
・小児ばね母指の自然改善に関する系統的レビュー:Journal of Orthopaedic Surgery and Research(2024年)
・AAOS(OrthoInfo)“De Quervain’s Tenosynovitis”/Anderson SE, et al. “Baby Wrist”. AJR 2004/Persson Löfgren J, et al. Diabetes as a Risk Factor for Trigger Finger. 2021

※本記事の作成・推敲にあたり、文章構成案および表現整理の補助として生成AIを使用しました。医学的内容については医師が確認し、必要に応じて公的機関・専門学会等の情報を参照しています。

執筆者

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林裕章
林裕章

林外科・内科クリニック理事長。国立佐賀医科大学を卒業後、大学病院や急性期病院で救急や外科医としての診療経験を積んだのち2007年に父の経営する有床診療所を継ぐ。

現在、外科医の父と放射線科医の妻と、その人その人に合った「人」を診るクリニックとして有床診療所および老人ホームを運営しており、医療・介護の両面から地域のかかりつけ医として総合診療を行っている。科学的根拠だけでは語れない、人間の心理に寄り添う医療を実践している。また、福岡県保険医協会会長として、国民が安心して医療を受けられるよう、医療者・国民ともにより良い社会の実現を目指し、情報収集・発信に努めている。

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