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「お姉さんの隣の部屋に住みたくて移りました」空室に越してきた下階の住人。後日、部屋で感じた違和感に引越しを決意

  • 2026.7.17

下の階の男性

20代で一人暮らしをしていた頃の話だ。

私が住んでいたのは、3階建てで全9戸ほどの、こぢんまりとしたアパートだった。

共用部分でよく顔を合わせる男性がいた。2階に住んでいるようで、会えば軽く挨拶を交わす程度の間柄。

それ以上の接点は、特になかった。エレベーターのない古い建物で、階段ですれ違うときに小さく目礼する。

私にとっては、ただそれだけの相手だった。

ある日、私の部屋の隣に住んでいた人が引っ越して、しばらく空室になっていた。

そこへ、新しい入居者がやってくることになった。

荷物を運び込む日、たまたま廊下でその新入居者と顔を合わせて、私は思わず足を止めた。

越してきたのは、あの2階の男性だったのだ。

同じ建物なのに、わざわざ隣へ。不思議に思って軽く尋ねると、彼は箱を抱えたまま、こともなげにこう言った。

「お姉さんの隣の部屋に住みたくて移りました」

悪気のない口ぶりだった。けれど、背筋にひやりとしたものが走った。

気持ちが悪い。そう思ったものの、しつこく声をかけられるわけでも、待ち伏せされるわけでもない。私は深く考えないようにして、そのまま暮らしていた。

浴室の天井がずれた夜

それから、数か月が過ぎた頃だった。

仕事を終えて帰宅し、玄関の鍵を開けた瞬間、私は動きを止めた。奥の浴室のほうから、ゴトゴト、と物音がしたのだ。

誰もいないはずの部屋。心臓が跳ねた。

恐る恐る、足音を殺して浴室をのぞく。そして、私は息をのんだ。

浴室の天井にある、点検口の蓋。ふだんはぴたりと閉じているそれが、不自然にずれて、暗い隙間をのぞかせていた。

ずれた蓋の向こうは、天井裏の暗闇だった。そこがどこにつながっているのか、誰がそこにいたのか。考えかけた瞬間、全身の血が引いた。

私はそれ以上何も確かめず、財布だけをつかんで部屋を飛び出した。

その日は、とても一人でいられず、友人の家に泊めてもらった。

翌朝、アパートを管理していた会社の人に事情を話し、頼み込んで、その日のうちに別の部屋へ引っ越させてもらった。

荷物もろくにまとめられないまま、私はただ、あの場所から逃げ出したかった。点検口の蓋が、いったい誰の手でずらされたのか。それを確かめる勇気は、とうとう持てなかった。

「隣に住みたかった」と笑った、あの男性の顔が、今も忘れられない。

あれから何年も経つけれど、私は浴室の天井を見上げるたびに、あの夜の暗い隙間を思い出して、体がこわばってしまうのだ。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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