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「痛いの痛いの飛んでいけ~」は本当に効いていた、医学的根拠を発見

  • 2026.7.15
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

子どもの頃、転んだ膝をさすりながら「痛いの痛いの飛んでいけ~」と言ってもらった経験がある人は多いでしょう。

もちろん、言葉そのものに傷を物理的に癒す力があるわけではありません。

しかし、痛い場所に触れたり、さすったりする行為には、実際に痛みの伝わり方を弱める仕組みが備わっている可能性があります。

九州大学の研究グループはこのほど、痛みを抑える働きをもつ「触覚神経の集団」をマウスで特定しました。

この神経集団から送られる触覚信号は、脊髄の中で痛み信号の伝達にブレーキをかけていたのです。

目次

  • なぜ人や動物は痛い場所を何度も「触る」のか?
  • 「痛いの痛いの飛んでいけ〜」が効く神経のしくみ

なぜ人や動物は痛い場所を何度も「触る」のか?

痛い場所を思わず手で押さえたり、ぶつけた部分をさすったりする行動は、ほとんど反射的に起こります。

人間以外の動物にも、よく似た行動が見られます。

たとえばマウスは、皮膚に傷や痛み刺激を受けると、その場所を繰り返し舐めます。

これまで、舐める行動には唾液の成分が関係すると考えられてきました。

唾液には細菌の増殖を抑える成分や、熱を感じるタンパク質の働きを弱める成分などが含まれているからです。

しかし、舌が皮膚に何度も触れるという「触刺激」そのものが、痛みを軽くしているかどうかは分かっていませんでした。

そこで研究チームは、皮膚で生じた触覚信号を脊髄へ送る感覚神経のうち、「Npy2r-Cre神経」と呼ばれる特定の集団に注目しました。

実験で、この神経集団を取り除いたマウスの足裏に痛み刺激を与えると、マウスは患部を舐め続ける時間が長くなりました。

チームはこれについて、Npy2r-Cre神経がないことで、舐める動作による鎮痛作用が弱まり、マウスが痛みを十分に和らげようとして長く舐め続けたのではないかと考えました。

つまり、マウスが患部を舐める行動には、唾液成分による作用だけでなく、触覚神経を使って痛みを抑える役割も含まれていた可能性があるのです。

「痛いの痛いの飛んでいけ〜」が効く神経のしくみ

では、Npy2r-Cre神経集団は、本当に痛みを抑えているのでしょうか。

チームがこの触覚神経だけを人為的に刺激したところ、皮膚への痛み刺激によって生じた信号が、脊髄で伝わりにくくなりました。

さらに、マウスが痛い場所を舐め続ける時間も短くなりました。

皮膚で生じた痛み信号は、痛覚神経を通って脊髄に入り、そこから脳へ痛みを伝える神経を興奮させます。

その信号が脳に届くことで、私たちは「痛い」と感じます。

一方、痛い場所に触れるとNpy2r-Cre神経集団が反応し、触覚信号を脊髄へ送ります。

すると、脳へ痛みを伝える神経の興奮が抑えられ、結果として痛み信号が弱まると考えられます。

いわば触覚信号が、脊髄にある痛みの通り道へ横からブレーキをかけていたのです。

「さする」行為が痛み信号を和らげる仕組み/ Credit: 九州大学(2026)

今回の研究は、「痛い場所をさすると楽になる」という身近な現象を支える触覚神経集団を、世界で初めて特定した成果だとされています。

ただし、今回の実験対象はマウスです。

人間でもまったく同じ神経集団が同じ働きをしていると、直接確かめられたわけではありません。

また、触れられることで安心したり、注意が痛みからそれたりする心理的な効果も、触覚による鎮痛に関係すると考えられています。

それでも、「痛いの痛いの飛んでいけ~」と言いながら患部を優しくさする行為は、単なる気休めではない可能性があります。

将来、今回見つかった触覚神経を効率よく刺激する方法が開発されれば、薬だけに頼らず痛みを和らげる治療法や、触覚刺激を利用した医療機器につながるかもしれません。

昔から受け継がれてきた素朴な「手当て」の中には、私たちがまだ知らなかった神経科学の仕組みが隠れていたのです。

参考文献

「痛いの痛いの飛んでけ~」は本当に効いていた!
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/1519

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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